■Summertime Blues / Blue Cheer (Philips / ビクター)
本日も地獄の様な鬱陶しさ、蒸し暑さが全国に蔓延していますが、信越から東北には大豪雨も襲来していますから、ひたすらに災害が広がらないように祈るだけです。
う~ん、全く人間は自然の前では無力なもんですねぇ……。
そこで本日も豪快にスカッとする傑作名演ということで、季節物ではありますが、ブルー・チアーの一発ヒットを出してみました。
ご存じ、元祖ハードロッカーのエディ・コクランが1958年に自作自演の大ヒットにしたのがオリジナルではありますが、おそらくサイケおやじの世代ではザ・フーのライプ名演が強い印象になっていると思います。
しかし、その間にあって、もうひとつの決定的なハードロックバージョンが、1968年に出されたブルー・チアーの傑作シングルでした。
と言うよりも、このブルー・チアーがあればこそ、ザ・フーの演奏が一際凄くなっている側面も無視出来ません。
それは剛直なリズムとビートの刻みがハードロックの王道であり、歪むギターとドカドカ煩いドラムス、地を這うが如きベースの蠢きが濁ったボーカルを煽るという展開であり、まさにザ・フーが披露して全世界のロック好きを歓喜悶絶させた味わいの前段が、ここにあるというわけです。
ちなみに演じているブルー・チアーはサンフランシスコ周辺で結成され、1967年頃の公式デビュー時にはランディ・ホールデン(g)、ディッキー・ピーターソン(b,vo)、ポール・ホエイリー(ds) の3人組で、実に気合いの入ったハードロックを演じていたそうです。
もちろん、それは英国のクリームに影響されたものでしょうし、実際のライプでは轟音といって過言ではないボリュームの演奏をやっていたと言われています。
そして所謂一発屋の大ヒット「Summertime Blues」にしても、前述したエディ・コクランのオリジナルバージョンを実に上手くサイケデリックとハードロックで味付けした手際が秀逸ですから、あながちマグレ当たりとは言い切れない実力派だったように思います。
ところが何故かバンドとしての纏まりが非常に悪かったのが、このブルー・チアーの個性として認められるあたりに、ちょいと哀しいものを……。
なにしろデビュー期に大ヒットを出していながら、メンバーチェンジが頻繁過ぎるほどで、数枚出したアルバム毎に参加する顔ぶれが違っているという混乱は、決して安定した人気に繋がらなかった現実と無縁ではないでしょう。
当然ながら、演じている音楽性そのものが、コロコロ変わっている節操の無さも問題で、それはそれで優れた楽曲や演奏も残されてはいますが、多分サイケおやじも含む多くのファンは、この「Summertime Blues」の路線を望み続けたのでは……?
そこで問題になるのは、ザ・フーの面々が、このブルー・チアーのバージョンを意識していたか?
その答えは如何様にも出せると思いますが、全ての面においてザ・フーの演奏が完成されていると感じるのは、贔屓目ではないでしょう。
しかしエキサイト性感度の高さという点においては、ブルー・チアーにだって充分に対抗出来る力量が、無きにしも非ず!?!?
実は告白しておくと、サイケおやじはザ・フーのライプバージョンに完全KOされていた昭和45(1970)年、同時に心の中では以前にラジオで聴き、気に入っていたのに小遣いが足りなくてレコードを買えなかったブルー・チアーの演奏が気になるという、浮気状態♪♪~♪
そして中古でゲットしてきたのが、本日掲載のシングル盤でした。
ただしサイケおやじの記憶では、これが発売された昭和43(1968)年頃、ラジオからは相当に流れていたはずが、特に売れるほどヒットしたという感じがしません。
これはちょいと脇道にそれますが、当時のラジオの洋楽番組はレコード会社がスポンサーというのが実に多く、つまりは自社のミュージシャンばかりをイチオシに流していた事と無関係ではないでしょう。
ですから、そういうプログラムが成立していた上に、放送局各社が作るチャート番組があったのですから、今となっては様々な思惑が交錯していた世界だったんでしょうねぇ~。まあ、リアルタイムの洋楽ファンとしては、新しい情報や好きな歌と演奏が聴け、一喜一憂することが大目的だったわけですから、それで良かったんですが……。
今となってはブルー・チアーの「Summertime Blues」が後年のパンクやヘビメタに絶大な影響を与えた云々という定説に、ちょうと面映ゆい感じがしますねぇ。
そんな鬱陶しさも含めてブッ飛ばしてくれるのが、こうした演奏じゃないか?
本当にそう思うばかりです。