OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

来日ライブ盤は記念品か?

2007-01-09 18:49:37 | Weblog

昨年末に行ったエリック・クラプトンの来日公演を記録したブートを、幾つか買ってしまいました。

値段も、まあまあ高いんですが、最近は隠し録りでも機材が優れているので、安心して聴くことが出来ますねぇ。まあ、自分の思い出作りの一環として、この違法行為も許しを請うしかありません。

そんな来日公演盤では、オフィシャルでこれが一番有名かもしれません――

Miles Davis In Tokyo (Sony)

今でこそ、マイルス・デイビスのライブ音源はブートで溢れかえっていますが、1970~1980年代には、それこそ「お宝」として、全ジャズファンは謹聴していました。

このアルバムは最も4ビートを究めんとしていた時期の、しかも初来日公演を収めているとあって、1969年に我国独占で発売された瞬間から、ウルトラ級の人気盤になりました。

しかも、さらに貴重なのは、一時期しか在籍出来なかったサム・リバースという、どちらかと言えば前衛派のテナーサックス奏者が聴けることです。

録音は1964年7月14日、新宿厚生年金会館でのライブ音源で、これはなんとラジオ局のニッポン放送に残されていたものです。う~ん、するとリアルタイムではラジオ放送があったんでしょうか……?

メンバーはマイルス・デイビス(tp)、サム・リバース(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) となっています――

A-1 Introduction - If I Were A Bell
 期待にワクワクする拍手に迎えられ、冒頭から、イソノテルヲ氏がMCで「ボストンから来たテナー奏者、サム・リバース」を紹介するあたりが、やはりこのアルバムのキモでしょう。
 そして演奏は、マイルス・デイビスが1956年に残したお馴染みの名曲・名演が、このメンツで再現されるという嬉しい趣向♪ これは日本向けのサービスなんでしょうか? 後年発売された1967年頃のライブ盤でも、やってはいるんですが……。
 で、マイルス専売特許の指パッチンから、あの有名なイントロがハービー・ハンコックによって、オリジナルよりも早いテンポで弾かれただけで、もう会場が盛り上がっているのが感じられますねっ♪ これがライブ盤の良いところです。
 そしてミュートで軽やかにテーマを歌い綴っていくマイルス・デイビスの憎らしいほどの上手さ! バックのリズム隊の刺激的でクールなグルーヴも、何時もながら見事で、聞き惚れて身体が動きます。
 もちろんアドリブパートでも、マイルス・デイビスだけの「泣き」が存分に楽しめますが、次に登場するサム・リバースの浮き上がった存在感には、場の空気が、どんどん違っていくのが分かります。
 しかもリズム隊が、マイルス・デイビスのバックの時よりも、イキイキしているように感じますねぇ。特にトニー・ウイリアムスが分かっているっていう感じです!
 とは言え、これから続く演奏に比べれば、まだまだ猫を被っているにすぎませんがっ! ですからハービー・ハンコックもマイペースで弾きまくっているのでした。

A-2 My Funny Valentine
 これもマイルス・デイビス的な安心感に満ちた選曲ながら、その密度の濃さには油断が出来ません。
 まずイントロのハービー・ハンコックが素晴らし過ぎますねぇ~♪
 マイルス・デイビスも手馴れたテーマの変奏からして、お客さんを満足させてしまいますが、はっきり言うと、それだけです。むしろリズム隊との馴れ合いを楽しんでいるかのような趣といっては、お叱りを頂戴するでしょうねぇ……。
 しかし続くサム・リバースがサブトーンを駆使した正統派の歌心から過激な心情吐露まで、アンバランスに聴かせてしまうんですから、絶句です。しかも、これといった明確なフレーズは吹かないのですからっ! 本当に変な奴です。
 するとリズム隊ではロン・カーターが絶妙のサポートで、場を纏めていくフォローが最高です。

B-1 So What
 さてB面は過激大会! まずは当時のマイルス・バンドには欠かせない、お馴染みの激烈曲で、やる度にテンポが速くなっているのか!? と思うほど、ここでは大爆裂のバージョンになっています。
 まずテーマの吹奏もそこそこに、マイルス・デイビスが烈しく吹きまくりますが、そのフレーズや構成は、完全に出来上がっているというか、毎度お馴染みの展開というマンネリ感が……! しかしリズム隊が千変万化な刺激を送り出していますので、飽きないというわけです。
 ただしそれは、続くサム・リバースのアドリブで一転、何を吹きたいんだか意味・意図不明のフレーズが連発される前半から、自分なりの文法で烈しく突っ込む後半の面白さ♪ トニー・ウィリアムスの大ハッスルとハービー・ハンコックの戸惑いも最高です。なにしろ続く自分のアドリブパートまでも、フリーっぽくスタートさせてしまうんですねぇ~♪
 これには流石のマイルス・デイビスも、サジを投げたというか、腑抜けたようなラストテーマが、ロン・カーターだけになるという不始末でした。

