OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

バンド・オブ・ジプシーズの切実:其の参

2016-11-12 18:24:47 | Jimi Hendrix
Band Of Gypsys (Capitol / Track / Poldyor)
 
 A-1 Who Knows (1970年1月1日:1st show)
 A-2 Machine Gun (1970年1月1日:1st show)
 B-1 Changes (1970年1月1日:2nd show)
 B-2 Power Of Soul (1970年1月1日:2nd show)
 B-3 Message To Love / 恋のメッセージ (1970年1月1日:2nd show)
 B-4 We Gotta Live Together (1970年1月1日:2nd show)
 
1970年9月のジミヘン早世以降、堰を切ったかのように次々と発売されていく遺作音源は、例えばオーティス・レディングとLP片面ずつ抱き合わせになっていた「モンタレー・ポップ・フェス」からのライブ盤、スタジオでレコーディングされていた未発表トラックを纏めた「クライ・オブ・ラブ / The Cry Of Love」や「戦場の勇士たち / War Heroes」、映画のサントラ扱いだった「レインボー・ブリッジ / Rainbow Bridge」そしてライブ音源を拾い集めた「イン・ザ・ウエスト / Hendrix In The West」、さらには例の「ワイト島 / Isle Of Wight」、おまけに一般公開が不可能な記録映画「エクスペリエンス」を構成しているロイアル・アルバート・ホールでのライブ音源等々、諸々の正規アルバムが1972年頃までに世に出たのですから、ファンは嬉しい悲鳴に一喜一憂!?
 
それが当時高校生だったサイケおやじにとっては、聴きたくても経済的な事情が許さず、それでも昼飯のパン代を流用したり、友人知人からレコードを借りてはカセットコピーして、なんとか天才の偉業に接してみれば、そこには述べるまでもなく、物凄いジミヘンの世界が繰り広げられていました。
 
もちろん、十人十色の好き嫌い、そして演奏や録音の良し悪しが常に議論の対象になるが如き諸問題は、そこに確かにありました。
 
しかし、サイケおやじの場合は、何を言われたって、バンド・オブ・ジプシーズよりは好きっ!
 
なぁ~んて、今から思えば、とんでもなく不遜な戯言を弄していたのですから、お恥ずかしいかぎりです。
 
というよりも、前述したジミヘンの遺作音源があまりにもサイケおやじの好みだったもんですから、正直バンド・オブ・ジプシーズのライブアルバムは、ど~でもよくなっていたという、これまた大バカヤローだったわけです……。
 
で、そんな頃に邂逅したのが、いきなりの新譜扱いで発売された「カルロス・サンタナ&バディ・マイルス! ライブ! / Carlos Santana & Buddy Miles ! Live ! 」と題されたLPで、これはサンタナの主要メンバーとバディ・マイルスの一味がジャムったステージライブ音源から作られた、なかなか熱い1枚だったんですが、中でもバディ・マイルスの熱血シャウトと迫力のドラミングに対峙するカルロス・サンタナの泣きじゃるギターが本当に最高で、毎日夢中になって聴いていたんですが、ある日、うっと呻いて(?)気がついたのが、これって、バンド・オブ・ジプシーズじゃ~ねぇ~かなぁ~~?
 
という、まさに目からウロコ状態で、そのまんまの勢いから以前にテープコピーしていた件のカセットを再生してみれば、このジミヘンはっ!? このバンド・オブ・ジプシーズはっ!?
 
その時になって、ようやくバンド・オブ・ジプシーズとジミヘンがやろうとしていた何かが伝わって来たような気持ちにさせられましたですよ。
 
速攻で中古屋を巡り、遅ればせながらバンド・オブ・ジプシーズのアルバムをゲットした事は言うまでもありません。
 
そして心を入れ替えて(?)LPに針を落としてみれば、まずはA面初っ端の「Who Knows」がライブアルバムのド頭とも思えぬ、本当に何気ない感じでスタートするという脱力系なんですが、曲が進行していく中で、やっぱりジミヘンのギターは猛烈に弾けていますし、なによりもバディ・マイスルとジミヘンのツインボーカル体制があればこそ、極めてソウルミュージックに接近したハードロックという趣向は、当時としては、なかなかに新しかったんじゃ~ないでしょうか。中盤の展開ではバディ・マイルスのスキャット気味のファルセットや後半におけるジミヘンの爆裂ギターソロにも、今となっては面白く聴ける以上の興味深さを感じてしまいます。
 
