■旋律 / 杉田優子 (ビクター)
さて、いよいよ今日から新年度がスタートし、各業界それぞれに新人が入っての出発は、その緊張感も快い時期だと思います。
しかし、そう書いてしまったサイケおやじにしても、それは職場に慣れきったところに根差した慢心であり、新人の立場であれば、緊張感は不安と希望のアンバランスな帰結に過ぎないでしょう。
実際、サイケおやじも新人として社会に出た大昔のあの頃は、例えそれが学生時代のバイトの延長であったとしても、やはり右も左も分からないというか、持ち前のお気楽さが先輩や上司にとっては、軽く見られていた事は否定出来ず、しかも前述したとおり、職域の若干部分はバイトで経験していた業務とダブッていたことから、つまりは即戦力の兵隊、都合の良い使いっ走り的な立場であったわけでして……。
そんなことからサイケおやじも一丁前に仕事で心に疲れを感じていたのが、ちょうど新人時代の春でした。
しかし、そんな時こそ癒される時間にはエロ映画やSM誌、そして音楽があった事も確かでした。
本日掲載したシングル盤A面曲「旋律」は、そ~した苦悩(?)の時期に耳に馴染んだ、これが儚いフィーリングが横溢した歌謡ボサノバのニューミュージック的展開でして、歌っている杉田優子が作詞作曲し、鈴木茂が如何にも都会的なアレンジを施した名曲にして名唱名演♪♪~♪
発売されたのは昭和53(1978)年早々らしく、既に当時の慣例となっていたLPデビューが先行していたという、今となっては、なかなかに恵まれたスタートだったのも、件のニューミュージックが大きなブームとなり、次々に新しい才能が送り出されていた歴史の証明かと思います。
ただし、「ブーム」の反動というか、これは「GS」や「アイドル」のジャンルでも同様なんですが、その最中に夥しく登場した歌手やグループが、結局は極僅かしかブレイク出来ず、だからといって、売れなかったものが、つまらないとは言い切れません。
むしろ少数のファンに愛され、聴き継がれ、後々になって再発見されるケースだって少ないない事は言わずもがな!?
杉田優子の芸歴やその後については知る由も無いサイケおやじではありますが、一応LPは2枚ほど作られたようですし、各方面のスタア歌手のバックアップコーラスの仕事もやっていたと言われていますので、なんとか残された音源がきっちり復刻される事を願うばかり……。
しかし、正直に書かせていただければ、失礼ながら彼女のボーカルはアップテンポよりも、ミディアム~スローなテンポで味わいがはっきり表出される感じで、それはLPに収録された楽曲がカントリーロックからAOR、あるいは疑似ソウル歌謡やアイドルポップスの如き仕上がりのものまで、些かのとりとめのなさがツライわけでして、だからこそ、この「旋律」が尚更に素晴らしく、心に滲みわたると言えば、贔屓の引き倒しでしょうか。
でも、個人的には、この1曲があるからこそ、杉田優子は忘れられないシンガーソングライターであり、聴く度に癒されるというわけです。
未確認ではありますが、未だCD化されたという話も無い楽曲とはいえ、機会があれば、聴いていただきたい、せつなくもハートウォームな歌であります。