OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

1969年12月1日のD&B

2010-08-22 16:15:25 | Rock

Royal Albert Hall Monday, December 1st - 1969
      / Delany & Bonnie & Friends with Eric Clapton (Rhino Handmade)

ということで、昨日ご紹介の「オン・ツアー箱」から、1枚目となるロイヤル・アルバート・ホールでの音源で、付属のプックレットによれば、1曲を除いて未発表の演奏ばかりということです。

メンバーはデラニー・ブラムレット(vo,g)、ボニー・ブラムレット(vo)、エリック・クラプトン(vo,g)、ボビー・ウィットロック(vo,org)、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(ds)、ジム・プライス(tp)、ボビー・キーズ(ts)、リタ・クーリッジ(vo)  という、今では夢の凄い顔ぶれがMCで紹介されているのですが……。

01 Intro / Tuning
02 Opening Jam
03 Gimme Some Lovin'
 まずはステージ開始のMCでライプレコーディングされていることが伝えられ、続く紹介が、エリック・クラプトン&フレンズ!?!
 これには、うっ、と唸る間もなく突入する「Opening Jam」の豪快にしてロッキンソウルなインスト大会に歓喜悶絶ですっ! 
 もちろんエリック・クラプトンのギターは意想外(?)の軽さ中に粘っこいブルースフィーリングを滲ませた、実に嬉しいスタイルを聴かせてくれますよ♪♪~♪ ちなみに本人のギターは左チャンネルに定位され、このあたりはイマイチ混濁していたアナログ盤「オン・ツアー(Atco)」のミックスとは異なる明快さが嬉しいですねぇ~♪
 それは野太いカール・レイドルのペース、ヒーヒー唸るボビー・ウィットロックのオルガン、ビートの芯が最高にがっちりキマッているジム・ゴードンのドラムスという、後にデレク&ドミノスとなるリズム隊各々の自己主張にも同様ですから、以降の熱演が既に予感され、もうこの演奏だけでワクワクしてくるでしょう。
 実は主役が登場する前に、バンドメンバーだけでウォーミングアップ的な演奏を聴かせる仕掛けは、黒人ブルースやR&Bショウの一座では常套手段ですから、このあたりも白人ながら黒人音楽をやっていたデラニー&ポニーらしい演出だと思います。
 また、この「Opening Jam」で楽しめた音楽スタイルは、後に発表されるエリック・クラプトンの最初のソロアルバムでA面冒頭に収録された「Slunky」へとダイレクトに繋がるものとして、なかなか興味深いところ!?
 そして「Gimme Some Lovin'」はご存じ、スペンサー・デイビス・グループのヒット曲なんですが、ここではボビー・ウィットロックの熱血ボーカルをメインにストレートコピーしたような憎めない演奏になっていますよ。しかし、それにしてもエリック・クラプトンとはブラインド・フェイスで因縁浅からぬスティーヴ・ウインウッドの代表曲を演じようとは、誰のアイディア? その所為でしょうか、ご当人のギターから、些か面映ゆい雰囲気が感じられたりするのは、贔屓の引き倒しでしょうか。まあ、その逆にボビー・ウィットロックの大ハッスルが、いやはやなんとも♪♪~♪

04 Band Introductions
 さて、ここで正式にバンドメンバーが紹介されますが、どうやらそれはデラニー・ブラムレットの仕事のようで、すると冒頭のMCも本人ということが、その声質から分かります。ところが、なんとカール・レイドルを紹介し忘れるというのはご愛嬌!? その後のフォローに、これまた和むんですよねぇ~♪
 そして、いよいよポニー・プラムレットとリタ・クーリッジを呼び出して、白熱のライプ本番が始まるのです。

