■Fairfield Halls Sunday, December 7 - 1969 2nd Show
/ Delany & Bonnie & Friends with Eric Clapton (Rhino Handmade)
いよいよデラボニ「オン・ツアー箱」も最終の4枚目!
しかも付属解説書によれば、このセットからは初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用されたテイクがほとんどらしいので、リラックスした熱演は間違いないんですが、実はそれゆえに様々な詐術が浮かび上がっています。
また、この巡業のレギュラーメンバーたるデラニー・ブラムレット(vo,g)、ボニー・ブラムレット(vo)、エリック・クラプトン(vo,g)、ボビー・ウィットロック(vo,org)、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(ds)、ジム・プライス(tp)、ボビー・キーズ(ts)、リタ・クーリッジ(vo) に加えて、ここにはデイヴ・メイソン(g,vo) が最初から堂々の参入、また、ついにジョージ・ハリスン(g) も!
01 Intro / Tuning
02 Gimme Some Lovin'
03 Pigmy (instrumental)
最初は恒例、フレンズだけによる歌と演奏ですが、今回はデイヴ・メイソンが「俺が、俺が」の大ハッスル! 「Gimme Some Lovin'」でのボビー・ウィットロックとのツインボーカルは言わずもがな、ワルノリ気味の私語MCとか、自分が楽しんでいる掛け声や歌い出しのミスとか、とにかく笑ってしまうところさえありますよ。
またインストの「Pigmy」はブッカーT&MGs がサンタナしたような、実にイカシたラテンロックのソウルジャズ♪♪~♪ ボビー・ウィットロックのオルガンが熱気を撒き散らせば、カール・レイドルのペースが余裕のウネリ! そしてジム・ゴードンの強いビートが心地良い限りですから、左チャンネルに定位するエリック・クラプトンのギターも少しジャズっぽいスケールを用いた早弾きを披露しています。それとボビー・キースが、これまたシビレるような熱血プローなんですよねぇ~♪ このあたりはストーンズが「スティッキー・フィンガーズ」で発表した「Can't You Hear Me Knocking」と共通するフィーリングが要注意かもしれません。
あと、最終パートの左チャンネルで些か不器用なギターソロを演じているのは誰? ちなみにデイヴ・メイソンのギターは最初、真ん中でリズムを刻んでいたのが、途中から聞こえなくなるので、もしかしたらと思うのですが、明らかにスタイルが違うようにも感じます。
04 Introductios
ここからも通例、いよいよデラニー&ポニーの本番ライプになるんですが、その前にデラニー・プラムレットからイギリス巡業の成功に対し、そして特別参加のエリック・クラプトンとジョージ・ハリスンに感謝の言葉が述べられます。
うっ、すると前述の不器用なギターは、ジョージ!?
う~ん……。案外とエリック・クラプトンだったかもしれませんし、もしかしたらデラニー・ブラムレット??? 謎は深まるばかりです。
05 Things Get Better
06 Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson
というモヤモヤをブッ飛ばすのが、この快演二連発!
観客を煽るデラニー・プラムレットが導く「Things Get Better」は、ドロドロに粘っこく、これがスワンプロックの真髄を楽しませてくれますよ。ちなみに、ここでは左チャンネルにエリック・クラプトン、右チャンネルにデラニー・ブラムレット、そして真ん中にデイヴ・メイソンというギターの定位が、その弾き出されるフレーズで推察され、特にデイヴ・メイソンが十八番のワンパターン三連フレーズが美味しいオカズになっています。
またサウンド作りというか、ミックスのキモが、他のライプ音源と異なり、団子状態になっているところはアナログ盤LPと共通しつつも、ここでは上手いリマスターによって、各楽器の分離や力強さが尚更に顕著になっています。特にカール・レイドルのペースが野太く、またジム・ゴードンのドラムスも強いですねぇ~♪
もちろんデラニー&ポニーのボーカルも、その自然体のゴスペルフィーリングが早くも全開! 「Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson」ではグイグイとバックの演奏を引っ張って行くが如きノリが最高ですから、このふたつの快演が初出LP「オン・ツアー(Atco)」ではA面ド頭に採用されたのも、当然だと思います。
07 Only You Know I Know
さて今回は、これが問題の歌と演奏です。
この音源では作者のデイヴ・メイソンを特に紹介し、本人のリードボーカルで歌われるのですが、付属解説書によれば、このテイクが初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用されたということで、聴き比べてみると、そこではボーカルの差し替えがあったことが明白です。つまり些か歌い損ねているポニー・プラムレットのパートを修正し、デイヴ・メイソンのボーカルを小さく絞り、デラニー・ブラムレットにリードを歌わせたようなバージョンに手直しされているんじゃないでしょうか?
