OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

モブレーの裏名盤?

2008-04-18 17:01:27 | Jazz

気のせいか、今年の桜は色が薄いような……。なんか白っぽく見えてしまうのですよ、私には……。気のせいだと良いんですがねぇ。

ということで、本日は――

Thinking Of Home / Hank Mobley (Blue Note / キング)

ハンク・モブレーがブルーノートに残した最後の作品と言われているアルバムですが、発売はリアルタイムではなく、1970年代中頃から活発になった一連の未発表音源発掘作業による登場でした。

これは確か、1980年の発売だったでしょうか。アメリカ盤は色気の無い風景写真みたいなのを使ったデザインでしたから、より雰囲気のある日本盤を私が買ったのは当然の成行きです。ちなみに発売していたのは東芝ではなく、キングレコードというだけで微妙に嬉しいというは、ご理解いただけるでしょうか♪

録音は1970年7月31日、メンバーはハンク・モブレー(ts)、ウディ・ショウ(tp)、シダー・ウォルトン(p)、Eddie Diehl(g)、Mickey Bass(b)、リロイ・ウィリアムス(ds) という新鮮な組み合わせです――

A-1 Suite
     a.Thinking Home
     b.The Flight
     c.Home At Last

 ジャケットを見て組曲形式という演目に、まず吃驚した記憶が今も鮮烈です。う~ん、嫌な予感が……。
 案の定、最初のパート「Thinking Home」は深刻な雰囲気が濃厚で、思わせぶりなリズム隊のアンサンブルと重苦しいテーマメロディ! ハンク・モブレーもしっかりと苦悩した吹奏です。
 ところが次の瞬間、溌剌として開放感ある、あのモブレーメロディがモロ出しの痛快なテーマが始るんですねぇ~~♪ アクセントの効いたリズムアレンジも最高ならば、アドリブ先発のウディ・ショウも本領発揮の熱血節! ここが「The Flight」のパートだと思いますが、モードも入った新感覚ながら歌心に満ちたハンク・モブレーが快演でニヤリとしてしまいます。ギターが入ったリズム隊も絶好調で良い感じ♪ シダー・ウォルトンもクールにキメてくれます。
 そしてカッコ良さがいっぱいのテーマリフが緩やかに変化し、続けて始るのが、これまた気持ち良すぎるリラックスしたボサノバです。サブトーンを使いながらメロディアスに歌うハンク・モブレーが実に最高なんですが、Eddie Diehl のギターもなかなかイケています。これが「Home At Last」というパートなんでしょうね。
 スバリ、最高としか言えません!

A-2 Justine
 如何にもというリズム隊のアクセントを上手く使ったグルーヴィなハードバップで、ちょっとアフリカ色を感じるのは時代性の表れでしょうか。
 ハンク・モブレーのアドリブも力強さやハードな面を強調したようなノリが強く、そこに執拗に絡んでくるリズム隊がさらに演奏を熱くしていきますから、ハンク・モブレーの新しい冒険というところかもしれません。しかしきちんと黒っぽいグルーヴでアドリブを終わらせるところが流石だと思います。
 するとウディ・ショウが俺に任せろ! まあ、こういう展開は十八番ですからねぇ~、新進の意気込みも強くありながら、余裕すら感じさせるアドリブが憎たらしいほどです。
 またベースの Mickey Bass も、かなりエグイですよ。

B-1 You Gotta Hit It
 溌剌として新鮮なハードバップの名演で、アップテンポでビシバシに弾けたバンドの勢いがたまりません。スタッカートを使いまくったテーマからしてウキウキしてきます。
 ただしハンク・モブレーはリズム隊の煽りに些か戸惑い気味というか、十八番のタメとモタレをイマイチ出し切れず……。しかしそれをカバーして余りあるのがウディ・ショウの熱演です。トンパチなドラムスとの相性も最高ですし、シダー・ウォルトンの合の手も楽しそう♪
 う~ん、それにしてもこのリズム隊は爽快ですねぇ。アドリブパートでもノリまくるシダー・ウォルトンはもちろんのこと、明らかに新時代を感じさせるグルーヴが素晴らしいと思います。

B-2 Gayle's Groove
 そのリズム隊の要として大活躍しているベーシストの Mickey Bass が書いたグルーヴィなオリジナルですから、グイノリで本領を発揮するリズム隊と煽られるハンク・モブレーという構図が痛快です。
 もちろんハンク・モブレーもノリまくった雰囲気ですが、肝心のアドリブメロディが意識過剰かもしれません。そこへいくとウディ・ショウは自然体のモード節が冴えまくり♪ 朗々とトランペットを鳴らしています。
 また Eddie Diehl のギターが不思議系のアドリブながら、きちんとハードバップしていますし、シダー・ウォルトンは安定感が頼もしい限りでしょう。

B-3 Talk About Gittin' It
 オーラスは不穏なイントロから一転して快楽の桃源郷というボサロック♪ Eddie Diehl のリズムギターが実に楽しく、もちろんハンク・モブレーが書いたテーマメロディも和みますねぇ♪
 アドリブパートはウディ・ショウから Eddie Diehl の快演を経て、いよいよ登場するのが御大ハンク・モブレーという仕掛けですが、大雑把に雰囲気を醸し出すことに腐心した憎めないものというは、モブレーマニアの贔屓の引き倒しでしょうか……。
 演奏全体を引き締めるリロイ・ウィリアムスの強いビートが実に楽しい限りですよっ♪ 再び登場のウディ・ショウからシダー・ウォルトンへの展開は、誰がリーダーか分からなくなるほどです♪

ということで、内容はかなり秀逸な楽しいアルバムなんですが、発売されたのがフュージョンブーム爛熟期であり、新伝承派による4ビート復活運動の真っ只中とあっては、こういう快楽主義に満ちた作品は中途半端でした。

しかし演奏の充実度、楽しさ、そして吹き込まれた時期のジャズの状況が、これほどダイレクトに伝わってくる作品も珍しいのでは?

つまりハンク・モブレーはこの後、体調の不良もあって落目の三度笠……。逆にウディ・ショウやシダー・ウォルトンはハードバップリバイバルもあって第一線で活躍していく端緒であり、リズム隊に参加した他のメンバーも、結局は実力がありながらもフュージョンの波に飲まれたかのように逼塞していくのです。

このアルバムが当時未発売に終わったのも、そう思えば肯定できる部分もありますが、しかし本物の輝きは間違いなくある隠れ名盤じゃないでしょうか?

楽しさは保証付きで、埋もれているのは勿体無い限りだと思います。

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