■あざみ白書 / 小林旭 (クラウンレコード)
失われてしまった事象への惜別と同じように、全く体験出来なかった物事への憧れも、また強いものがあります。
例えば、通称「赤線」と呼ばれる遊廓街は、単なる売春や風俗業が罷り通る現代の遊び場とは、ちぃ~とばかり似て非なる風情があったんじゃ~ないかなぁ~~~。
と、サイケおやじは昔っから映画や小説等々で接する「赤線」に対し、漠としながらも、執拗な興味を抱いていたわけですが、そんな時に出会ったのが作曲家の小林亜星が滝田ゆうの描いたイラストとコラボした「あざみ白書」という素敵な名著で、内容は全国の遊廓街の記憶に残るガイドブックであり、すっかり失われてしまった桃源郷における人間模様のあれこれも含む世情の物語は、あきりたりなドキュメントや歴史物とは味わいが違いました。
それは滝田ゆう独得のイラストの印象も強くて、せつなさや寂しさや浮世の憂さ……、そんなこんなが喜怒哀楽と森羅万象の境目で表現されたイメージは、やはり日本人の琴線に触れる何かがあるように思います。
そこで本日掲載したのは昭和55(1980)年に発売された、その「あざみ白書」のタイアップレコードなんでしょうか、まずはジャケットのイラストが滝田ゆう♪♪~♪
その一点だけでも「買い」は必定であり、当然ながら作曲が小林亜星なのは「お約束」以上の必然!
もちろん小林旭ならではの歌いっぷりの良さの中から、じわっと滲み入る「節」の哀切感が阿久悠の作詞と絶妙に溶け合う、それが昭和歌謡曲の正統なのは言うまでもないはずです。
う~ん、一度は行ってみたかったですねぇ~。
ということで、そうやって思えば、現在の歓楽地帯も何れは懐かしい場所になるんでしょうか……。
これまで仕事がらみとはいえ、いろんなところを訪れたサイケおやじは、あれやこれやを思い出しているのでした。