■Soul And Inspiration / The Righteous Brothers (Verve / 日本グラモフォン)
「二番煎じ」はこの世の常、殊更芸能というジャンルでは欠かせない手法であり、例えばライチャス・ブラザースが1966年に大ヒットさせた本日掲載のシングル盤A面曲「Soul And Inspiration」は、そのものスバリ! この白人ソウルデュオが大ブレイクした前年のチャートトップ曲「フラレた気持ち / You've Lost That Lovi'n Feelin'」の焼き直しという現実は否定出来ないと思いますが、いかがなものでしょう。
もちろん両曲は、共に作者がバリー・マン&シンシア・ウェイルのコンビが書いたものであり、仕上がったレコードに収められたサウンドの趣にしても、これが見事なフィル・スペクター流儀の「音の壁」なんですから、念が入っています。
と書いたのも、皆様ご存じのとおり、前述した「フラレた気持ち / You've Lost That Lovi'n Feelin'」は、御大フィル・スペクターが小さなヒット曲を頼りに地味な活動をしていたライチャス・ブラザースを気に入り、当時所属していたレコード会社から残っていた契約も含めて自らが運営するフィレスに引っこ抜いての仕事だったんですが、やはり売れてしまうと様々なゴタゴタもあったようで、結局は莫大な契約金を提示した大手のMGMに移籍契約!?!
そして早速作られたのが、この「Soul And Inspiration」という事ですから、その「音の壁」の再現を筆頭にする「二番煎じ」にも周到な準備と実践があったはずで、これが売れなければヒットチャートの神様からは天誅必至だったでしょう。
しかし、後に知ったところでは、これを書いたバリー・マン&シンシア・ウェイルにとってはボツ扱いのネタだったそうですから、二番煎じは両刃の剣!?
なにしろ以降のライチャス・ブラザースは、これに味を占めたかのようにフィレス時代に残していた音源と似て非なるが如きレコードを作ったり、ほとんどツキを使い果たしたかのような低迷期に入り、結局は1968年頃に活動停止……。
ビル・メドレーはソロに転向、ボビー・ハットフィールドは新メンバーを起用してのニュー・ライチャス・ブラザースを結成しますが、鳴かず飛ばずの後に両者は再結成を果たすものの、ど~しても「Soul And Inspiration」を越えられなかったのですから、現実は厳しいと思うばかりです。
ということで、しかしサイケおやじは決して「二番煎じ」が嫌いではありません。
実際、映画でもスターシステムに基づくプログラムピクチャーが好きですし、所謂「2」物にも大いに気を惹かれますからっ!
うむ、そんなこんなの「二番煎じ」な楽曲だけを集めた私的コンピレーションでも作ろうかなぁ~~、と思っているのでした。