ですから、続く「Machine Gun」ではジミヘン主導による擬音大会というか、ギターやドラムスによる爆発音や機銃掃射の如きSE(?)を用いての演出とナチュラルなロックのフィーリングが充満したアドリブ主体の展開にはゾクゾクさせられてしまいます。と同時に、このトラックでは不思議な浮遊感も捨てがたい魅力で、それが最後には呆気ないほどのエンディングに結実させるための手段であったのならば、なかなかクールな目論見と思うばかり!?
 
ちなみに、このA面2曲はモノラルに近いミックスになっていて、特に「Machine Gun」ではビリー・コックスのベースが淡々としている事もあり、もっとツッコミが欲しいと願ったのがサイケおやじの初聴時の気持ちでありましたが、同じパターンを執拗に繰り返すリズムやビートで作り出されるグルーヴは、既に黒人音楽のひとつの典型になっていた所謂ファンクの常套手段に近いものがありますから、聴いているうちに、そ~した覚悟が自然に決めさせられるところが凄いんじゃ~ないでしょうか?
 
その意味でB面は相当に分かり易くなっている印象で、楽器の定位はちぐはぐながらも、それなりにステレオミックスになっていますし、まずはシングルカットもされていた「Changes」におけるソウルミュージックがモロ出しの展開は、特に観客を煽るバディ・マイルス、それに共謀するジミヘンのギターという仕掛が、明らかにエクスペリエンス時代とは異なる勢いを演出しています。
 
それは次の「Power Of Soul」でますます顕著になり、なんとっ! 珍しくも変拍子を入れた曲展開の中でウネリまくるビリー・コックスのベースにノッケから泣いているジミヘンのギターは嬉しいところですねぇ~~♪
 
また「Message To Love / 恋のメッセージ」は、この時期のジミヘンがライブでは定番にしていた演目のようで、幾つかのライブ音源が正規に出回っているんですが、ここでのジミヘンのギターはガッツ溢れるというか、個人的には名演だと思うのですが、いかがなものでしょう。
 
あぁ~、このあたりまで聴き進めていくと、その場の聴衆と共に盛り上がっている自分を感じるのは、ようやくバンド・オブ・ジプシーズに素直になれた証かもしれません。
そしてオーラスの「We Gotta Live Together」はフェードインして始まる、これまたソウル系ハードロックとは言いながら、客席との一体感を求めるバディ・マイルスは些か浮いている感じが……。ただし、ジミヘンのギターからは鬼神の如き凄みが発散されていて、実は今日では明快な回答になっいるとは思いますが、当日のライブステージでは「Voodoo Child」に続けて演じられていたという真相がありますから、それも当然だと思います。
 
ということで、ハッと気がつくと、サイケおやじは、最初は違和感を覚えていたこのバンド・オブ・ジプシーズのライブ盤に何とも奇妙な魅力を感じ、グッ惹きつけられていました。
 
そして1974年になって聴く事が出来たアイズリー・ブラザーズのライブ盤で、またまたバンド・オブ・ジプシーズ症候群を患ってしまったのが、サイケおやじの本性であります。
 
最後になりましたが、本日掲載したジャケットはバンド・オブ・ジプシーズの英国盤LPのものであり、通称パペットカバーと言われるとおり、ジミヘン以下、その隣にはブライアン・ジョーンズとボブ・ディラン、手前にはイギリスの有名DJだったジョン・ピールを模した人形が登場しているという、なかなかのお楽しみ盤で、現在ではかなりの高値が付いているとはいえ、1970年代には中古でも入手は容易でした。
 
つまり、その頃は、それだけ売れていながら、実は人気薄だったのがバンド・オブ・ジプシーズの存在だったような気がします。
 
しかし、近年は再評価というか、ビリー・コックス&バディ・マイルスと組んだトリオ編成のバンド・オブ・ジプシーズが本当に短命であったという現実も踏まえての事もあるようで、機会を窺うようにしては発掘&再編集された音源が出されるのですから、全ては聴いての結果オ~ライ?
 
……続く。
 
コメント
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