OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

忘れられないならず者

2010-07-10 16:51:52 | Rock

Desperado / Eagles (Asylam)

最近はなんか、ウエストコーストロック名盤大会みたいになっていますが、本日もイーグルスが1973年に出した待望のセカンドアルバムとして、説明不要の大傑作♪♪~♪ とはいえ、このバンドには例えば1976年の「ホテル・カリフォルニア」とか、一般大衆が認める人気盤がある所為でしょうか、今となっては彼等の履歴の中では、目立たなくなってしまった感があるように思います。

しかも歌われている内容がアメリカ西部開拓時代に実在したギャング団をモチーフにしたトータルアルバムということで、我国ではそれに対する馴染みの無さから、幾分の聴かず嫌いもあるような……。

それでも収録された各曲は、そのメロディの良さ、ボーカル&コーラスに強く滲んでいる哀愁、溌剌として力強く、また色彩豊かな演奏によって、何れもが忘れ難い印象を残すものばかり♪♪~♪ 後々までスタンダード化した名曲も含まれているのです。

 A-1 Doolin-Dalton
 A-2 Twenty-One / 21才
 A-3 Out Of Control
 A-4 Tequila Sunrise
 A-5 Desperado / ならず者
 B-1 Certain Kind Of Fool
 B-2 Doolin-Dalton
(inst.)
 B-3 Outlow Man
 B-4 Saturday Night
 B-5 Bitter Creek
 B-6 Doolin-Dalton / Desperado

上記演目から一目瞭然、同じ曲を最初と最後、また節目に使うというところから、既に述べたようなトータルアルバムとしての制作意図が読み取れると思いますが、当時はLPというアナログ盤時代であったところから、レコード片面毎の流れも実に良く作られていると思います。

まずA面冒頭「Doolin-Dalton」が地味なアコースティックギターのカッティングとシミジミとしたハーモニカをイントロにジンワリと始まり、サビでグッと力強いリズムと十八番の哀愁コーラスが入ってくる展開だけで、これはイーグルス以外の何者でもないと実感されますねぇ~♪

ちなみに当時のメンバーはグレン・フライ(vo,g,key)、バーニー・レドン(vo,g,etc)、ランディ・マイズナー(vo,b)、ドン・ヘンリー(vo,ds) の4人組ながら、デビューアルバムと同じく、曲作りや演奏にはジャクソン・ブラウンやJ.D.サウザーが協力しています。

またプロデュースとサウンド作りも前作同様、グリン・ジョンズというイギリスの名匠が手掛け、録音セッションの主要な部分もロンドンのスタジオということで、所謂ブリティッシュロック特有の翳りと力強さが実に良い味わいを醸し出しているようです。もちろんイーグルスに特徴的な哀愁が、それによって増幅されているという推察は容易です。

例えば強烈なハードロックの「Out Of Contro」は、カントリーロックバンドという初期イーグルスのイメージを崩してしまうほどなんですが、バーニー・レドンの激しいピッキングによるギターソロや唸るスライドには、既に後の人気絶頂時の姿が強く表れていて、もう完全にハリウッドでは作れなかったサウンドだと痛感されます。

一方、シングルカットされてヒットした「Tequila Sunrise」に濃厚な、実にゆったりした哀愁のカントリーロックフィーリングも、これまたイーグルスを特徴づける決定的なものなんですが、これこそウエストコーストサウンドと納得する他はないんですねぇ~♪

その意味でイーグルスのステージでは長らく定番となっていた「Saturday Night」こそ、せつない曲メロと愁いが滲むコーラス、アコースティックロックならではの余韻が完全融合した名曲名演だと思います。

そして今や大スタンダード化した「ならず者」は、おそらくはこのアルバムの中でも一番人気のスローバラード♪♪~♪ ストリングスまで用いた演奏パートの奥深さ、さらにドン・ヘンリーの泣きのボーカルにはハードボイルドな女々しさが強く、それゆえにリンタ・ロンシュタットをはじめとする大勢の老若男女にカパーされたのもムペなるかなです。

