さてさて、久々にネタの仕入れで街を彷徨いました。そして硬軟、様々に収穫がありましたので、まず本日はこれを――
■Count Basie Live In Berlin & Stockholm 1968 (Impro-Jazz)
カウント・ベイシー楽団が1968年秋に行った欧州巡業からの映像ですが、皆様ご存じのように、この時期のバンドはスタジオ録音アルバムにイマイチ精彩が感じられず、しかしサミー・ネスティコという俊英のアレンジャーを起用した名盤「Straight Ahead (Dot)」を作って息を吹き返した頃ですから、その勢いを最新リマスターのDVDで鑑賞出来るとあれば、本当にワクワクしてきますね。
内容はタイトルどおり、ベルリンとストックホルムでのコンサートを収録したもので、両方ともモノクロ映像&モノラル音声です。ちなみにベルリンの映像は、これまでにもビデオでパッケージ化されていましたが、それよりは多少の画質向上が嬉しいところ♪
メンバーはカウント・ベイシー(p) 以下、フレディ・グリーン(g)、ノーマン・キーナン(b)、ハロルド・ジョーンズ(ds) という鉄壁のリズム隊を軸に、Gene Goe(tp)、ソニー・コーン(tp)、オスカー・ブラッシャー(tp)、アル・アーロンズ(tp)、グロパー・ミッチェル(tb)、リチャード・ブーン(tb)、ビル・ヒューズ(tb)、マーシャル・ロイヤル(as)、ボビー・プレター(as,fl)、エリック・ディクソン(ts,fl)、エディ・ロックジョー・デイビス(ts)、チャーリー・フォークス(bs) という超一流が揃い踏みです。しかも専属歌手が、あのマリーナ・ショウですからねぇ――
★Live in Berlin (1968年11月9日)
01 All Of Me
02 Hittin' Twelve
03 Blues For Ilean
04 Bill Bailey
05 On A Clear Day
06 Cherokee
07 Good Time Blues
08 A Night In Tunisia
09 Muddy Water Blues
10 Whirly Bird
11 Lonely Street
12 The Magic Flea
13 One O'clock Jump
まず特筆すべきはフレディ・グリーンのギターが鮮明に聞こえることです♪ 天才的なコードカッティングの細部まで感じ取れるのは嬉しくて涙が滲みます。ただし映像では、それほど手元が映っていないのは残念……。しかしバンド全体を強烈にスイングさせているのは、この人の功労によるものだと実感されるでしょう。どんなにバンドが咆哮しようとも、常に聞こえ続けるリズムギターの基本はアコースティックというのも最高です♪
それと名人ドラマーのハロルド・ジョーンズが映像でたっぷり観られるのも感動です。あぁ、あのリックはこうやって敲いていたのか! と目からウロコの歓喜悶絶♪
肝心の演奏は安定感があって、なおかつスリルとサスペンス、グルーヴィなモダンビックバンドが堪能出来ますし、ペイシー楽団ならではの、ゆったりしたノリと厚みのあるアンサンブル、黒っぽいリズム的興奮が楽しめるのはジャズ者の幸せというところでしょう。
例えば初っ端からカウント・ベイシーの隙間の芸術に震えてしまう「All Of Me」は、このゆったり感が唯一無二の素晴らしさです。さらにグルーヴィな「Hittin' Twelve」やエリック・ディクソンのフルートが味わい深い「Blues For Ilean」、オスカー・ブラッシャーが火の出るようなトランペットで演じる「A Night In Tunisia」には、ゾクゾクさせられますよ。
気になるマリーナ・ショウは、この当時からアクの強いメイクで登場し、独特の黒い節回しが冴えた「Bill Bailey」とボサノバアレンジの「On A Clear Day」、さらに熱っぽい「Muddy Water Blues」で粘っこい個性を発揮しています。
そして後半はお待ちかね、エディ・ロックジョー・デイビスの大爆発がお約束という「Cherokee」「Whirly Bird」そして「The Magic Flea」が強烈過ぎます! こういうのを聞いてるとコルトレーンやブレッカーなんて……、と不遜な事を感じてしまいますねぇ。いや、これはサイケおやじの本音ということで、ご容赦下さい。ハロルド・ジョーンズの大車輪ドラムソロとキメのカッコ良さにも感涙するばかりです。
そんな中で、やっぱり楽しいのが御大のツボを刺激するだけという短音ピアノです。特に「Good Time Blues」あたりは、もはや芸術というか、人間国宝でしょうねっ♪ ノーマン・キーナンのペースとフレディ・グリーンのギターも良い感じ♪
それと忘れてならないのが、現場監督として楽団を仕切っているマーシャル・ロイヤルの存在で、映像では要所でメンバーに合図を出したりする姿が散見されますし、自身が主役となった「Lonely Street」では甘い忍び泣きを存分に聞かせてくれます。
さて、問題となる画質は正直「B」クラスだと思います。しかしこれだけの演奏を楽しめるとなれば、文句などバチあたりかもしれません。音質に関しては問題なく聴けると思いますので。
★Live in Stockholm (1968年11月12日)
14 Splanky
15 All Of Me
16 Hittin' Twelve
17 Blues For Ilean
18 Cherokee
こちらも基本的には同じ雰囲気の演奏ですが、フレディ・グリーンのギターが、ここでは益々生々しく、強烈に響いてきてシビレます♪
そしてベルリンには入っていなかったド頭の「Splanky」が最高にグルーヴィ! 何気なくアドリブに入って、グイグイと盛り上げていくエディ・ロックジョー・デイビスの至芸が存分に楽しめる大名演で、これを観るだけでもこのDVDの価値があると思います。まさにタフテナーの真髄でしょうね♪ リズム隊のノリも最高ですし、バンドアンサンブルも強烈で、あぁ、何度観ても腰が浮きます。
ちなみに画質は、これも「B」クラスですが、問題無く楽しめるのではないでしょうか。ただし音質は僅かな部分でドロップする箇所があります。
ということで、なかなかモダンで迫力のあるフルバンの醍醐味が楽しめます。カメラワークもきちんと考えられていて、メンバー各々の見せ場を逃さないのは流石です。特にハロルド・ジョーンズのキメ、ニンマリしながらリズムを刻むフレディ・グリーン、黒人芸能の本質を感じさせる御大ペイシーの存在感が実に良い佇まいなのでした。