05 Only You Know And I Know
06 Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson
07 Get Ourselves Toghtere

 まず「Only You Know And I Know」はLP「オン・ツアー(Atco)」でも聞かれた当時の定番演目なんですが、ここでは作者のデイヴ・メイソンが参加しておらず、その所為でしょうか、前述LP収録のテイクよりもネチネチしたしたグルーヴが味わい深いところです。
 ちなみに、ここから右チャンネルに入っているギターはデラニー・ブラムレットによるもので、その粘っこいフィーリングがエリック・クラプトンにも伝染したかのようなギターアンサンブルが、以降の演奏にも反映されていくポイントでしょう。特に続く「Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson」のイントロから演奏全体を貫くノリは、唯一無二! おそらくエリック・クラプトンにしても、こういうグルーヴに接したことは、デラニー&ポニーに邂逅して以降のことだったんじゃないでしょうか? いゃ~、全く本人が楽しんでいる風情が伝わってきて、ニンマリさせられますよ♪♪~♪
 ですから、続く「Get Ourselves Toghtere」のしなやかで粘っこい展開もムペなるかな! リラックスしつつもバンドが一丸となった歌と演奏は、所謂スワンプロックの良好なサンプルじゃないでしょうか。

08 I Don't Know Why
 そして驚くなかれ、ここで何の紹介もなく始まるのが、エレック・クラプトンが主役となった、この歌と演奏です。もちろん本人の初リーダー盤に収録の隠れ人気曲なんですが、そのバージョンよりはグッとR&Bっぽいバックの演奏と自信無さげなエリック・クラプトンのリードボーカルが絶妙のコントラストなんですねぇ。
 しかも、その反動というか、ギターソロでの幾分の力みに、なんとなく神様の人間味を感じてしまいます。歌い終えてからの「サンキュ~」という謝辞、また「フゥ~~」という安堵めいた声も良い感じ♪♪~♪ また随所で微妙に助け舟を出しているデラニー・ブラムレットやコーラス隊のハートウォームな存在も、雰囲気良好だと思います。

09 Where There's A Will, There's A Way
10 That's What My Man Is For
11 Medley: Pour Your Love On Me / Just Plan Beautiful
12 Everybody Loves A Winner
13 Things Get Better

 さあ、ここからはいよいよショウも後半! まさに怒涛のスワンプロック大会が存分に楽しめますよ。
 まずはツインリードのギターによるイントロからタイトなリズム&ビート、そしてスタックスサウンドがモロのホーンリフで興奮を誘う「Where There's A Will, There's A Way」の圧倒的なR&Bグルーヴが、もう最高です。もちろんポニーの熱したシャウトとデラニーの自然体に黒いボーカルという夫婦の絆も素晴らしく、またエリック・クラプトンのギターも冴えまくり♪♪~♪ しかも何故か随所で感じられるのが、当時のストーンズと同じ様な重心の低い、あのザクザクしたリズムの刻みなんですねぇ~♪
 このあたりは、まさに「鶏と卵」なんですが、個人的にはこちらを本家としたい気分です。
 しかしボニー・プラムレットが正統派R&Bの王道を歌う「That's What My Man Is For」やゴスペルロックの正体が実感される「Medley: Pour Your Love On Me / Just Plan Beautiful」、南部の夕暮れを強く滲ませる「Everybody Loves A Winner」での美しきソウルフィーリングは、明らかに白人が演じるロック寄りの黒人音楽という素晴らしき魂の折衷作業として、デラニー&ポニーならではの世界じゃないでしょうか。
 ただし、こうしたスタイルは何もデラニー&ポニーが元祖でも本家でもありません。同じことをやっていた白人バンドは、他に数多く存在していたという推察は容易です。しかしそれを世界レベルの流行にしたのは、デラニー&ポニーの「運」と「実力」でしょう。
 ちなみに「運も実力の内」という言い回しは、世間一般の常識でしょうね。
 ですから続く「Things Get Better」では、余裕の中にも真摯な勢いが侮り難く、また、ここまでの流れの中で、実に楽しそうに奮闘するエリック・クラプトンに魅せられるんだと思います。

14 Coming Home
 これがちょいと問題の演奏で、それは左チャンネルからはエリック・クラプトンのハードエッジなリフ、右チャンネルからは粘っこいデラニー・プラムレットのサイドギターが聞こえるんですから、それじゃ真ん中のスライドギターは誰? また時折、エリック・クラプトンとのツインリードのリフまで弾いているんですよねぇ……。
 う~ん、メンバー紹介では他にギタリストは参加していないことになっているんですが、するとこれはオーバーダビング? ちなみに終盤でのギターの絡みやバンドアンサンブルが面白いのは、言うまでもありません。

