■秋風のリンダ / The Beach Boys (Caribou / CBSソニー)
掲載したのは、1979年に発売されたビーチボーイズのアルバム「L.A.」から我が国独自でカットされた人気曲「秋風のリンダ / Lady Lynda」をA面に入れたシングル盤でして、まだまだ真夏も過ぎていないのに「秋風」という違和感もございましょうが、実は3日前あたりからサイケおやじの中で再燃しているビーチボーイズ熱に浮かされた所為とご理解願えれば、幸いでございます。
で、これは既に述べたとおり、件のアルバムバージョンを日本で独自に編集したシングルバージョンになっているのが珍しく、海外のコアなビーチボーイズ愛好者にとってはコレクターズアイテムだったわけですが、サイケおやじとしてはアルバムバージョンが好きなんですよ、実は。
というのも、楽曲そのものはアル・ジャーディンが書いた美メロのラブソングであり、既に1977年頃にはレコーディングも完了していたと云われているのですが、アルバム「L.A.」に収録のバージョンは前振りとしてヨハン・ゼバスティアン・バッハの「Jesus bleibet meine Freude / イエスは変わらざるわが喜び」、あるいは「Jesus, Joy of Man's Desiring / 主よ、人の望みの喜びよ」の題名でも知られる、音楽好きならば、自然と耳にしているにちがいない有名なメロディが置かれ、結局「秋風のリンダ / Lady Lynda」という楽曲そのものが、その古典をモチーフにしている事が浮かび上がって来る仕掛けが最高!?
これは、プロデュースもアル・ジャーディンがやっているのですから、素敵な確信犯(?)だとしたら、憎めませんねぇ~~♪
ただし、アルバム「L.A.」そのもののプロデュースはブルース・ジョンストンが主導したと云われ、その背景には、せっかく1975年頃から社会復帰を果たしていたブライアン・ウィルソンの精神状態が再び悪化しつつあった事に加え、心機一転(?)CBS傘下のカリブレコードに移籍した事情もあった様からでしょうか、結局のところ、アルバム収録の各トラックがメンバーの単独レコーディングに近い楽曲になっている印象で、つまりは寄せ集め的な仕上がりは当時、賛否両論だったと記憶しています。
しかし、サイケおやじは、これがなかなかに気に入っておりまして、特に素晴らしいコーラスワークとアレンジの妙が心地好い「秋風のリンダ / Lady Lynda」には酔い痴れていたんですよ♪♪~♪
そして同年、久々に来日した江の島でのライブギグでも、この「秋風のリンダ / Lady Lynda」が演じられていたのは嬉しかったんですが、アルバムバージョンとは似て非なるパフォーマンスだったのは、聊かの物足りなさが……。
さて、そこで、いよいよ掲載のシングル盤に収録された「秋風のリンダ / Lady Lynda」なんですが、これはジャケット裏のキャプションによれば、前述した来日の折、東京は信濃町のソニースタジオにおいて、アル・ジャーディンとブルース・ジョンストンによって編集とリミックスが行われたそうで、具体的にはイントロにあったバッハのメロディパートをカットし、幾分リズム隊を強調した様なミックスも感じられ短縮バージョンでして、既に述べたとおり、個人的にはアルバムバージョンの完成度が高かった所為もあり、完全に物足りないんですが、しかし、これはこれで、やっぱりビーチボーイズならではの魅力に溢れた名曲だと思います。
ちなみにCD化に関しては、やはり日本独自の箱物セットに入れられているはずで、確か「グッド・ヴァイブレーションズ・ボックス 」の日本盤にオマケとして付けられたボーナスCDに入っているはずなんですが、特段の必要性を感じないのであれば、掲載したアナログ盤を入手される事をオススメ致します。
ということで、ビーチボーイズの奥の細道にも果ては無し!
しかし、そんな事に拘る前に、何かしら素直に楽しめるのも、ビーチボーイズの魅力のひとつかもしれません。
幸いにも(?)ぶり返した中毒症状が続きそうなんで、ビーチボーイズの諸作について聴く機会が増えそうな今年の夏になりそうです。