■風に吹かれて / Bob Dylan (Columbia / 日本コロムビア)
ボブ・ディランという名前を知ったのは何時だったろう?
そう思うと、それはモダンフォークのポップス的グループとしては最高峰だったピーター・ポール&マリー=PPMか、それともザ・バーズだったか、何れにしても私にとっては、そのあたりに突き当たるわけですが、現在は神格化されているボブ・ディランにしても、私の世代で決定的に大きな存在になったのは1970年代に入ってからじゃないでしょうか。
と、いうのも、ボブ・ディランはプロテストソングで注目され、フォークロックという革新的なスタイルを打ち出した1960年代中頃の全盛期に、自ら乗っていたバイクで事故って大怪我! それが1966年7月末のことで以降、2年近くの逼塞状態となり、その間にはレコーディングや新作アルバムの発表はありましたが、賛否両論の嵐の中、以前のような積極的な活動は滞りがちに……。
ですから、ちょうど私が洋楽にどっぷりの少年時代には、リアルタイムでボブ・ディランを聴いていたなんてことはなく、大好きだったザ・バーズが演じたボブ・ディランの楽曲、あるいはPPMスタイルのギターを練習する過程で聴いた名曲の数々に接していたに過ぎません。
つまり本家のボブ・ディランを聴くことは無かったといって過言ではないのです。もちろんラジオから流れていた「Like A Rolling Stone」や「I Want You」といったフォークロックの大ヒット曲は耳にしていたのですが、私にとってはイマイチどころか、???の気分が濃厚でした。
何よりミョウチキリンに思えたのは、あの曲メロを外して語るような、ブッキラボウな歌い方で、これは後に知ったところによれば、つまりは伝承歌やブルースにおける黒人の歌唱法から影響されたという、白人にとっては意図的な物真似手法だったわけですが、個人的には馴染めなかったですねぇ……
それが1970年前後になると、ボブ・ディランという名前がラジオの洋楽番組や音楽雑誌等々で頻繁に取り上げられるようになり、折しもビートルズとの交流とか、ザ・バンドを従えてのライプステージへの復活登場が強い印象になっていました。
そこで私も一念発起、ボブ・ディランを真剣に聴いてみようと決意はしたものの、先立つ家経済的な問題は大きく、結局は掲載したシングル盤を隣の町医者に出入りしていた若い先生から永久貸与されたというのが初ディラン♪♪~♪
ちなみに以前も書きましたが、この若い先生はフォークソングが大好きで、私にギターの弾き方を教えてくれた師匠でもありますから、ディランについて教えを請うた時の喜び方は尋常では無く、忽ち私に、このシングル盤を与えてくれたのです。
さて、肝心の「風に吹かれて / Blowin' The Wind」はボブ・ディランのオリジナル曲の中では、最も有名なものだと思います。メロディは某有名伝承歌からのパクリとされていますが、歌詞の内容は虚無と熱意に溢れたものですから、前述したPPMのカパーバージョンが永遠のヒット曲になったのも当然だったと思います。
しかし肝心のボブ・ディランのバージョンは1963年5月に発売されながら、ヒットチャートに入ることはありませんでした。
まあ、このあたりはPPMのポップなフィーリングとは正反対の、エグ味の強い歌い方ですから、既に述べたようにサイケおやじにも良さは理解出来ませんでした。しかし妙な説得力というか、ボーカルそのものの強い存在意義は強く感じられましたですねぇ。
ということで、いよいよ私が最初に買ったボブ・ディランのレコードは、昭和46(1971)年当時の新譜として発売されたLP「新しい夜明け / New Morning」でしたが、それについては次の機会に譲りたいと思います。
コメント、ありがとうございます。
>ディランの曲は他人カヴァーでその良さが
これは、本当にそうかもしれません。
ザ・バーズはもちろん、ホリーズにも「ディランを歌う」という名作アルバムがあります。
ただし、「Like A Rolling Stone」だけはディラン本人のバージョンが最高の極みだと思います。ストーンズのバージョンなんか、悪い冗談みたいで、一度聴いたら瞬間から、目眩がしましたですよ……。
ディランの曲の邦題については、難しい解釈と安易なタイトル付けの両面がありますよね。
個人的には「ブルーにこんがらがって」という邦題の、あの曲が大好きです♪
この「風に吹かれて」の本人ヴァージョンは、PPMで馴染んでいた耳には違和感(?)みたいなものを感じましたね。なんだこの人は…みたいな。
同じく僕もディランを意識したのは70年代の本格復帰の頃でしょうか。ロック・ディランのほうが好みです。彼独特の節回し(?)もロックのほうが合うような気がします。
それにしてもB面曲の邦題…。
当時はこんなタイトルだったのですね。