■愛の伝説 c/w 天使の横顔 / ザ・フィンガーズ (London / キングレコード)
とかく世の中は儘ならず、それでも稀な幸運に震えてしまう事だって確かにありますから、人は生きて行けるのかもしれません。
例えば本日ご紹介は、我国のロックバンド史にその名を刻すフィンガーズの4枚目のシングル盤なんですが、発売された昭和43(1968)年初夏といえばGSブームが爛熟していた時期でありながら、結論から言うとヒットしなかった1枚です。
それはフィンガーズが当時、エレキインストの若手最高バンドとして認知されていたにもかかわらず、ここを境に歌謡フォークのグループへ転身した様なイメージの所為でしょうか、明らかなファン層の変化が売れずに終わった原因と思われます。
しかし、実はそれこそが重要であって、既に芸能界のトレンドはエレキインストからアイドルGSにシフトした制作方針が定まり、まずは売れる事を目指すなら、甘~い楽曲にオーバープロデュースなアレンジもイヤミ寸前という、ほとんど少女趣味に近いヒット曲が求められていたのです。
そしてフィンガーズもレコード会社を移籍、さらにメンパーチェンジによって成毛滋(g)、高橋信之(g,vo)、蓮見不二男(key)、シー・ユー・チェン(vo,b)、松本幸(ds) という布陣になった事で、堂々とミーハー(?)路線を歩み始めたわけですが……。
ここからはサイケおやじが十八番の結果論として、かなり硬派のイメージがあったオリジナルのフィンガーズに対し、特にシー・ユー・チェンが女の子にダントツの人気を集めたこの時期は、どこか裏切られた気持にさせられた野郎どものファンがいたように思います。
もちろんサイケおやじも、そのひとりとして、リアルタイムではこのレコードを買う気はしなかったんですが、時が流れてみると、歌謡フォーク系ソフトロックの裏名盤として、これはなかなかの仕上がりと納得させられたんですねぇ~♪
なにしろA面の「愛の伝説」からして作曲が村井邦彦! ですから尾中美千絵の綴った歌詞を彩るメロディセンスの良さはお洒落な洋楽ポップスのムードに溢れ、ミディアムテンポの曲進行には甘茶なストリングも良い感じ♪♪~♪
しかも、それまでのバンドのウリだった成毛滋のド派手なギターソロが封印されているところは、完全に特別な意図がミエミエです。
つまり成毛滋はアイドル化計画には無用の長物って事なんでしょうか!?
もし、そうだとすれば、あまりの仕打ちだと思うんですよねぇ……。硬派なファンが離れてしまうのも当然だと思うばかりです。
実は告白すると、サイケおやじが高校の時に入れてもらっていた同好会のバンドで、この「愛の伝説」をやるという話があったんですが、それはガチガチのロックを学校側から禁じられていた故の方策ではありながら、サイケおやじはど~しても納得出来ずに猛反対! 結果的にボツになった事は我儘以上ではありますが、ちょいと今でも面映ゆい思い出です。
と言うのも、既に述べたとおり、時が流れてみると、この「愛の伝説」は実に味わい深い名曲であった事に目覚めたからであって、短く出てくるギターソロも含めて、あぁ~、あんときやっておきたかったなぁ~~、という後悔が残っているんですよ……。
その意味でB面収録の「天使の横顔」が、これまたイントロからパロック風味のオルガンとミエミエのコーラスがキワドイ、まさに当時のGSトレンドがど真ん中のクラシック調歌謡フォークの決定版で、もちろんオーケストラ入りの演奏パートは刹那の境地♪♪~♪
しかも作詞:尾中美千絵、作曲:葵まさひこの相性の良さは特筆物で、出来はA面以上かもしれません。
ですから、この売れなかったシングル盤が幻の人気アイテムとなって幾年月!? 中古屋巡りでもサイケおやじの特標的になっていたんですが、それを先日、某ネットオークションでゲットすることに成功し、ついに昨夜、手元に届きました♪♪~♪
あぁ、この幸運♪ この幸せ♪ 世間様に対し、申し訳ないという気持さえあるほどです。
そして、こういう事があるからこそ、人生は大切にするべきと自覚を新たにするのでした。
感謝!