■黒い蝶のブルース c/w 鍵 / ダイアモンド・シンガー (日本コロムビア)
我が国の中古レコードは普通、誰かの手に渡った後に然るべき店に買い取られて商品になるという、所謂セコハン物が圧倒的に多いのですが、中には様々な放送局や関係者から流出したサンプル盤、そして当該レコード屋が廃業した場合等々に出て来る売れ残り品、所謂デッドストック物も確固たる存在感を示している事は、殊更猟盤活動に勤しむ皆様には、ご存じのとおりの実状かと思います。
このあたりの裏事情については、例えばアメリカでは売れ残りや廃棄処分盤を税金問題から切り離す処置のひとつとして、LPならばジャケットに穴を空けたり、あるいはその一部分を切り取ったり、またシングル盤の場合ですと、センターレーベルに小さい穴を穿つという、通称カットアウト盤として扱われるのですが、日本の場合だとデッドストック物は、そのまんま中古市場に流通するという、嬉しい実態も確かにありました。
ただし、そりゃ~売れ残りですから、有名作品はほとんどありませんが、それでも盤そのものやジャケットが新品同様ですし、何よりも売れなかったという結果が珍しいブツに遭遇する機会の多さでもありますから!
本日掲載のシングル盤も、まさにそんなデッドストック商品なのでしょう、サイケおやじが手中に収めた時にはピカピカのランクA♪♪~♪
もちろん珍しさという点においては、歌謡曲愛好者やコアなマニアにとってはそれほどでも無いのが本当のところとはいえ、サイケおやじには噂だけでしか知らなかった幻が眼前に現れたという、夢見心地の1枚でありました。
実は、このシングル盤で歌っているダイアモンド・シンガーと名乗る仮面の女性こそは、あのメガヒット「東京ドドンパ娘」を放った渡辺マリと言われているのですからっ!?!
それが何故かは知る由もありませんが、とにかくここで聴かれるダイアモンド・シンガー=渡辺マリは、あえて仮面を着用しただけあって、前述「東京ドトンパ娘」で残した強い印象とは異なり、極めて正統派ムード歌謡保守本流の歌唱を披露♪♪~♪
製作スタッフはA・B両面共に作詞:吉岡治&作曲:市川昭介、そして編曲:河村利夫という説明不要の大御所ですから、その仕上がりに抜かりはなく、まずA面「黒い蝶のブルース」は曲タイトルどおり、歌謡ブルースの典型でありながら、そのボーカルの芯のブレないグルーヴは本物でしょう。
また、一方のB面「鍵」は、これまた堂々のムード歌謡に仕上がっていて、それでも決して甘さに流れない歌いっぷりは、まさに渡辺マリ!? とダイアモンド・シンガーの正体を明かされてこそ、納得されるものと思います。
しかし、サイケおやじはダイアモンド・シンガーの実演に接した事は全く無くて、しかもレコードだって、これっきりしか持っていないんですが、だからこそステージライブは、どんな状況だったのか大いに気になるところです。
だって、仮面姿で観客の前に出た時、既に正体がバレていたとしたら、当然ながら代表曲「東京ドドンパ」を歌わなかったら収まりがつかないでしょうし、さりとてダイアモンド・シンガーとしての集客に、どのぐらいの期待があったのかは、レコードのヒット状況にも密接に左右されるのですから、このサイケおやじの疑問には、皆様からの情報をお願いしたいところです。
ちなみに仮面というか、覆面と云えば特にプロレスの世界では、このレコードが世に出た昭和42(1967)年では常態化しているギミックでしたから、実力がありながら素顔では人気が得られなかった、例えば白覆面の魔王と呼ばれたデストロイヤーとか、あるいは興行的に同じ顔触れのレスラーしか招聘出来なかった時の窮余の一策として、限定的に覆面で登場してもらった場合等々、様々な内幕があろうとも、それがウケれば結果オーライ♪
まあ、中には覆面着用でありながら、体型とか試合運び、そしてキメ技から、その正体がいきなりミエミエになっていたレスラーも少なくはありませんが、そんなこんなも昭和という時代であれば、今は面白い逸話として語られているわけでして、それが芸能界となれば、日本のハードロックバンドでは有名なバウワウが、覆面姿のシルバースターズと名乗って、一説によると前座とメインアクトのダブルギグをひとつのライブ会場でやっていたという伝説もあるそうですよっ!
う~ん、とすればダイアモンド・シンガーも渡辺マリも、一人二役で巡業をやっていた可能性も!?
ということで、今はなかなかこ~した稚気(?)を感じさせる芸能が登場しづらいというか、下手を打ったら忽ちネットで餌食になってしまうという社会じゃ~、それも……。
でも、例えミエミエでも、サイケおやじは、それを望んでいる気持ちに嘘はありません。
皆様は、いかがでありましょうかねぇ~~~。