■Live Rhymin' / Paul Simon (Columbia)
オリジナルヒットとカバーバージョンの関係で言えば、もうひとつ欠かせないのが本人によるリメイクやセルフカバーという、ある意味での自虐的行為もあります。
特にグループ活動していた中のメンバーが独立したり、解散後の再結成等々の経緯から必要に迫られての行いは、ファンにとっても悲喜こもごも……。
なにしろ、オリジナルバージョンが高い評価を得ていた場合には、それが決して成功し難いものという経験則がリスナーにはありますし、なにか悪あがきのような結果が哀しくもありますからねぇ。
しかし一方、それがライプの現場においては、これほど嬉しいことは無いという現実は否定出来ず、「悲喜こもごも」と書いたのは、そこです。
例えば本日ご紹介のアルバムは、サイモンとガーファンクル=S&G解散後のポール・サイモンが、なんとか「ポール・サイモン」と「ひとりごと」のソロアルバム2枚を出し、ヒットシングルも放った勢いで敢行された1973年の巡業ステージを収めたライプ盤なんですが、素直にファンが嬉しかったのは、S&G時代の演目が入っている事じゃないでしょうか。
A-1 Me And Julio Down By The Schoolyard / 僕とフリオと校庭で
A-2 Homeward Bound / 早く家に帰りたい
A-3 American Tune / アメリカの歌
A-4 El Condor Pasa / コンドルは飛んでいく
A-5 Duncan
A-6 The Boxer
B-1 Mother And Child Reunion / 母と子の絆
B-2 The Sound Of Silence
B-3 Jesus Is The Answer
B-4 Bridge Over Troubled Water / 明日に架ける橋
B-5 Loves Me Like A Rock / ママはご機嫌
B-6 America
さて、ここまで述べて来たように、ポール・サイモンがS&G時代の演目を歌うという事は、当然ながら素晴らしい相方という以上に、天才ボーカリストとしての存在が眩しいほどのアート・ガーファンクルが不在という現実に直面……。
ですから、このアルバムが発売された1974年当時、一番の話題だったのは、ポール・サイモンが独りで「明日に架ける橋」を歌っているという点に尽きた感もありました。
なにしろ件の名曲は、アート・ガーファンクルの美声テノールで歌われてこその豪華絢爛と静謐な説得力が魅力でしたので、果たしてポール・サイモンは……。そんな不安が期待を上回っていたのは否めないところです。
しかし結論から言うと、なんとポール・サイモンはジェシー・ディクソン・シンガーズという本物のゴスペルグループを助っ人に、自らの作詞作曲が黒人ゴスペルの焼き直しであったという種明かしを演じることで、見事に乗り切ったのですから、流石!?
まあ、このあたりの賛否両論はリアルタイムから今日まで、途切れることなく続いているわけですが、サイケおやじは決して悪い感じはしていません。
それどころか、なんと「The Sound Of Silence」までもがゴスペル仕立に演じられ、ほとんど新しい味わいが表出されてしまったという、瓢箪からコマ!?
ちなみにアナログ盤B面は、そのジェシー・ディクソン・シンガーズとの共演がメインで、そこには多分、グループ専属らしい、如何にものオルガンやエレキベース&ドラムスが付いていますから、そのイナタイ味わいが妙にたまりませんよ♪♪~♪
中でもオリジナルのスタジオバージョンではスッキリしたレゲエビートだった「母と子の絆」が、ここではもっさりした黒人ビートとレゲエの緩やかなグルーヴがミョウチキリンに化学変化したような不思議さで、クセになりそうです。
当然ながら、黒人ゴスペルならではの、魂を揺さぶれるようなコーラス&ハーモニーも良い感じ♪♪~♪
ですから、既に述べたように「The Sound Of Silence」がゴスペルフィーリングで演じられたとて、それが自然に楽しめてしまうのですから、ポール・サイモンの企みはズバリ直球のストライクだったのです。
そこで気になる「Jesus Is The Answer」は、期待の新曲かと思ったら、実はジェシー・ディクソン・シンガーズの独演という肩すかしも、続く「明日に架ける橋」への露払いとしては最高!
