OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

アルバート・キングのでかい顔

2009-07-24 10:35:03 | Blues

悪い星の下に / Albert King (Stax / 日本グラモフォン)

クリームを聴き、エリック・クラプトンにシビレていた昭和44(1969)年のサイケおやじが、とても気になっていたのがアルバート・キングという黒人のブルースマンでした。

どうやらエリック・クラプトンが大きな影響を受けているらしいとか、クリームのヒット曲「Strange Brew」が、アルバート・キングの某曲を元ネタにしているとか、なによりもクリームがアルバート・キングの代表的な演目「悪い星の下に / Born Under A Bad Sign」をレコーディングしていたのですから、さもありなんとご理解下さい。

しかし、実は告白すると、当時の私は黒人ブルースなんて自主的に聴いたこともなく、その本質についても、ジャズやR&Bやロックンロールの源流だろう、と思い込んでいたのですから、ブルースロックもなにも全然、分かっていなかったのですが、ただ単にエリック・クラプトンみたいなギターが聴きたいというのが、本音だったのです。

そしてレコード屋には本日ご紹介の、でっかい顔したアルバート・キングのシングル盤が売られていたんですねぇ~♪ もちろんA面はクリームにカバーされた自身の代表曲ですし、B面にも同じくヒットしたという「Crosscus Saw」が入った徳用盤!

まずA面の「悪い星の下に」は、結論から言えばクリームとは全然別のアレンジというか、本当はこっちがオリジナルなんですが、そのブラスや重いビートを強調した演奏と歌には正直、最初っから違和感がありました。

しかしギンギンにエグイ音色で歌に切り込んでいくエレキギターの響きには、確かにエリック・クラプトンがクリームで聞かせてくれたのと同じ味わいがあるのです。

う~ん、これってブラスを外したら、ほとんど「Strange Brew」だよなぁ~~♪

間奏のギターのチョーキングも、最高にイカシていますし、ヘヴィなドラムスとキメまくりのペースは、ジンジャー・ベイカーとジャック・ブルースがロックジャズに解釈した元ネタだと納得出来てくるのです。

そしてB面の「Crosscus Saw」に至っては、ゴキゲンに飛び跳ねるリズム隊のラテン系ブルースビートに乗って、合いの手のブラスとエグ味の強いチョーキングが冴えまくりのギター♪♪~♪

ただし、エリック・クラプトンのような流麗で息の長いフレーズは出ないのですが、アルバート・キングのブツ切れのブルースリック、その間合いの絶妙なフィーリングが最高! あぁ、これってブルースロックだよなぁ~~♪

と気がつくのは、もう少し後の話なんですが、しかし実に気持ち良く聴けたんですねぇ。

ちなみにアルバート・キングは1953年頃から本格的にブルースを歌い始め、左利きでエレキギターを弾くという印象深い個性は、やがてR&Bやゴスペルをも包括したエレクトリックなアーバンブルースのスタイルへと昇華され、様々な黒人音楽の専門レーベルに多くのレコーディングを残しています。

そして1966年からの十数年間ほどが、南部ソウルの名門レーベルだったスタックスに在籍し、白人にもウケたブルース&ソウルなヒット曲を連発した全盛期でしょう。エリック・クラプトンをはじめ、多くの白人ギタリストやブルースロックのミュージシャンから尊敬され、コピーされまくったのも、この時代の演奏だったと思います。

そしてサイケおやじは本質的に好きだったブルースロックの世界から、もうちょっと背伸びした本物の黒人ブルースを聴く覚悟を決めたのが、このシングル盤だったのです。

皆様がご存じのように、アルバート・キングはフレディ・キング、そして B.B.キングと並び立つ、所謂「三大キング」のひとりであり、もちろん3人はギターのスタイルから歌い方、ライブでの所作までもが、白人ロックミュージシャンに真似された偉人なのですが、その中で特にアルバート・キングのエグイ個性が、私には合っているようです。

ただし当時の日本では黒人ブルースは聴こうとしても、そもそもレコードが大して発売されておらず、それが突然、昭和50年頃に大ブームとなるのですから、世の中はわかりません。

ですから、私はこのシングル盤をかなり長い間、愛聴していたのですが、これだって、きっとクリームの人気が無かったら、発売されなかったでしょうねぇ……。

やっぱり、クリームって、凄い! というのが、本日の結論なのでした。

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