個人的には初出LP「オン・ツアー(Atco)」に馴染んでいたので、このネイキッドなテイクは雑なような気がして、ちょいと……。
08 Will The Circle Be Unbroken
09 Where There's A Will, There's A Way
という煮え切らない気分を、またまた霧散させてくれるのが、このゴスペルスタンダード「Will The Circle Be Unbroken」を極めて自然体に歌ってくれるデラニー&ポニーの快演です。
う~ん、この雰囲気の良さは、まさにデラニー&ポニーの素顔というか、ふたりが幼少の頃から馴染んできた世界なんでしょうねぇ~♪ これが初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用されなかったのは残念でなりません。
しかし反面、あまりにもツボを押さえ過ぎたのでしょうか、ロックっぽくないのは事実ですから、所謂スワンプロックという新しい音楽の見地からすれば、それも正解だったかもしれません。
いずれにせよ、ここで楽しめるようになったのは僥倖でしょうねぇ~♪
10 I Don't Know Why
さて、またまた恒例のエリック・クラプトンがワンマンショウは、結論から言うと、このボックスセットに入っている4テイクの中では、一番に出来が良いと思います。
それは失礼ながら、下手なりに歌う事が形になってきたエリック・クラプトンの個性が表れていることで、その真摯な姿勢が、せつせつとした語り口となり、なかなか自然体なスワンプフィーリングが曲調に合っていると感じます。
また絶対の自信があるに違いない自らのギターに、あえて頼らないところも、新生エリック・クラプトン! いゃ~、本当にこのテイクは名唱・名演と言って過言ではないかもしれませんねぇ~♪ もちろん終盤では、これしか無いの必殺ギターを炸裂させますが、イヤミになっていないんですよっ!
11 That's What My Man Is For
こうして、すっかり良いムードになったところで、さらに追い撃ちというか、ポニー・プラムレットが素晴らし過ぎる黒っほさを披露する名唱です。
いゃ~~~、これが白人歌手だなんて、知っていなければ仰天する他はありませんよねぇ~♪ バックの演奏が完全にリードされていくグルーヴィなノリは、全くの唯一無二! もちろん初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用された時にも、それほどの手直しは無かったと思われますが、ここでのリマスターではコーラスや各楽器の存在感が上手く浮きあがって、尚更に感動的ですよ。
個人的にも、これを聴くと幸せを感じます。
12 Coming Home
このセットでも疑惑があるのか?
という先入観念で聴いてしまう演奏なんですが、今回はど真ん中から堂々とスライドギターが鳴り響きます。そして良く聴くと、そこにはもうひとつのギターが存在し、時折ツインリードを弾いているんですよねぇ。
ちなみに左チャンネルにはエリック・クラプトンが絶対的に屹立していますし、ここまでの流れで真ん中にはデイヴ・メイソンのギターがあると思われることから、右チャンネルにはデラニー・ブラムレット? ということになるんですが……。
う~ん、いくら唸っても謎は深まるばかりの中で、あえて真ん中のスライドギターはジョージ・ハリスンと思いたい気分が濃厚です。
ただし、ジョージ本人が何時頃からスライドをマスターしたのかは、ちょっと定かではなく、またエリック・クラプトンが本格的にスライドを習ったのは、デラニー・ブラムレットからという説もある以上、そんな諸々を無視することも出来ません。
まあ、それはそれとして、このテイクの粘っこいロックフィーリングは特筆物!