しかし、やっぱりイーグルスのオリジナルバージョンが最高でしょう。

それと気になるカントリーロック保守本流の部分なんですが、まずは「21才」におけるバーニー・レドンのバンジョーやドブロギター、ランディ・マイズナーのハイトーンボイスのコーラスに代表されるように、まだまだイーグルスの基本姿勢は、ここにあると実感されますよ。

ただし、そういう部分が次の「Out Of Contro」のハードロックへと強引にしてナチュラルに繋がるアルバム構成の妙と密接な関係にあるのは実に新鮮で、これはB面でも「Outlow Man」や「Bitter Creek」の存在意義に対して同様じゃないでしょうか。

それゆえに何度も書きますが、収録演目の流れが滑らかでありながら、決して垂れ流しではないメリハリの効いたものになっているのだと思います。

そこで気になる歌詞の内容なんですが、既に述べたように実在のギャング集団だったダルトン兄弟と悪漢のビル・ドューリンを主人公にしているということで、サイケおやじはそれに関するアメリカの歴史本を読んだことがあります。

以下はそこからの要約なんですが、彼等が暴れまくっていたのは19世紀後半で、結局は1893年に銃撃戦の末に射殺され、一味は壊滅させられたそうです。ちなみに映画「明日に向かって撃て」のブッチ&サンダンスも同時期に実在していたそうですから、アウトロー達の人生に世の中の機微や享楽、愛の真実や青春の哀しみ等々を託して歌うというやり方は、なかなか上手い狙いだったと思います。

当然ながら西部開拓時代というフロンティア精神と退廃してしまった当時のアメリカを合わせ鏡にしたが如き社会風刺もあったのでしょう。

しかしリアルタイムでは、それが受け入れられたとは決して言えず、チャート的にアルバムは中ヒット……。また我国でも前作を上回る人気を得ることが出来なかったと思います。

それでも評論家の先生方からは高い評価を受けていましたし、確か翌年になってリンダ・ロンシュタットがこのアルバムからカパーした「ならず者」をヒットさせたことにより、あらためてイーグルスのバージョンが人気を呼んだと記憶しています。

ただしイーグルスは、その人気曲「ならず者」をシングルカットしていないんですよねぇ……。まさか正式デビュー前にバックを務めたリンダ・ロンシュタットに遠慮したわけでもないでしょうし、おそらくはイーグルスとしての矜持がそうさせたんだと思いますが、もしもシングル発売されていたら、大ヒットは確実だったでしょう。

いゃ~、勿体無いですねぇ。

尤も、それゆえにアルバムを買わざるをえないという事にもなるんですが……。

ということで、個人的にはイーグルスの諸作中、デビューアルバムと甲乙つけがたいほど好きなのが、これです。

特に車の中では定番中の大定番として、ちょうど今の時期から秋にかけて鳴らすことが多いです。それはアメリカ西海岸とは全く異なる日本の街並みや風景の中でさえ、このイーグルが聞こえてくると、そこにはウエストコーストの風が吹いてくるような気分に浸れるんですよ♪♪~♪

まあ、これは例によってサイケおやじだけの感性なんですが、あるいは休日の夕暮れにベランダか裏庭でビールでも飲みながら、ラジカセで聞くBGMには、このアルバムがジャストミート♪♪~♪

日頃は体質的に酒に酔わないサイケおやじでも、これは気分が良くなる1枚です。

最後になりましたが、アルバム表のジャケ写に登場するイーグルスの4人が主役のアウトローを気取っているのは当然なんですが、その裏ジャケには彼等が歴史どおりに射殺体となったショッキングな写真が使われています。そしてなんと、そこにはイーグルスが5人(?)になっているんですよっ! 

実は謎の5人目は彼等の盟友、J.D.サウザーだと言われていますので、気になる皆様はご確認下さいませ。

コメント
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