いゃ~、本当に力が漲ってくる流れの受け、何気ないチューニングからスタートする「明日に架ける橋」のしぶとさは、これが俺流という作者の意気地でしょうか。
確かにアート・ガーファンクル不在の物足りなさは否定しようもありませんが、これはこれで納得させられてしまうところも確かにあると、サイケおやじは思います。
その意味で、アンコール的に演じられる黒人ドゥワップ風な「ママはご機嫌」の楽しさは絶品♪♪~♪ あぁ、心底ウキウキさせられますねぇ~♪
と、ここまで書いてきて、スッ飛ばしていたA面なんですが、こちらも「コンドルは飛んでいく」から続く3曲がウル・バンバという、南米ペルーのグループとの共演で、もちろんS&Gでのヒットバージョンの意識的な再現を狙ったことはミエミエでしょう。
しかし、ここで意外に良いのは、やはりS&Gの代表作だった「The Boxer」が、同じく南米フォルクローレのスタイルで演じられた事で、独得の哀愁が滲む笛の音色が、ポール・サイモンのアコースティックギターと見事に溶け合って、これがなかなか魅力的♪♪~♪
ご存じのとおり、ポール・サイモンは自身のルーツたるユダヤ系ジャズモードに加え、例えばイギリス民謡、さらには南米や南アフリカ等々のエスニック系メロディとリズムを巧みに取り入れた曲作りをしていますから、こうした目論見も成功して当たり前なんでしょうねぇ。
ですから完全なソロパフォーマンスの「僕とフリオと校庭で」「早く家に帰りたい」「アメリカの歌」という冒頭三連発では、名人技のアコースティックギターも冴えまくりで、おそらくはマーチンD35-Sの素晴らしい音色も堪能出来ますし、なによりもシンガーソングライターとしてのポール・サイモンが存在感を誇示しています。
そして圧巻なのがオーラスの「America」で、やはりギターの弾き語りながら、見事に終ってしまったS&Gの夢と幻想を現実に再現してくれるのは、名演としか言えません。
ということで、最初に聴いた時よりも、繰り返して鑑賞する毎に楽しみが増していくような、これぞっ、愛聴盤というLPです。
ちなみに告白すると、サイケおやじは「コンドルは飛んでいく」が、なにか山口百恵の「ひと夏の経験」を歌ってしまうので、好きではないのですが、ここでのライプバージョンは素直に聴いています。
それと繰り返しではありますが、特筆したいのはポール・サイモンのギターの上手さと音色の綺麗さで、これは録音の関係もあるんでしょうが、そのあたりも楽しめるんじゃないでしょうか。
アコースティックギターが苦手なサイケおやじは、憧れてしまいますねぇ~~♪
最後になりましたが、ポール・サイモンが独りで「明日に架ける橋」を歌わなければならなくなった時、アレサ・フランクリンのバージョンを聴いていたか?
そんな下衆の勘繰りを抱き続けているのでした。
初来日はタイムリーでしたね!
友人たちと武道館にライブを見に行きましたよ!
私にとって初めての外タレ(死語・笑]公演と相成りました!
ライブ終了後友人が「キャシーズソング」と叫んだのが印象に残っています!
友人が聴きたかった「キャ―シ―の歌」はこの日の演目にはありませんでした!
ちなみに「キャシーの歌」は94年のS&Gの来日公演では歌われました!
その時、没交渉になってしまった件の友人のことが思い出されました!
コメント、ありがとうございます。
リアルタイムの音楽体験は、まさに「歌は世につれ、なんとやら」ですよねぇ~。
特にライブの思い出は、なかなか消えるものではありません。
S&Gは活動全盛期に来日が無かったので、再結成時のライブでは爆発的人気が再燃しましたが、アート・ガーファンクルのソロステージも、見たいものです。