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サイケおやじの生活と音楽

ホレス・シルバー1968&モア

2008-10-16 12:46:50 | Jazz

Song For My Father / Horace Silver (Impro-Jazz = DVD)

先日の連休に発見した映像物です。

タイトルはホレス・シルバーになっていますが、オマケとしてシェリー・マンとテディ・エドワーズの演奏も入ったトータル約90分! おそらくホレス・シルバーのパートは初DVD化と思われます――

Horace Silver Quintet : 1968年4月、デンマークでのスタジオライブ
 01 Nutville
 02 Song For My Father
 メンバーはビル・ハードマン(tp)、ベニー・モウピン(ts)、ホレス・シルバー(p)、ジョニー・ウィリアムス(b)、ビリー・コブハム(ds) という物凄いバンドです! 特にビル・ハードマンは多分、ホレス・シルバーとは公式レコーディングを残していないですから、極めて貴重じゃないでしょうか。
 それと剛腕ドラマーのビリー・コブハムが正統派モダンジャズを敲く映像というのも、観る前から心が踊らされます。
 まず「Nutville」は隠れ人気盤「The Cape Verdean Blues (Blue Note)」でやっていた激しいハードバップですから、ここでもメンバー全員が一丸となって、15分51秒の大熱演! 4ビートとラテンリズムがゴッタ煮となったグルーヴが強烈ですし、硬派なモード節を押し通すベニー・モウピン、我が道を行くビル・ハードマン、猫パンチみたいに鍵盤へ挑みかかるホレス・シルバー、千手観音みたいなビリー・コブハム、そしてひとり黙々としたジョニー・ウィリアムスという面々が凄い自己主張に徹しています。
 特に日頃地味だ、地味だと思われがちなビル・ハードマンが相当に入れ込んだ熱血のトランペットで、これにはちょいと吃驚ですよ。もちろんビリー・コブハムは大暴れで、クライマックスの怒涛のドラムソロは、完全に嵐を呼ぶ男です!
 肝心のホレス・シルバーは汗ダラダラで嬉々としてピアノを弾くというよりは、叩くという感じが素晴らしく、これは映像作品ならではの醍醐味でしょう。
 ちなみに画質はモノクロですがAランクだと思います。また音質は当然ながらモノラルミックスで、一部のドロップダウンはありますが、それほど気にならないレベルでしょう。
 そしてお目当ての「Song For My Father」が、これまた素晴らしい♪ 永遠不滅のリズムパータンとリフ、哀愁のテーマメロディ、シャープなラテンビートを敲くビリー・コブハムの印象も強く、あぁ、テーマ部分だけで喚起悶絶させられます!
 さらにアドリブパートではホレス・シルバーが、せつなくもファンキーな「節」を存分に聞かせてくれますし、特に中盤からの倍テンポっぽい展開にはワクワクさせらますよ。抜群のコンビネーションというペースとドラムスの存在も、映像で観ると尚更に印象的ですねぇ~~♪ カメラワークもメンバー各人のアップから手足の動き、さらに鍵盤やシンバルのイメージショットが照明までも考えられた鮮やかさで、飽きません。
 気になるビル・ハードマンは、ここでもなかなかの味わいですし、ベニー・モウピンは静寂から混濁までを熱く演じきって、見事です。またビリー・コブハムの、自分が楽しんでいるようなドラミングも大いなる見ものでしょうね♪ 演奏時間は、これも長尺で18分53秒です。

