OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

年の瀬や 空にくじらが 飛ぶかぎり

2015-12-30 16:04:48 | Singer Song Writer

空飛ぶくじら / 大瀧詠一 (ベルウッド / キングレコード)

ここ最近、体調が悪く、失礼致しました。

おかげ様で回復基調というか、少しずつ上向きの気分で年末年始を過ごせそうです。

ただし昨年のように特集的なエロジャケ盤のご紹介は、流石に年賀欠礼の身としては自粛させていただきます。

さて、そこで掲載したのは折あしくも命日である大瀧詠一が昭和47(1972)年に出した自己名義のソロシングルで、もちろんここで「自己名義」としたのは、当時の大滝詠一は、はっぴいえんどのメンバーであり、楽曲そのものも後にアルバム収録された時には同バンドのべス盤に入れられたという経緯があるからです。

しかし現実的なレコーディングセッションには、はっぴいえんどの他のメンバーは参加しておらず、どうにか作詞に江戸門弾鉄を名乗った松本隆、そして作曲に多羅尾伴内=大瀧詠一のクレジットがありますから、如何にも苦肉の策かもしれません。

そして肝心の楽曲「空飛ぶクジラ」が、はっぴいえんどっぽく無いわけで、クラリネット等々を入れた、これがなかなか親しみ易いホノボノ調の仕上がりなんですねぇ~♪

このあたりを評論家の先生方や大瀧詠一本人は、「封印していたビートルズ」を解禁した云々みたない話でオチをつけようとしたみたいですが、サイケおやじとしては、あまりそれに拘っていません。

ご存じのとおり、大瀧詠一はロックミュージシャン、あるいはシンガーソングライターというよりも、既にプロデューサーとしての音楽活動をメインにしていた感があり、だからこそ如何様にも好きな歌や曲を制作出来る立場に入っていたのですから、幅広い趣味性を公にしたところで節操云々という事は批判の対象にはならないでしょう。

平たく言えば、大瀧詠一がソロ名義で制作する楽曲の多くが所謂「パクリ」でありながら、決して「盗作」の誹りを受けないのは、故人が偉大なるコラージュ作家だったゆえの事と思うんですよ。

だから残された歌や演奏には様々な洋楽の元ネタがちりばめられ、それを解明するのがコアなマニアの証とするファンも大勢存在し、そうした人達の前で大瀧詠一を軽んじたりすれば、忽ち「お前は分かっていない!」とか「洋楽ファンでは無い!」とかバカにされ、極言すれば仲間には入れてもらえないという、本当に閉鎖社会の象徴であるはずが、実際は誰にも気持ち良く楽しめる世界が大瀧詠一の音楽でしょう。

ただし残念ながら、これは好みの問題なんですが、故人のボーカルの特性が時には「なめくじ」とまで称されるほどのクセがあり、あぁ、こんな事を書いてしまっては皆様からのお叱りは覚悟せねばなりませんが、だからこそ大衆的なヒットの世界からは縁遠かったのが当時の大瀧詠一だったんじゃ~ないでしょうか。

逆に言えば、本人を筆頭に、これほどマニアックなレコードを作る日本人ミュージシャンは稀だったのが当時の実情だったような気がします。

つまり本人が自分で望むレコードを作っていたという趣味性の極みこそが、大瀧詠一の真骨頂かもしれないのです。

説明不要とは思いますが、今や誰もが知っている山下達郎や佐野元春、シャネルズ=ラッツ&スター、松田聖子や太田裕美に至るまで、大瀧詠一が関わった制作作業のあれやこれやは、見事なまでのポップス歌謡として既に「日本語のロック」だとか、「ニューミュージック」なんていう曖昧にして便利な括りを必要としないものになっていますよねぇ~♪

あくまでも個人的な思いですが、サイケおやじは「空飛ぶくじら」を聴く度に、今日の「J-POP」が確立した過程における大瀧詠一の存在を強く意識せざるをえません。

ということで、今年の個人的総括は明日にさせていただきますが、それにしも本年は私的激動の連続でありました。

そこで本日ぐらいは、ホノボノと過ごしたいと願い、「空飛ぶくじら」に針を落としたというわけです。

コメント (2)
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