OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

バート追悼の快演ライブ盤

2008-10-25 11:47:56 | Jazz

Charlie Parker 10th Memorial Concert 3/27/65 (Limelight)

モダンジャズを創成した天才アルトサックス奏者のチャーリー・バーカーは、残念ながら30代半ばで天国へ召されましたが、その偉業はジャズという音楽が残るかぎり不滅ですし、それ以後に出現したあらゆるジャズ演奏家は決してその影響力から抜け出すことは不可能という真実は、今に至るもひとつです。

さて、このアルバムはその天才に捧げた没後10年追善供養のコンサートから作られたライブ盤で、録音は1965年3月27日のカーネギーホール! 故人の仲間やベテランの大物までもが参集した白熱の名演が楽しめます――

A-1 Um-Hmm! (Ode To Yard)
 メンバーはディジー・ガレスピー(tp) が当時率いていたレギュラーのバンドで、ジェームス・ムーディ(ts,as)、ケニー・バロン(p)、クリス・ホワイト(b)、ルディ・コリンズ(ds) という実力者揃い♪ ガサツな熱気が渦巻くテーマメロディはケニー・バロンの作曲で、これが当日のハイテンションな気分と見事に合致して、所謂ハードバップの真髄にグッと惹き込まれます。
 ディジー・ガレスピーは十八番のド派手な音も使いますが、それ以上に心の底から湧きあがってくるエモーションが強く感じられ、それはもちろん盟友チャーリー・パーカーを悼んでの気持ちというところでしょう。まさに名演です。
 またジェームス・ムーディの暑苦しいテナーサックス、ケニー・バロンの颯爽としたピアノも素晴らしく、ルディ・コリンズのハードエッジなドラミングも痛快に録音されていますから、本当に鮮やかですねぇ~♪ クライマックスでキメるバンドのアンサンブルとベースの掛け合いにもゾクゾクさせられますし、アルバム全体の構成としては「ツカミもOK」のベストトラックだと思います。
 
A-2 Groovin' High
 チャーリー・パーカーとディジー・ガレスピーにとっては、そしてモダンジャズにとっても決して忘れてはならない不滅の演目として、ここでの熱演は「お約束」です。
 メンバーは前曲「Um-Hmm!」と同じですが、ジェームス・ムーディがアルトサックスに持ち替えて大熱演! モロなパーカーフレーズの連発には溜飲が下がります。後ろで半畳を入れるディジー・ガレスピーも憎めませんねっ♪
 もちろんアドリブパートでも十八番のフレーズ、抜群のスピード感と熱気をふりまいてボスの貫禄を示します。リズム隊の纏まりも最高!

A-3 Now's The Time
 この演奏は所謂ジャムセッションで、参加メンバーはロイ・エルドリッジ(tp)、コールマン・ホーキンス(ts) というスイング派の大物2人に C.C.Siegel という変名でクレジットされた J.J.ジョンソン(tb)、そしてリズム隊はビリー・テイラー(p)、トミー・ポッター(b)、ロイ・ヘインズ(ds) というチャーリー・パーカー所縁の面々です。
 しかも演目がR&Bヒットを改作してビバップの聖典としたノリの良いブルースですから、イントロのピアノからしてグルーヴィな雰囲気が横溢♪ アドリブ先発のコールマン・ホーキンスは決してビバップではありませんが、そのグイノリ狂騒の雰囲気は尋常ではなく、唯我独尊の名演を聞かせてくれます。
 さらに続く J.J.ジョンソンが何を吹いても上手過ぎるクールな快演ですから、リズム隊も遠慮しないテンションの高さがジャズの醍醐味です。
 またロイ・エルドリッジもモダン以前のトランペッターですが、ここで聞かれるように、そのスタイルとノリは明らかにディジー・ガレスピーの元ネタですから全く違和感がありません。というよりも、発散されるジャズ魂とエルギッシュなアドリブの凄さに圧倒されてしまいますねぇ~~~♪
 これにはリアルなモダンというリズム隊も刺激を受けたに違いなく、ビリー・テイラーが持ち前のバカテクで強烈な自己主張を展開すれば、ロイ・ヘインズもヤケッパチ寸前のプチキレドラミングですから、あの世のバードもニンマリでしょう。

B-1 Blues For Bird
 これはリー・コニッツの完全な独り舞台ですが、演奏の前にキリストとチャーリー・パーカーを対比させた冗談を言うのが不遜でもあり、至極当然でもありますから、観客は大笑いという和みが抜群の演出です。
 そしてリー・コニッツが心の底から湧きあがる敬愛の念を、アルトサックスに託して吹き切るのが、このブルース!
 ちなみにリー・コニッツはクール派の白人奏者で、ご存じのようにレニー・トリスターノの一番弟子でありながら、本人は強くチャーリー・パーカーに傾倒し、度々師匠から注意を受けていたそうですから、その情念は本物でしょう。
 ここでの演奏は、はっきり言えば退屈寸前でもありますが、聴き終えると何故か私は、妙に感動してしまうのでした。

B-2 Donna Lee
 一転して次は楽しいスキャットボーカルです。
 歌うのはデイヴ・ランバートで、伴奏はビリー・テイラー(p)、トミー・ポッター(b)、ロイ・ヘインズ(ds) ですから、痛快なノリは保証付き♪ チャーリー・パーカーが書いたビバップの定番曲をシュビドゥバ、ドュヴィドュバと快調に歌いとばしていますが、もちろんそれはチャーリー・パーカーが残したアドリブフレーズを見事に再現したものですから、所謂バップスキャットの真髄です。
 
B-3 Bird Watcher ~ Disorder At The Border
 オーラスはまさに大団円という豪華なジャムセッション♪
 参加メンバーはディジー・ガレスピー(tp)、ケニー・ドーハム(tp)、J.J.ジョンソン(tb)、リー・コニッツ(as)、ビリー・テイラー(p)、トミー・ポッター(b)、ロイ・ヘインズ(ds) とされていますが、合奏部分を聴くと、もっと多くのメンツが参加しているように感じます。
 まあ、それはそれとして、演奏は作者のビリー・テイラーが独り舞台の大ハッスルでイントロから熱演を披露し、ベースとドラムスを呼び込んでからはグルーヴィな展開となって、場の雰囲気を盛り上げます。
 そして最初に出るトランペットはケニー・ドーハムでしょうか、このイブシ銀の音色にド派手なフレーズのミスマッチは実に味わく、続くリー・コニッツもフニャフニャした音色でエキセントリックなフレーズを綴るという違和感が、実にたまりません。これがジャムセッションの魅力でしょうねぇ~~♪
 しかし J.J.ジョンソンが登場すると雰囲気は一変! 豪放磊落なアドリブは痛快至極ですし、それを追撃するディジー・ガレスピーも得意のハイノートを駆使して熱気満点です。
 演奏はクライマックスから「Disorder At The Border」というリフ曲の合奏に移行し、これはコールマン・ホーキンスがディジー・ガレスピーを雇って1944年に録音したビバップの予告篇的な演奏を再現したという、本当にニクイ演出になっているのでした。

ということで、豪華なメンツと充実した演奏がビッシリ詰まった人気盤です。特にA面の素晴らしさは圧巻で、ド頭「Um-Hmm!」のグルーヴィな名演は聴かずに死ねるか! の一言です。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« テイタム&ウェブスターの赤と黒 | トップ | ロリンズ+クラーク=ダブル... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Jazz」カテゴリの最新記事