■John Colrtane More Live At The Showboat 1963 (RLR = CD)
今日はジョン・コルトレーンの命日ということで、日頃は享楽的なサイケおやじも神妙に故人の演奏を聴いています。
で、このCDはちょいと前に入手した発掘音源物ですが、なんと珍しや! ジョン・コルトレーンがステージの現場で、1曲だけですがピアノを弾いているのがウリという大珍品!?
録音は1963年6月24日のフィラデルフィア、「ショウボート」という店でのライプで、メンバーはジョン・コルトレーン(ts,ss,p)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という面々ですが、本来のレギュラードラマーだったエルビン・ジョーンズは、おそらく悪いクスリ等々の諸事情から、この日はロイ・ヘインズに交代していたものと思われます。
01 Chasing The Trane
お馴染み、ジョン・コルトレーンの猛烈に咆哮するテナーサックスが全てという、まさに当時のライプでは定番だった過激なブルースですから、オフィシャルはもちろん発掘物も含めて、幾つものテイク&バージョンが世に出ていますので、正直に言えば新鮮味は無いでしょう。、
しかし、やっぱり聴いているうちに熱くさせられるのは、コルトレーンが神様扱いだったジャズ喫茶で青春を過ごしたサイケおやじのような世代じゃないでしょうか。
実際、演奏はマッコイ・タイナーが抜けたトリオ編成で進行し、極言すればジョン・コルトレーン対ロイ・ヘインズのガチンコ勝負が強烈! 特にロイ・ヘインズはヤケッパチの大熱演で、その一瞬も休まないハイスパートなドラミングは圧巻ですよ。これだけポリリズムをやっても絶対にビートの芯を外さないところは、暴走するジョン・コルトレーンにとっても最適の相手役だったんじゃないでしょか。とにかく燃えに燃えています!
02 It's Easy To Remember
人気盤「パラード」の中でも特に印象的に残るスタンダード曲なんですが、まさかこれがライプの現場でも演じられていようとは、少なくともサイケおやじは初めて聴く演奏です。
しかし前述「パラード」収録のテイクに顕著だったセンチメンタルな甘さを期待してはなりません。最初はジョン・コルトレーンもそれなりに吹いてくれるんですが、メロディフェイクからアドリブへと進むうちに、それは何かに憑かれたが如き激情の吐露へと変化するのです。
ちなみにこのトラックは最初が静かなんで、ライプの現場に集っているお客さんの会話が相当に聞こえます。またジョン・コルトレーンが暴れる前から既に、ロイ・ヘインズのドラミングがヤケッパチ気味になっているんですねぇ。
ここからは聴いているサイケおやじの全くの妄想なんですが、ほとんど演奏を聴こうとしないお客さんの存在がある以上、場数を踏んでいるメンバーにしてみたら、えぇ~い、好きにやってしまえっ! 的な思惑があったんじゃないでしょうか?
特にロイ・ヘインズに、それが顕著……。
03 Up 'Gainst The Wall
これも発掘音源では珍しい演目で、傑作盤「インプレッションズ」に収録されていたモード系変則ブルースですから、またまた激烈な展開を聞かせてくれるのですが、同時に「間」を活かしたというか、闇雲に突進するよりは空間の広がりを如何に自分達の演奏で支配するか? そんな目論見が感じられたりします。
そして当然ながら、ここでもロイ・ヘインズが大暴れ! ある部分ではエルビン・ジョーンズよりもジョン・コルトレーンとの相性が良いのかもしれません。後半のヒステリックな対峙は激ヤバですよ。
04 The Inchworm
ここではついにソプラノサックスを吹いてくれるジョン・コルトレーンということで、ファンにとってはロイ・ヘインズとの奇蹟の名演として有名な同年7月7日に行われたニューポートジャズ祭のライプバージョン「My Favorite Things」を想起させられると思います。
結論から言えば、まあ、あそこまでの強烈なカタルシスはありませんが、それでも後半から終盤の混濁した熱気は、絶対に当時でしか発散出来なかったものでしょう。
ちなみにマッコイ・タイナーが参加してくるのは、その終盤のクライマックスの場面からなんですが、例によって暗い情念を秘めたコードが鳴りだせば、そこはジョン・コルトレーンが全盛期の証になるんですから、やっぱり侮れませんね♪♪~♪
05 Impressions (incompltet ?)
そしていよいよ始まるのが、これが出ないなと満足出来ないという定番激烈モードジャズ! 前曲の勿体ぶった終幕から間髪を入れずにスタートするテーマ部分の痛快さは、まさにジャズ喫茶全盛期を体験した皆様にとっては、パブロフの犬でしょう、
さらにアドリブパートの先発はマッコイ・タイナーの饒舌なスピード違反なんですが、バックで煽る速射砲のようなロイ・ヘインズのドラミンクが、これまた凄いですよっ!
