OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ブート売り場のならず者

2010-07-17 16:56:16 | Rolling Stones

Get A Line On You / The Rolling Stones (bootleg = CD)

出張中止を言い訳に、先日は昼間っから映画鑑賞に赴き、ストーンズのドキュメント作品「ストーンズ・イン・エグザイル」を堪能してきました。

その内容はストーンズが1972年に出した傑作2枚組LP「メインストリートのならず者」の内幕を、当時の写真やホームビデオ映像を使い、メンバーや関係者のインタヴューで構成したマニアックなものですから、決して一般向きではないでしょう。月末にはDVDの発売も予定されています。

しかし、それをあえて劇場公開するという商魂よりも熱意というか、そういう部分に共感しているお客さんが多いように見受けられたのは、これもサイケおやじの言い訳でしょうか。

まあ、それはそれとして、この「メインストリートのならず者」再発見(?)プロジェクトは公式リマスター盤に未発表テイクを追加しての発売、あるいは前述のドキュメント作品の制作等々、にわかに活発になったのと並行して、当然ながらブート業界も便乗しているわけで、本日ご紹介のブツもそのひとつです。

ちなみに該当アルバムのセッションからは、これまでも様々な流出音源が纏められ、例えば以前にご紹介した「Exile Of Main St. Outtakes」もそうだったんですが、新マスターの裏入手や音質の改善により、そのクオリティが日進月歩なのは言うまでもありません。

またネット時代の恩恵というか、それらの音源が無料でダウンロード出来たり、また入手に関してもメールによる販売情報が充実していますから、イリーガルな世界ではありますが、それは正直、良い時代になったものだと思います。そして実際、サイケおやじにしても幾つかのルートを確保し、楽しい無駄遣いをやっているというわけです。

で、これもサブタイトルに「Exile Outtakes」とあるように、以下の演目が収録されています。

 01 All Down The Line (acoustic)
 02 Get A Line On You
 03 Shake Your Hips
 04 Sweet Virginia
 05 Ain't Gonna Lie
 06 Bent Green Needles
(inst.)
 07 Let It Loose (inst.)
 08 Travellin' Man
 09 I'm Going Down
 10 Hillside Blues
 11 Stop Breaking Down
 12 Shine A Light
 13 Dancing In The Light
(inst.)
 14 Alladin Story (inst.)
 15 Leather Jacket (inst.)
 16 Potted Shrimp (inst.)
 17 All Down The Line (electric)

まず驚いたのは、その音質の優良性と統一感です。

ストーンズ中毒者ならば、収録演目がこれまでも度々ブートとして出回っていた過去はご存じだと思いますが、とにかくそれらは音質や音圧にバラツキがあって当然の世界でした。

ところが今回のブツは、通して聴いていても、それほど違和感の無い、なかなか丁寧な編集構成が高得点♪♪~♪ 最初と最後に「All Down The Line」を置いたのもニクイところです。

また業者の狙いが明らかに公式拡張盤の真相究明にあったのは間違いないところで、そのオフィシャルで登場してきた未発表曲が決してリアルタイムの生音源ではなく、現代で世に出すにあたり、相当なオーバーダビングや改変が施されたのは既成の事実になっています。

例えば「Dancing In The Light」は、ここでのインストバージョンを聴けば、拡張盤収録の未発表テイクが、新たにミック・ジャガーのボーカルやアコースティックギターをダビングした結果であることが知れるでしょう。

また「Alladin Story」も拡張盤では「So Divine」の曲タイトルで初出とされた演奏ですが、ここでは「So Divine」に聴かれた露骨にオーバーダビングしたリードギターが無いので、物足りなくもあり、また素朴な味わいも捨て難いという、なかなか意味深なトラックになっています。