15 I Don't Want To Discuss It
16 Little Richard Medley
    A. Tutti Frutti
    B. The Girl Can't Help It
    C. Long Tall Sally
    D. Jenny Jenny Jenny
 そしてステージはクライマックスに突入!
 熱血のアップテンポで繰り広げられる「I Don't Want To Discuss It」は、まさにバカノリ大会という趣で、エリック・クラプトンのギターが爆発すれば、ここでもリズムの刻みがストーンズに!? またジム・ゴードンのドラミングに煽られたデラニー&ポニーのシャウトが快いですねぇ~♪ ちなみにこのテイクは、初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用された事になっていて、ミックスは異なっているものの、流石に納得させられる興奮度は高いです。
 それは当然ながら「Little Richard Medley」にも継続され、こういう王道R&Bを演じるエリック・クラプトンはヤードバーズ在籍時代を彷彿とさせる潔さ! 思わず、あの「ファイブ・ライブ」のLPを聴きたくなったりしますが、ボビー・キーズのサックスソロやリズム隊の楽しそうなビート感に浸っていると、全くこの時のライプに接したファンが羨ましくなりますし、演奏途中でのメンバー紹介も良い感じ♪♪~♪

17 My Baby Specializer
 さて、これがアンコールというか、演奏が始まる前にデラニー・プラムレットから感謝の挨拶と次回ライプの告知がリアルです。
 そして始まるこの曲は、デラニー&ポニーとしての公式初アルバム「ホーム(Stax)」にも収録されていた正統派南部ソウルの決定版! それをここではリラックス優先主義で歌いながら、緊張と緩和が流石に見事だと思います。う~ん、なんと言うか、祭りの後のなんとやら、ですよ。

以上、またしても独り善がりのご紹介になりましたが、それにしてもエリック・クラプトンのギターが、ここまでニューロックを脱し、R&RやR&Bに根ざした初志貫徹に弾かれているのは好ましいかぎりです。

後年、一般的な解釈になっているように、エリック・クラプトンの新たな出発となったスワンプロック趣味は、デラニー・ブラムレットからの影響があったと言われていますが、それを証明して余りある真相が、ここに記録されていると思います。

もちろんそれは決して難しいものではなく、ストレートに楽しいんですよねぇ~♪

それと既に述べたように、ここで聴かれるサウンドの要というか、リズムの刻みが部分的に当時のストーンズ、つまり「スティッキー・フィンガーズ」から「メインストリートのならず者」あたりのアルバムに収録の楽曲や同時期のライプ演奏に共通しているのも意味深でしょう。

また同じくホーンリフの仕掛けのタイミング等々が、さもありなんということは、ここに参加のジム・プライスとボビー・キーズが、やはり同時期のストーンズではサポートメンバーとして、かなり重要な役目を果たしていた事実と符合するんじゃないでしょうか。

そして一番気になるのが、後にエリック・クラプトン率いるデレク&ドミノスのメンバーとなる3人、そのボビー・ウィットロック、カール・レイドル、ジム・ゴードンの存在が、このライプでは最重要な役割を演じているという点です。

実際、彼等が作り出す強いウネリと叩きつけるようなビートは、しなやかさとヘヴィな質感が同居した唯一無二の素晴らしさだと思いますし、それ無くしてはデラニー&ポニーが意図するところの歌と演奏は、これほどの熱気と感動を伝えきれなかったと確信している次第です。

最後になりましたが、初出LP「オン・ツアー(Atco)」の内容と比較して、もちろん出来は遜色がありません。しかもこちらは当時のステージが、そのまんまの流れで楽しめる収録だと思いますので、満足度も抜かりなし!

それがアナログ盤LP1枚の仕様になったのは、エレック・クラプトンの参加ゆえに権利関係の何かがあったのか、あるいは2枚組にするには演目が不足がしている事情からか、とにかく今は、そんな諸々を気にせずに楽しめる現実を感謝するばかりです。

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