う~ん、ついつい音量を上げてしまいますねぇ~~♪
おぉ、「リーチング・フォース」より、激しいぜっ!
ただしここに収録のトラックは、そのマッコイ・タイナーのソロパートが終わると短いベースソロ、そしていきなりラストテーマに繋がるので、恐らくは編集してあるんでしょうねぇ……。
それでもマッコイ・タイナーのパートが本当に熱いですから、絶対に満足!
06 I Want To Talk About You (incompltet)
これもステージライプでは定番のスタンダード曲ですから、珍しい演奏ではないでしょう。ここでも例によって例の如く、ミディアムテンポで繰り広げられる混濁の中から時折浮かび上がってくるメロディアスなフレーズが、まさにジョン・コルトレーン・カルテットならではのロマンとでも申しましょうか、わかっちゃいるけど、ついつい惹きこまれてしまいます。
また終盤での「お約束」として無伴奏ソロを演じるジョン・コルトレーンにしても、そのあたりは百も承知のほどよい力みで、憎めません。
ちなみにこのトラックも前半が欠けていて、途中からフェードインする音源ですが、贅沢は敵でしょうね、
07 Mr. P.C.
これまたジョン・コルトレーンの演目としては人気のブルースでしょう。その調子の良いテーマのスピード感がモードジャズならではの激情的快楽の源ですから、リスナーはひたすらにそれに酔うことが許されるのです。
そして期待に応えて熱演するジョン・コルトレーン以下バンドの面々は、本当に汗ダラダラの熱気をダイレクトに伝えてくれますよ。これも「お約束」という中盤でのテナーサックス対ドラムスのシングルマッチも本気度が異常に高く、全くの疲れ知らずには絶句させられると思います。
ただしそこがあまりにも凄すぎた所為でしょうか、続くマッコイ・タイナーの調子がイマイチというか、纏まりの無いスケール練習みたいなのが???
まあ、このあたりは如何にもブラベート録音らしい音質と日常性の証明なのでしょうか……。
08 After The Rain
さて、これがお目当てというジョン・コルトレーンのピアノ演奏!?
それは自作の厳かなパラード曲のテーマメロディを、ジョン・コルトレーンがひとりでポツンポツンと弾くだけという、いやはやなんともの音源です。
しかも録音状態がそんな所為もあって、客席のざわめきやレコーディングノイズが目立つという、正直に言えば資料的な価値しかないでしょう、本当の珍品です。
ただしリアルタイムのステージでは、そんな場面がこの日に限らず、案外と多かったのかもしれませんね。そんな想像が様々に出来るというのも、実は楽しいことだと思います。
ということで、ジョン・コルトレーンのファンにとっては、かなり興味津々の発掘盤になっています。
気になる音質も年代や録音条件を考慮すれば、ほとんど普通に聴けるレベルだと思いますし、モノラルミックスですが、その定位もしっかりしています。そしてドラムスのバランスが幾分大きいのが結果オーライのド迫力! 状況が許すならば、大きなスピーカーの前で思いっきりボリュームを上げて聴くのがベストかもしれません。
さて、この天才のジョン・コルトレーンが没したのは1967年7月14日とされていますが、その日の我国では、もうひとつの大きな出来事がありました。
つまり昭和42年の7月14日、テレビ特撮ドラマの最高峰として今も絶大な支持を集める「ウルトラセブン(TBS)」で可憐なヒロインのアンヌ隊員役に、菱見百合子時代のひし美ゆり子が抜擢されたのです(敬称略)。
その経緯については彼女自身のプログに秘蔵写真と共に現在継続アップ中♪♪~♪
↓
http://blog.goo.ne.jp/anneinfi
しかしリアルタイムのサイケおやじは、ジョン・コルトレーンが天国へ召されたことも、また自分の人生に多大な影響と喜びを与えてくれた菱見百合子=ひし美ゆり子が女神となる運命を知る由も無く、イノセントな少年時代を送っていたのです。
う~ん、人の世にはこうした運命の交錯も必要なんでしょうねぇ。
本当にそう思います。