■Land Ho! c/w You Make Me Real / The Doors (Elektra / 日本ビクター)
ドアーズはアルバム単位で聴くのが正しいのかもしれませんが、例によって経済的な事情からLPが買えなかった少年時代のサイケおやじは、シングル盤優先でも、それなりに楽しめたバンドでした。
そこで本日ご紹介は、ドアーズが官憲によって抑圧されていた1970年、まさに渾身の力作として発表したアルバム「モリソン・ホテル」から、我国独自のカップリングでカットされた1枚です。
ご存じのように、当時のドアーズは前年3月にあったとされる、ジム・モリソンのステージ上での開チン事件によって巡業が困難になっていた時期でした。
それは演劇的なアクションがウリだったジム・モリソンにすれば、その中のひとつの動きが自慰行為と受け取られたことからの誤認逮捕とする見方もあるようですが、それがマスコミによって伝えられる過程では、憶測と予断が大きく入りますからねぇ……。当然、我国でも洋楽ファンばかりか、一般の大人も知ることになったスキャンダルでした。
しかしドアーズの面々は1967年の公式デビュー以降、忽ちの大ブレイクで多忙を極め、1968年後半からは発表する楽曲のクオリティが落ちていた事を周囲から指摘されたのでしょう。この逆境をバネにしたというか、曲作りやレコーディングには充分な時間を確保出来る環境を得て、前述「モリソン・ホテル」のセッションに臨んだと言われています。
そして完成されたアルバムはA面に「Hard Rock Cafe」、B面には「Morrison Hotle」とサブタイトルまでが付けられたハード&へヴィな仕上がりとなって、些かの低迷期を見事に脱したのです。
ただし、それゆえに売れるシングル向きの曲が見当たらないのも確かです。
う~ん、きっとこのシングルを出すのにも、担当者は困ったんでしょうかねぇ~。
しかし以上のような話は、アルバムを優先的に聴いての感想だと思います。
リアルタイムのサイケおやじは、この「Land Ho!」が最初にラジオから流れた瞬間、ビリビリにシビレましたですねぇ~♪
イントロからウキウキさせられるギターのリフ、お祭りのようなオルガンに土人のリズムがジャストミートのロックなノリが、いきなり最高ですよ♪♪~♪ そして幾分軽いジム・モリソンの歌いまわしが、バンド全体のグルーヴと見事に一致していると思います。もちろん妙に人懐っこい曲メロの展開とハードなギターが、これ以上無いほどに1970年代ロック!
またB面の「You Make Me Real」が、これまた激しいビートの中で躍動するピアノと歪みが全開のギター、そして力んだボーカルは快いばかりです。
あぁ、これがロックだと思いますねぇ~~~♪
確かアメリカでは、こちらがA面扱いだったと記憶していますが、とにかくビシッとキマッた歌と演奏は強烈至極!
ですから、シングル盤を買ったばかりだったサイケおやじは結局、程無くしてLP「モリソン・ホテル」にお金を使わされてしまったのですが、全く後悔していません。
それほど当時のドアーズは、気合いが入った歌と演奏を繰り広げていたんですよ。
ということで、今日では様々なアーカイヴ音源を出まくっているドアーズではありますが、まずは残された公式レコーディングをきっちり楽しみ直すのも、悪くないと思います。
特にドアーズの場合はデビューアルバム「ハートに火をつけて」と次作「まぼろしの世界」ばかりが名盤扱いになっていますが、実質的に後期となってしまった「モリソン・ホテル」や「L.A.ウーマン」も侮れません。
と言うよりも、再びの上昇気流に乗ったドアーズの勢いが素晴らしいんです!
個人的には、それもこれも、このシングル盤を聴いたおかげで目覚めた幸せと感謝しています。