追悼・筒美京平：徳永芽里を聴きながら

■白い雨 / 徳永芽里 (日本コロムビア)

故・筒美京平の作曲指向にはＲ＆Ｂ～黒人ソウルミュージックばかりではなく、常に流行の洋楽全般に鋭敏な感覚を持っていた事は否定出来ません。

それが時として所謂「パクリ」がモロ出しになっていたとしても、失礼ながらニューミュージックの自作自演作品ほどの誹りを受けなかったのは、これまでも度々述べて来たとおり、オリジナルの元ネタよりも殊更日本人向けに素敵なメロディやアレンジを作り出せた天才があればこそと思います。

さて、そこで本日ご紹介させていただくのは、徳永芽里が昭和43(1968)に出した掲載のシングル盤Ａ面曲「白い雨」でして、これが橋本淳の綴った歌詞に筒美京平が作編曲を附しているのですから、洋楽指向がズバッと全開！

結論から申し述べれば、セルジオ・メンデス風味が濃いアップテンポのボサロック歌謡でして、弾むリズムに転がるピアノ、隠し味も粋なフルートや大正琴っぽいギターの響きもエキゾチックなところが如何にも和物を意識してるのかもしれませんし、アルトボイスで歌いまくる徳永芽里の声質が幾分厚ぼったいミックスになっているところは好き嫌いがあるかもしれませんが、こ～ゆ～スタイルの歌謡曲が堂々と作られていた時代こそが、筒美京平の登場と密接にリンクしているとすれば、同じ時空でそれを楽しめる幸せは大切にしたいものです。

ちなみに徳永芽里は前年に歌謡フォーク永遠のスタンダードヒット「あたなのすべてを」を大ヒットさせた清純派シンガーだったんですが、掲載したジャケ写のイメージはセクシー派のアダルトシンガーっぽくなっていて、サイケおやじを含む、その頃を知っている人にとっては、ちょっぴりドッキリ！？

そ～ですよ、確かに彼女の場合はテレビ出演時も前述した「あなたのすべてを」を歌っていた記憶が強いですし、所謂ＧＳ映画にも幾つか登場していたんですが、何故か……、このセクシー路線で動く徳永芽里に接した記憶が無いのは、妙に残念な気持ちが今も強いです。

しかし、この「白い雨」は当時のラジオでは比較的多くオンエアされていたと思いますし、筒美京平の作風に特徴的なフックの効いたメロディ展開はサイケおやじの耳に馴染んで幾年月、リアルタイムでは買えなかったレコードも数年を経ての中古ゲットは、自ら運命の証でしょうか。

それと、これは既に存在しているかもしれませんが、サイケおやじの願いとしては、この「白い雨」をピンキーとキラーズのカバーバージョンで聴いてみたいっ！

ということで、筒美京平が残してくれた素敵なメロディは時代を超えてリスナーを和ませてくれるものと信じている次第です。

うむ、この世に歌があるかぎり！