■愛してる愛してない c/w モーター・サイクル・ベイビー / チャコとヘルス・エンジェル (RCA)
ニッポンのロックは明らかにGSからの流れを無視出来ず、何をもって一線を画すのかは微妙なところでしょうが、しかしアイドル性を重視すれば、どんなに優れたバンドであっても軽くみられたのが「昭和」という時代です。
中でも本日ご紹介のチャコとヘルス・エンジェルは、昭和48(1973)年にデビューするや、忽ちにして人気バンドになったものの、そのあまりのアイドル指向の強さにロック魂を抜かれたグループとして、硬派な野郎どもからは相手にされなかったわけですが……。
当時の洋楽的な視点からすれば、チャコとヘルス・エンジェル=チャコヘルはイギリス発祥のグラムロック~ティーンポップ系バンドの路線を極めて歌謡アイドル風に焼き直して成功を得た点だけでも、実は密かに今も忘れられていないバンドのひとつだと思います。
メンバーはチャコ=田中まさゆき(vo)、天本健(vo)、浅野孝巳(g)、柴田功(key)、塩川銀次(b)、牧勉(ds) という6人組で、今となってはギターの浅野孝巳が後にゴダイゴに参加し、世界的にブレイクを果たした事から、チャコヘルが再注目された逸話も有名ではありますが、眼帯をトレードマークにしていた塩川銀次と実はリーダーだった牧勉はGSのサマーズでキャリアを積んでいましたし、柴田功は、これまた後にダニエル・ビダルと結婚した事でも有名でしょう。
しかし何んと言っても人気を集めたのは、リアルタイムで15歳だったと言われているチャコ=田中まさゆき、そして早世した天本健のアイドル丸出しのイメージでありました。
ところが、絶対に忘れてならないのが、バンドとしての確かに実力であって、物凄いミーハーノリのライプギグにおいても、その演奏における高度なテクニックは、例えば浅野孝巳の上手すぎるギターばかりではありません。
当時を知っている皆様であれば、テレビでは「ぎんざNOW!」とかに頻繁に出ていましたから、そのバカ騒ぎ(?)っぽい狂熱のステージをご存じかと思いますが、逆に言えば、あんな状況でも決してヨレを感じさせない演奏は流石と言うべきでしょう。
また当時、幸運にもサイケおやじは生ライプにも接していますが、やっぱり上手かったですよっ!
ちなみに、こうしたバンドの演奏力の安定度は、例えばスイートあたりにも共通するポイントとして、侮れません。
さて、そこで本日掲載のシングル盤はチャコヘルのデビュー曲「愛してる愛してない」をA面に収録したヒット作で、有馬三恵子の作詞に馬飼野康二の作編曲というだけで、如何にもアイドル路線がど真ん中♪♪~♪
おまけに曲のネタが、デイヴ・クラーク・ファイヴの「Because」モロパクリなんですから、たまりません♪♪~♪
ついでに言えばB面の「モーター・サイクル・ベイビー」にしても、早口言葉のような歌と演奏が、ほとんどキャロルの「ファンキー・モンキー・ベイビー」ですからねぇ~~。その全くノーテンキなノリは見事過ぎますっ!
もちろんバンド名からもご推察のとおり、バイカーイメージも狙っていたのでしょうねぇ、皮ジャン系の衣装で頑張っていたチャコヘルが忘れられないという皆様もいらっしゃるはずです。
また肝心のレコードはアルバムがLP3枚、シングルは5枚ほど出したはずですから、その人気の高さは女の子限定だったかもしれませんが、なかなかインパクトの強い存在でありました。
ということで、チャコヘルは昭和50(1975)年に解散してしまったんですが、前述したスイート同様、ニューロックやプログレの味わいも表現出来た事から、現在なればこその楽しい聞き方があろうかと思います。
今日では「ネオGS」なぁ~んていう言葉で括られるチャコヘルではありますが、ロックバンドがアイドル路線で何故、悪い!?
そんな天の邪鬼なサイケおやじの気分には、最もジャストミートしているのが、チャコヘルというわけです。
機会があれば、お楽しみ下さいませ。