いくら超一流のメンバー揃いとはいえ、リアルタイムでここまでの音を作り出したのは流石というには言葉が足りません。ただし、このCDではサウンドそのものが、ちょいと綺麗になり過ぎた感もあり、ここはアナログ盤LPの幾分モコモコした音の方が、泥沼の熱気を存分に楽しめるかもしれませんねぇ。もちろんそれは、このネイキッドなバージョンが随所で手直しされた結果ではありますが!?!
13 Little Richard Medley
A. Tutti Frutti
B. The Girl Can't Help It
C. Long Tall Sally
D. Jenny Jenny Jenny
そして鳴りやまない拍手の中の大団円は、お待ちかねのR&R大会!
しかし、その前に主催者からの感謝の挨拶があって、デラニー&ボニー&フレンズはもちろん、ビートルズのジョージ・ハリスン! クリームのエリック・クラプトン♪♪~♪ そしてトラフィックのデイヴ・メイソン☆▲◎~♪ なぁ~んていう特別の紹介には会場も別格の盛り上がりの中、ハッピィクリスマス! 間髪を入れずに始まるR&Rの強烈なビート&シャウトは、もう震えがくるほどにカッコイイ!!!
もうこの瞬間だけ、何回リピートしてもシビレますよ♪♪~♪
当然ながら歌と演奏も興奮性感度が絶大で、エリック・クラプトンの爆発的なR&Rギターは極みつきですし、豪快なジム・ゴードンに燃えまくりのホーンセクション、カール・レイドルのゴリゴリなウネリ、しぶとい彩りを添えるボビー・ウィットロックのオルガンも好ましく、それゆえにデラニー・ブラムレットのロケンローラーぶりも発狂寸前!
あぁ、これがロックの基本姿勢でしょうねぇ~~~♪
ちなみに、このテイクも初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用されていますが、ここは前述のMCからの流れと自然なリマスターによる抜群の臨場感ゆえに、ぜひとも、このCDでお楽しみくださいませ。
ということで、暑さもブッ飛ぶどころか、鑑賞性熱中症には要注意の物凄いライプです。もう、「1st Show」の物足りなさがウソみたいですよっ!
ご存じのとおり、デラニー&ポニー&フレンズは、この直後にレオン・ラッセルによって主要メンバーを引き抜かれたり、あるいはエリック・クラプトンがデレク&ドミノスを結成したりのあれこれがあって、二度と同じメンツで再編されることがありませんでしたから、尚更に残された音源は輝きを増しているのですが、そんな現実を抜きにしても、この「オン・ツアー箱」に収められた歌と演奏は、まさに一期一会の刹那の境地でしょう。
中でも、流石に公式テイクが多いこの日のステージは、緊張と緩和のバランスが素晴らしく、また録音そのものが如何にもスワンプロックという熱気と図太さを兼ね備えています。
しかし総括的には、4回のステージにそれぞれの楽しみと聴きどころが満載だと思います。特にエリック・クラブントンが演じる「I Don't Know Why」のトホホな感性と味わいの深さは最高に興味深く、それゆえにラストバージョンの出来栄えに不思議な感動を覚えるんじゃないでしょうか。
もちろん主役のデラニー&ポニーは最高で、とにかく、どのセットを聴いても、シビレることは請け合いです。
最後になりましたが、4枚のデジパックジャケットの中面には、初出LP「オン・ツアー(Atco)」の裏ジャケ写真の別テイクとステージ写真が、それぞれ4パターン収められていますが、ステージの狭さには、ちょいと驚きましたですね。
それは反面、小さめの会場で、これほど素晴らしいショウを堪能出来た当時のファンの幸せでもあるでしょう。
タイムマシーンが、あったら、ねぇ……。
と、思いつつ、5回連続のデラニー&ポニーをお読みいただきまして、心から御礼申しあげます。