食欲の秋とはいえ、昼飯にカツ丼とアンパンと野菜ジュース2本っていうのは、ちょっと……。苦しくはなかったけれど、気分的に食い過ぎ感がありました。もう若くないので!
ということで、本日は――
■The Chant / Sam Joines Plus 10 (Riverside)
4ビートはモダンジャズの魅力ですが、それをグイグイと推進していくのがベーシストの存在でしょう。ですからドラマーがどんなにポリリズムに走っても、良いベースが入ってれば演奏は決して迷いませんし、私はそういう演奏に気持ちが良くなります。
本日の主役、サム・ジョーンズもその1人♪
特に1950年代中頃から1960年代までの演奏には、ガッツのある音色とグルーヴィなノリがいっぱいで、心底、魅了されます。
そのキャリアの中では、何と言ってもキャノンボール・アダレイのバンドレギュラーだった時期が一番輝かしいのですが、同時期に吹き込んでいたリーダー盤も、なかなか凝った作りで聞き逃せません。
このアルバムはアレンジを用いた2種の中型バンドを率いた演奏集で、サム・ジョーンズはチェロも弾くという意欲作になっています。
まず仮にグループAとするバンドには、サム・ジョーンズ(b)以下、ナット・アダレー(cor)、ブルー・ミッチェル(tp)、メルバ・リストン(tb)、キャノンボール・アダレイ(as)、ジミー・ヒース(ts,arr)、テイト・ヒューストン(bs)、ビクター・フェルドマン(vib,p,arr)、レス・スパン(g)、ルイス・ヘイズ(ds) という凄い面々が参加♪ 録音は1961年1月13日とされています。
また同年1月26日に録音されたグループBでは、サム・ジョーンズがチェロに専念し、レス・スパンが抜けた代わりに、ウイントン・ケリー(p) とキーター・ベッツ(b) が入っています――
A-1 The Chant (グループA / arr:ビクター・フェルドマン)
いきなりゴスペルファンキーなハードバップ大会で、カッコ良いアレンジを縫って展開されるサム・ジョーンズのベースソロも最高ですが、ナット・アダレーのコルネットやジミー・ヒースのテナーサックスも真っ黒です♪
う~ん、それにしても、こういうグイノリはモダンジャズの醍醐味ですし、ベースソロの背後で何気なくリズムを刻んでいるレス・スパンの存在感とか、ほんとうにたまりませんねぇ。
A-2 Four (グループA / arr:ジミー・ヒース)
マイルス・デイビスが作ったとされるハードバップの定番曲で、もちろん豪快なアレンジの中をビンビンにウォーキングするサム・ジョーンズの4ビートが痛快です。
アドリブパートではブルー・ミッチェルとジミー・ヒースが持ち味を発揮! サム・ジョーンズもブリブリのベースソロを聞かせてくれますが、例えばポール・チェンバースとの比較では、柔よりも剛のイメージでしょうか。それゆえにハードバップ色がさらに強い演奏になっていると思います。
A-3 Blues On Down (グループA / arr:ビクター・フェルドマン)
シャープなホーンのシャウトと呼応してサム・ジョーンズのベースが唸り、自然体のハードバッブブルースが始ります。う~ん、グルーヴィ♪ レス・スパンのリズムギターも良い感じです。
ホーンのアドリブでは、お待ちかねのキャノンポールが登場! ややライトタッチなんですが、黒い魂は存分に味わえますし、続くビクター・フェルドマンのビアノが、実にファンキーでソフトな、微妙な味わいです。
A-4 Sonny Boy (グループB / arr:ジミー・ヒース)
ここではチェロに専念するサム・ジョーンズが、なかなかに快演です♪ テーマメロディの変奏はもちろん、アドリブパートでも歌心がたっぷりの快適さ! バックを彩るホーンのアンサンブルも気持ち良く、もちろんお目当てのウイントン・ケリーも弾みまくっています。
それとブルー・ミッチェルが歌心優先という持ち味を存分に発揮していますよ♪
B-1 In Walked Ray (グループB / arr:ビクター・フェルドマン)
テーマメロディが、なんとなく「Bohemia After Dark」とソックリで、ニンマリしてしまいますが、アップテンポのノリを崩さないサム・ジョーンズのセロが最高にスイングしています。キーター・ベッツのウォーキングベースとの兼ね合いも良いですねぇ~♪
またクールなビクター・フェルドマンのヴァイブラフォンや豪快なホーンアンサンブルも楽しいかぎり♪
B-2 Blue Bird (グループB / arr:ビクター・フェルドマン)
これがまたグルーヴィな雰囲気が横溢したハードバップ!
厚みのあるホーンアレンジやリズム隊の粘っこいノリが最高ですし、サム・ジョーンズのチェロはテーマメロディからアドリブソロまで、全くそれらに負けていない強烈な存在感を聞かせてくれます。
全体にはモダンなカンウト・ベイシー楽団という感じもしますが、ナット・アダレーが大ハッスルし過ぎて憎めません。あぁ、気分はモダンジャズにどっぷりです♪
B-3 Over The Rainbow (グループB / arr:ジミー・ヒース)
有名スタンダードを凝ったアレンジで料理した隠れ名演だと思います。なにしろサム・ジョーンズのチェロが、実に良い雰囲気なんですねぇ~♪ ビクター・フェルドマンのヴァイブラフォンも素晴らしいスパイスになっています。
ゆったりしたビートを生み出しているリズム隊では、ウイントン・ケリーが若干、騒ぎすぎかと思いますが、結果オーライでしょうねぇ……。
B-4 Off Color (グループA / arr:ジミー・ヒース)
ここで再びベースに戻ったサム・ジョーンズが本領発揮の黒いグルーヴを存分に聞かせてくれます。
まずアドリブ先発のビクター・フェルドマンのバックでは強力な4ビートのウォーキングを披露し、短いアンサンブルを挟んで、今度は密度の濃いベースソロを展開してくれます。
そしてブルー・ミッチェルのトランペットが鳴り出した瞬間、ズルッと4ビートのウォーキングに戻る瞬間芸も、たまりません!
ということで、とても楽しく聴けるベースのアルバムです。惜しむらくは、キャノンボールが1曲しかアドリブを聞かせてくれないのと、同じ様なテンポ&曲調が続くあたり……。
しかしながら、やっぱりサム・ジョーンズは魅力的なベース奏者で、良く比較されるポール・チェンバースがブンブンブンなら、サム・ジョーンズはビンビンビン! ちょっと硬めの音と強引なスイング感が、私はたまらなく好きです。
ちなみにサム・ジョーンズは1970年代に入ると電気のアタッチメントを使い出し、音色もノリも別人にようになってしまった……、と感じているのは私だけでしょうか?
リーダー盤もそれなりに作っていた人ですから、時代と共に味わいが異なるのも理解するべきなんでしょうが、やはり私はキャノンボール・アダレイのバンドからオスカー・ピーターソンのトリオへ入った頃のサム・ジョーンズが、一番好きなのでした。