またオーラスのエレクトリックバージョンの「All Down The Line」も、拡張盤のオマケテイクとは別物で、ほとんど完成直前でありながら、ラフな質感が中毒性を秘めた快演ですよ♪♪~♪ 実はシングル盤オンリーで女性コーラスが大きいモノラルバージョンと同一疑惑もあったのですが、微妙にミックスが異なっているように思います。ただし最後の最期に針音が聞こえるので、う~ん……。

それとこれまであまり良い音質で聞かれなかった「Ain't Gonna Lie」が、今回は合格点でしょうか。一般的には「スティッキー・フィンガーズ」制作時のデモ&未完成テイクとされていますが、こういう平凡なブルースロックをも魅力的にしてしまうストーンズ独自のグルーヴは、やっぱり素敵♪♪~♪

ですから、ど~でもいいようなプルースジャムの「Hillside Blues」でさえ、ミック・テイラーの如何にも「らしい」ギターワークを中心に聞けてしまうんですねぇ~♪

またブルースの古典をストーンズ流儀に演じた「Stop Breaking Down」が、公式テイクの混濁した雰囲気よりもずっと明快なノリで解釈されているのも嬉しいかぎり! もう、当たり前すぎて、面映ゆいほどです。

それと皆が大好きな「Shine A Light」が今回、さらにストレート真っ向勝負なテイクになっているのも強烈で、例のレゲエ風味は抑え気味にしつつも、ミック・テイラーのギターが泣きまくるという、実にツボを刺激する歌と演奏が結果オーライ♪♪~♪ 公式テイクでは印象的だったゴスペルコーラスも入っていません。

気になるインスト曲では、「Leather Jacket」が明らかにミック・テイラー主導というムードが濃厚で、何処かで聞いたことのあるようなリフやフレーズが組み合わされた展開は、およそストーンズらしくありませんが、ミック・ジャガーのボーカル入りテイクを期待すると、それはフェィセズになるかもしれませんね。

しかし「Potted Shrimp」は逆にキース・リチャーズの色が全く強く、これはこれで相当に面白いです。ワウワウのギターソロは誰?

ということで、プート初心者にもオススメ出来る優良盤です。

で、この機会に書いておきたいのが、ブートの世界にまでオリジナル盤云々を取り沙汰する昨今一部の存在です。

もちろんブートの世界にも、音源供給の過程も含めて、正統派レーベルの確固とした流れがあるのは認めるところです。そしてそういう一流(?)メーカーの出したブツが、しばらくするとコピー物として出回るのが、ブート業界の常識的な掟であることも、同様でしょう。

それを指弾するが如き態度でコピー物を非難するのは、ブートが所詮は泥棒業界であることを忘れているような気がしますねぇ。

実は最近、ストーンズの初来日となった1990年の公演から、東京ドームにおける隠密録音の8枚組が、なんと100セット限定で世に出たのですが、これはもちろん音質が良かった事に加え、初出音源があったので、忽ち完売! サイケおやじも必死でなんとかゲット出来ましたが、直後に追加プレスが売り出され、今ではコピー物が堂々と出回っている始末です。

また前述したドキュメント映画を上映していた劇場には、ブートの売人も密かに商売をやっていたりしたようです。

こんなところは以前、プロレスブームが全盛期の頃、後楽園ホールの周囲で昔のテレビ中継試合を収録したブートビデオを売っていたのと似ているわけですが、内容が優れていれば、ブートなんてCDRでも、MP3でも、何でもOKということです。

それよりも、例えば本日ご紹介のブートにも顕著なように、どこで集めてきたのかは知る由もない音源を丁寧にリマスターし、ひとつに纏め上げる根性と情熱には、潔くお金を払うのが、礼儀でしょうね。

もし、それがハズレであったとしても、人生の勉強と言えば大袈裟ですが、少なくとも一瞬の夢とワクワク感を買えるのであれば、それがマニアの生きる道かもしれません。

その違法性についても、まあ、ヤミ米を食っていると思えば……。

よしっ、一生、ついていくぞぉ~~~!

コメント
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