Shelly Manne and His Men : 1962年10月、ロスでのスタジオライブ
 03 Theme & intorduction
 04 The King Swing
 05 Fan Tan
 06 The Isolated Pawn
 07 Speak Low
 08 Theme & closing
 これは今までも度々パッケージ化されてきた映像で、元ネタはアメリカのテレビ番組「Jazz Scene U.S.A」からの演奏です。メンバーはコンテ・カンドリ(tp)、リッチー・カミューカ(ts)、ラス・フリーマン(p)、モンティ・バドウィック(b)、シェリー・マン(ds) という西海岸オールスタアズ♪ 司会はオスカー・ブラウンです。
 演奏は1962年という時代からハードバップとモード系の上手い折衷という感じですが、バンドは流石の名手揃いですから、各トラックは短いながらも完成度の高い纏まりが楽しめます。
 特に「The King Swing」と「The Isolated Pawn」はモード風味に染まっていますが、演奏のキレの良さとビシッとキマッたバンドアンサンブル、豪快にしてカッコ良いところは、モダンジャズのひとつの魅力かもしれません。
 個人的には大好きなリッチー・カミューカとラス・フリーマンが観られるだけで感激もんなんですが、画質もこれまでで最高の仕上がりというAランクのモノクロですし、音質はモノラルミックスですが、ドラムスやベースの音もバランス良く録れています。
 気になるスタンダード曲「Speak Low」は、もちろん爽快なハードバップに仕立てられ、メリハリの効いたリズム隊が痛快至極! シェリー・マンはやっぱり凄いと実感させられました。
 しかし最も良いのは、最初と最後のテーマ演奏のグルーヴィなところなんですよねぇ……。正直、これを完奏して欲しかったです。ちなみに収録時間は約27分強です。

Teddy Edwards Sextet : 1962年11月、ロスでのスタジオライブ
 09 Theme & announcement
 10 The Cellar Dweller
 11 Sunset Eyes
 12 Afraed Of Love
 13 Good Gravy
 14 Velvet Mist
 15 Theme & closing
 このパートも前述同様「Jazz Scene U.S.A」からの映像で、メンバーはテディ・エドワーズ(ts) 以下、フレディ・ヒル(tp)、リチャード・ブーン(tb)、ジョン・ヒューストン(p)、スタン・ギルバート(b)、ダグ・サイズ(ds) という些か地味な面々ですが、演奏はなかなかに充実しています。
 ご存じのようにテディ・エドワーズは西海岸ハードバップの中心人物として、クリフォード・ブラウン&マックス・ローチのバンドレギュラーも務めた実力派ですから、ここでも黒人らしいハードドライヴィングなテナーサックスは最高で、加えてタイト&グルーヴィなバンドアンサンブルもご機嫌です。
 しかも演目が秀逸な作曲能力を証明するオリジナルばかり♪ ラテンとアラビアがゴッタ煮の「Sunset Eyes」にはグッと惹きつけられますし、感傷的な「Afraed Of Love」やカッコ良すぎる「Good Gravy」は、これぞっ、ハードバップというテナーサックスの真髄が楽しめます。実に黒っぽい歌心と豪快なフレーズ、そして正統派の音色! これもジャズ王道の響きでしょうねっ♪ 景気の良いオーラスの「Velvet Mist」も痛快です。
 そして画質はこちらもAランクのモノクロで、もちろん音質はバランスの良いモノラルミックスですから、この機会にテディ・エドワーズの再評価に繋がればと思います。

ということで、やはり最初のホレス・シルバーのクインテットが目玉でしょう。ビル・ハードマンの映像も珍しいところですが、一心不乱にピアノに向かう全盛期ホレス・シルバーの勇姿、また強烈な存在感を映像でも証明するビリー・コブハム! これだけで私は満足してしまいました。

現実的にはこの頃を境にしてホレス・シルバーの人気は下降線……。吹き込まれるアルバムもイマイチ煮え切らない作品が多くなっていきますが、実はライブの現場では連日、熱演を繰り広げていたんですねぇ~。

ですからこれは、レコード中心にしかジャズの最先端に触れることが出来なかった大部分のファンの溜飲が下がるブツだと思います。

もちろんオマケ扱いのシェリー・マンやテディ・エドワーズのパートも凄いレベルですから、全くのお徳用のDVDでした、

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