■Teenage Dream c/w Satisfaction Pony / Marc Bolan & T.Rex (EMI / 東芝)
急激なブームが去っていく時の非常な速さは、殊更芸能界では顕著ですが、しかしミュージシャンの場合は人気が下り坂の時期ほど、印象的な歌や演奏を残すことが稀ではありません。
例えば本日ご紹介のシングル盤は1970年代前半、爆発的に盛り上がったグラムロックの象徴的な存在だったマーク・ボラン率いるT.レックスが1974年春に出した1枚なんですが、トップテンに入るようなヒットにはならず、加えてバンド内のゴタゴタやメンバーチェンジ、さらには制作スタッフの離反等々が重なっていた時期とあって、極言すれば落目の証左とも言うべき扱いが一般的な評価かもしれません。
しかしサイケおやじにとっては、これがなかなか心地良い愛聴盤♪♪~♪
特にA面「Teenage Dream」はオールディズ調の所謂甘美なロッカパラードで、しかもバックの女性コーラスやチープさが不思議な刹那の魅力というストリングスに彩られて歌うマーク・ボランの諦めたような表現がたまりませんし、ドタバタしたドラムスや痩せたギターサウンドも良い感じです。
ちなみに当時のT.レックスはマーク・ボラン以下、相棒のミッキー・フィン(per)、そしてスティーヴ・カーリー(b)、ビル・リジェンドから交代したデイヴ・ラットン(ds) が主力メンバーであり、他にサポートでジャック・グリーン(g)、また女性コーラス隊として、後にマーク・ボランの子供を産んでしまうグロリア・ジョーンズ等々が参加しはじめた時期だったんですが、プロデュースとストリングスアレンジを担当していたトニー・ヴィスコンティとは、これが最後の仕事だったと思われます。
う~ん、尚更に退廃的なムードが強いのは、その所為?
と感じざるをえないほど、この「Teenage Dream」の醸し出すムードは良いですねぇ~~♪
一方、B面の「Satisfaction Pony」はハードロック系のギターリフを基調にした十八番のブギと新機軸のラップ系黒人音楽をゴッタ煮としたような、摩訶不思議なサイケデリックポップスで、個人的には意想外に跳ねまわるベースやヘタウマなギターがお気に入りなんですよ。
あぁ、こういう事をやってくれる臆面の無さこそが、マーク・ボランの魅力じゃ~ないでしょうか♪♪~♪
しかし結果的に、このシングル盤あたりを境にT.レックスは急速な人気の凋落が止まらず、アメリカに拠点を移すような行動から前述したトニー・ヴィスコンティとの決別、さらにはティラノ時代からの名コンビだったミッキー・フィンのグループ脱退と続く流れは、マーク・ボランという稀代のスタアが落目の反面教師的な立場に見られたんですから、本当に哀しいところ……。
ところが音楽的な部分で言えば、そういう現実の退廃があってこそ、実は真に輝いていくマーク・ボランの本質が浮き出していて、今となってはグロリア・ジョーンズを悪者にする事も吝かではない雰囲気が、個人的にプラスになっていたと思います。
そして皆様ご存じのとおり、マーク・ボランは1977年9月、グロリア・ジョーンズの運転する車の事故により他界……。
全てがそこへ収斂してしまった事により、なにか星屑伝説ばかりが強調されるのはツライですねぇ。
ということで、実はサイケおやじが一番好きなT.レックスは、一般的な人気が落ちていった時期なのです。もちろん直前まで続いていた全盛期も好きではありますが、後期のちょいと崩れた感じは唯一無二で、黒人ソウルミュージックの感染と恋煩いの如き音楽性は、誰のものでもありません。
繰り返しますが、一般的な人気が薄れたとはいえ、皆様にはノスタルジックなムードも強い、この「Teenage Dream」あたりからマーク・ボラン&T.レックスの後期再評価をお願い申し上げます。
ジェームスディーンって曲がお気に入りでした。
それで今日の記事で引っかかった言葉が「跳ねまわるベース」だったワケですが
コレ↓ベースがとても跳ねまわっていて好きなんです。
http://www.youtube.com/watch?v=Hc-hu-iSZJU
コメント&ご紹介ありがとうございます。
実は告白すると、ご紹介の名曲は本日のネタに予定していたんですが、先を越されてニヤリとさせられましたです♪
当時の歌謡曲はエレキベースがひとつの要という音作りなんで、それがサイケおやじの琴線に触れるのかもしれませんねぇ~♪
とってもご無沙汰しております。お忘れになられているかもですが、今回の記事に深く感銘を受けまして、コメントさせていただいてます。
そうです、後期T.Rexは明らかに輝きを増しているんですよね。晩年のI Love To Boogieなんて、ファーストアルバムに入っていてもおかしくないくらい、逆行的な若さを感じます。
Teenage Dreamは高校生の頃それこそ1000位聞きました。大げさではなく、自身が10代だったせいか、「自分たちの世代のための歌」なんていう勘違いをしてました。Teen riot structureも同じくです。
さてさて、トニービスコンティが離れてからの不遇はサウンド面に堅調に表れていますよね。これについてはファンとして悔やんでも悔やみきれません。音楽性(あるいは芸術性)と技術的な側面、この両方の良さが均衡していれば、もしかしたら「あんな事故」が起きなかったのかもしれない、などというのが、没後35周年のここ最近の妄想です。
今後も素敵な記事、楽しみにしてます^^
コメントありがとうございます。
こちらこそ、ご無沙汰しておりますが、流石にT.Rex愛の深い貴兄のご指摘、そのとおりだと思います。
世間からは落ち目と言われても、輝きながら夢を与えて続けてくれるスタアは大勢存在していますが、マーク・ボランは今も別格ですよね♪
それは決して早世したからではなく、スタアとしての宿業を全うしたゆえのことでしょう。
う~ん、没後35年ですか……。
なにか本日はボランブギーに浸りたい気分!
これからもよろしくお願い致します。