B-2 Walkin'
 そしてこれが凄い! 一応ブルースなんですが、そんなことはどうでもいい!
 とばかりに吹きまくるマイルス・デイビスに襲い掛かるトニー・ウィリアムスという構図は、永遠に不滅です。しかもマイルス・デイビスは完全にマンネリフレーズに浸りきっていますから、余計に迫力があるという逆噴射状態なんですねぇ……♪
 用意されたトニー・ウィリアムスのドラムソロのパートでも、かなり思索的な展開になるのが何時ものパターンですが、ここでは、それを踏襲しつつも、新しい世界を求めて止まない若さが魅力です。
 そして、ついに本性を現したサム・リバースが不思議な力演で、特有のモコモコした音色が灼熱の咆哮に変化していくという、周囲を呆れさせる迷い道! これで、いいのか!? と自問自答している暇が無いほどに、アップテンポの激烈演奏が聴かれるのでした。
 さらにラストテーマの合奏は、これほどビシッと揃ったユニゾンは無いほどにキマッています。

B-3 All Of You
 オーラスは、これまでの熱気を冷ますかのような、柔らかいスタンダード演奏です。
 とは言え、その内情は密度が濃く、ミュートによるマイルス・デイビスの至芸が泣かせるのも束の間、サム・リバースの変質者的な歌心とリズム隊のバランスの悪さは、このアルバムでは最高の一瞬を生み出しています。
 あぁ、これを最初っからやってくれていたら、このアルバムは超絶の名盤になったはずなんですが、当時はこれが限界かもしれません。しかし、凄いです!

と、まあ、自分でも何が書きたいのか、本日は良く分かっていないんですが、とにかくジャズ喫茶では、このB面が定番となり、ミミタコ盤として君臨していました。しかしそれでも、買って自宅で聴かずにはいられない魅力盤なんですねぇ~♪ 音量もでかくは出来ないくせにです。

もしかしたら、持っているだけで幸せになれるアルバムなのかもしれません。

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4 コメント

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Unknown (funky_alligator)
2007-01-09 22:50:17
サイケおやじ様、今晩は。

この作品個人的には大好きなのですが、この時の来日コンサートでは一番出来が悪いそうですね。確かに、ブートで入手した二日前の演奏の方が良いですし、ウワサではこの後の京都がもっと良いそうですね。私はもう少しリバースに参加してもらってからショーターに席を譲って欲しかったと思っています。
ところで、一曲目の途中でロンがベースを弾くのを止めているように聞こえるのですが、何があったのでしょうか?
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ブートの楽しみ (サイケおやじ)
2007-01-10 17:45:47
☆funky_alligator様
コメントありがとうございます。

この時の来日ライブ音源は、数種のブートになっていますよね。
私は京都のブツを持っていますが、一概にそれが良いとは言えません。ジャズはその日その時の瞬間芸ですから、最近は、いろいろとやってくれる記録が楽しいという気がしています。

ストーンズのブート集めなんか、全くその気分が地獄行きになるんですけど……。

さて、ご指摘のロン・カーターのお休み部分は、多分2分15目あたりからのことでしょうか? ちょっと様子見だったのか、あるいはPA不備か、実際のライブを見ていないので、判然としませんが、けっこう意想外のスリルがあって、結果オーライではないでしょうか。

サム・リバースについては、同感ですが、トニー・ウィリアムスのリーダー盤では、ショーター&リバースの対決セッションがありますよね。良い感じです。
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京都が良いとは言えないのですか (funky_alligator)
2007-01-10 22:16:38
サイケおやじ様

ベースの音が聞こえないのは、やはり何か不備があったのでしょうが?聞き返していないのですが、確か復活するのが小節の頭からだったような記憶があります。
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フォロー (サイケおやじ)
2007-01-12 18:11:55
ロン・カーターはフォローの名手だと思います。
でなければ、当時のマイルス・バンドでは務まらなかったでしょう。
後任のデイヴ・ホランドは、苦しめられたと、どっかのインタビューで答えていましたよ。
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