■恋泥棒 c/w 恋のめざめ / 奈美悦子 (日本ビクター)
ここ一番で欲しいツモを引き寄せる念力は、マージャンをやった事のある皆様ならば、どなたでも経験があろうかと思いますが、似たような現実はオークションの世界でも確かにありますっ!
例えば本日ご紹介のシングル盤は奈美悦子が昭和44(1969)年に出した、全くヒットしていないがゆえに中古も探索が困難な1枚だったんですが、これを追い求めて幾年月……。
常日頃から「欲しいっ!」と念じ続けていたサイケおやじは、ついに先日、ありがたくも入手が叶いました♪♪~♪
まずA面の「恋泥棒」は作詞が阿久悠、作編曲は三木たかし!
ですから当然、奥村チヨが放った大ヒットとは同名異曲なんですが、こちらも所謂「フェロモン歌謡」というジャンルに入れて、それほどの違和感は無いでしょう。
ただし、そのフェロモンの種類が違うというか、こちらは「ぶりっ子系」なんですねぇ。
つまり男の前で無知なフリして甘える仕草を歌で表現してしまうという、これは確信犯的な魅力を全開させた奈美悦子の真骨頂!?
説明不要かと思いますが、当時の彼女は前年夏まで人気を集めた音楽系バラエティ番組「レ・ガールズ(日本テレビ)」で西野バレエ団4人娘のひとりとして出演♪♪~♪ 忽ちスタアの地位を不動にし、同時期にはレコードデビューも果たしていた元祖アイドルだったんですが……。
このシングル盤を発売した頃からは少しずつ大人の雰囲気へとイメチェンを図っていたようで、それは実際、18歳だった当時に出演した映画やテレビドラマ等々でも感じられるところです。
しかし、この「恋泥棒」は如何にも中途半端というか、ドンツカの8ビートがキメのドラムスとエレキギターの哀愁フレーズ、さらには幾分湿っぽいストリングの胸がときめくイントロから昭和歌謡曲王道のメロデイを歌う奈美悦子のボーカルは、なかなかツボを押さえていると思います。
ところが間奏で入る彼女の台詞が、なんとも子供っぽいというよりも、もしかしたらロリ趣味を狙ったのかもしれませんが、結果的に「ぶりっ子」丸出しという仕上がりで???
リアルタイムでの個人的な奈美悦子のイメージとしては、今風な表現ではジュニアアイドルであり、と同時に「大人っぽいお姉様」としてのムードも濃厚なスタアでしたから、どちらに表現されても満足するはずだったんですが、どっちつかずに作られた「恋泥棒」には何か違和感が……。
それが十数年を経た1980年代、所謂廃盤アワーのブームの中で再び邂逅してみれば、これがなかなか愛おしい♪♪~♪
なによりもGS歌謡どっぷりのプロデュースで甘えきった奈美悦子のボーカル表現は、まさに唯一無二の昭和元禄状態ですよっ!
ちなみにその昭和44(1969)年の彼女と言えば、やはり西野バレエ団のスタアが勢揃いしたお色気アクションの人気テレビドラマ「フラワーアクション009ノ1」で、持ち前のケバイ美貌と派手好みの肢体を存分に見せてくれたのですから、そうした記憶が鮮烈に残っていればこそ、当時は中途半端と思えた「恋泥棒」が尚更に魅力的だったというのは、些か自分に言い聞かせる言い訳でしょうか……。
しかし既に述べたように、このシングル盤はほとんど売れていなかったので中古市場でも状態の良いブツはなかなか出回らず、思いは募るばかりだったのです。
そして現物を手にして初めて聴いたB面の「恋のめざめ」が、これまたシビれる名曲名唱だったんですねぇ~~~♪
なにしろイントロから如何にものマイナー調が、これぞっ! 昭和歌謡曲のど真ん中!
ちょいとベタベタした奈美悦子の歌い回しと未練たっぷり気味のストリングスを全面に出したオーケストラアレンジは本当にジャストミートの仕上がりで、曲を書いたのがA面と同じく阿久悠&三木たかしのコンビであれば、こちらがA面でもOKという感じがするほどです。
そして蛇足ではありますが、こうした曲調は昭和44(1969)年には下火になっていたGSブームの中で、歌謡曲に生き残りを模索した幾つかのバンドが志向したスタイルと共通項があって、つまり、こちらも堂々のGS歌謡ということで、侮れない仕上がりも納得されるばかりです。
さて、こうしてイメチェンしていった奈美悦子は、なんと人気絶頂時の同年夏頃から、当時の人気GSだったヴィレッジ・シンガーズの林ゆたかとの恋愛関係が報道されるようになり、翌年には19歳のスピート結婚!!!
これは芸能マスコミにとっては大喜びの騒動でしたが、ファンにとってはちっともおめでたい事ではありませんでしたねぇ。まあ、ご存じのとおり、3年ほど後には離婚しているんですが……。
サイケおやじとしては、もっとリアルタイムで二十代前半の大人の女性の魅力を楽しませて欲しかったと思っています。
それは歌手活動でも全く同様の気持で、このシングル盤の後には、もう1枚ぐらしかレコード出していなかったはずですし、最初の結婚前の演技や佇まいを思い起こしてみても、ナチュラルな大人お色気が漂い始めたばかりの感じでしたから、尚更です。
今となっては、あの日には帰れないわけですから、せめて刹那の念力を駆使、当時のアイテムを集める事が気持の張りを保つ事かもしれません。
このキュートなジャケ写が、全てを許してくれるような気がします。