OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ペット・サウンズに出会った頃

2009-10-14 12:22:31 | Beach Boys

Carl And The Passions - So Tough & Pet Sounds / The Beach Boys
                                                                          (Brother / Reprise)




サイケおやじがビーチボーイズの世紀の名盤「ペット・サウンズ」と邂逅したのは昭和47(1972)年、それも意図的では決して無く、偶然の産物でした。

というのも、当時の私はビーチポーイズがリアルタイムで出していた「サンフラワー」と「サーフズ・アップ」という2枚のアルバムに心惹かれ、次なる新譜を待ち焦がれていたわけですから、本日ご紹介のLPも、例によって某デパートの輸入盤セールで発見した瞬間、速攻でゲットしたわけですが……。

正直、カール&パッションズと記載のある表ジャケットからは最初、これがビーチボーイズのレコードだとは思いませんでした。ところが裏を返して吃驚仰天! そこにはブライアン・ウィルソンもちゃ~んと写っている往年のグループショットが!?!

実はこのアルバムは2枚組で、まずビーチボーイズの新譜扱いという「ソー・タフ」が、なんと彼等がデビュー前に名乗っていたカール&パッションズ名義の作品として収められ、そしてもう1枚、今では名盤の「ペット・サウンズ」がオマケ的に付けられたサービス仕様だったのです。もちろん値段は輸入盤1枚物と変わらない価格の、確か2千円以下でしたから、これは買う他はありません。

ただし繰り返しますが、この時の私は決して「ペット・サウンズ」の魅力と真価を知っていたわけではありません。むしろ全く聞いたことのないアルバムでしたから、つまりは「お徳用」な気分が優先されていたのです。

で、まずはメインのカール&パッションズです。

☆So Tough / Carl And The Passions
 A-1 You Need A Mess Of Help To Stand Alone
 A-2 Here She Comes
 A-3 He Come Down
 A-4 Marcella
 B-1 Hold On, Dear Brother
 B-2 Make It Good
 B-3 All This Is That
 B-4 Cuddle Up
 結論から言えば、なかなかサイケおやじ好みのファンキーロックが楽しめます。しかし、これは明らかに、一般的なイメージのビーチボーイズではありません。十八番のハーモニーワークもほとんど聞かれず、またグッと惹きつけられる素敵なメロディも無いのです……。
 しかし、私は前作「サーフズ・アップ」からの流れのひとつとして、違和感がありませんでした。正直、けっこう、好きなんですよ♪♪~♪ バンドとしてのリズム&ビートが、グッとダイナミックな感じに進化していて、結果オーライです。
 というのも、実は当時のビーチボーイズは中心人物のブライアン・ウィルソンが諸々の事情から半病人のリタイア状態でしたし、一応はドラマーだったデニス・ウィルソンは私生活の乱れからバンドに参加することが稀になり、また助っ人として大活躍していたブルース・ジョンストンが、この頃のビーチボーイズを仕切り始めたマネージャーのジャック・ライリーに反発してグループを去っていたことから、残されたマイク・ラブ(vo) とアル・ジャーディン(vo,g)、そしてカール・ウィルソン(g,vo) が自分達で発見してきたブロンディ・チャップリン(g,vo,b) とリッキー・ファター(ds) という2人の黒人を新メンバーに迎えて作ったのが、このアルバムの真相だったのです。
 う~ん、これではビーチボーイズという名義が使えないわけです。
 しかも、ここでのバンド名どおり、カール・ウィルソンが実際の現場をリードしていたというのですから、ソウル&ファンキー志向が強まるのもムペなるかな!
 ブライアン・ウィルソンが持ち味のハーモニー感覚と当時のバンドが狙っていたファンキーロックが見事に合体した「Marcella」は、一番「らしくない」名曲の決定版として、以降のビーチボーイズではステージの定番演目になったほどですし、ソフトロック風味も強い「All This Is That」も忘れ難い印象を残します。
 ただし、誰しもに認められるのは、その2曲だけでしょう。今に至るもイノセントなビーチボーイズのファンからは、蛇蝎の如く扱われているのが、この「ソー・タフ」だと言われています……。

そして「オマケ」というには、あまりにも残酷な美しさを持っていたのが、「ペット・サウンズ」でした。

☆Pet Sounds / The Beach Boys
 A-1 Wouldn't It Be Nice
 A-2 You Still Believe In Me
 A-3 That's Not Me
 A-4 Don't Talk
 A-5 I'm Waiting For The Day
 A-6 Let's Go Away For Awhile
 A-7 Sloop John B.
 B-1 God Only Knows
 B-2 I Know There's An Answer
 B-3 Here Today
 B-4 I Just Wasn't Made For These Times
 B-5 Pet Sounds
 B-6 Caroline No

 各方面で語りつくされた大名盤について、今更クドクドと述べるまでもないと思います。
 しかし、唯ひとつだけ、この時点で初めて「ペット・サウンズ」を聴いた私は、ウキウキとしてホンワカさせられる曲メロと至高のコーラスワーク、アルバム片面及び全体の流れの良さ、そしてその完成度に圧倒されました。偽りなく、こんなに素敵なアルバムが、この世にあったのか!?! 本当にそう思いましたですねぇ、大袈裟ではなく。
 ただし同時に、これはロックの音がしていないなぁ……。
 なんて不遜なことも思いました。お叱りは覚悟しています。
 後で知ったことですが、ブライアン・ウィルソンは長いスタジオワークを続けながら、このアルバムのほとんどを単独作品=ソロアルバムのように作り上げたそうですし、他のメンバーは、ただ指示されたとおりに歌い、コーラスを演じていただけという実態も、今日では好結果として評価されるところでしょう。
 それが何故、あえてここに再発されなければならなかったのか?
 リアルタイムの1966年には契約会社のキャピトルから好意的には迎えられなかった「ペット・サウンズ」が、事もあろうにビーチボーイズが自ら設立したレーベルと新契約会社から出された経緯の裏には、音源の権利をビーチボーイズ側が概ね獲得した結果がありました。もちろんゴタゴタが続いていたキャピトル側との和解も進展していたのかもしれません。
 とにかく、こうして世紀の名盤が再度ひっぱり出されたのは、当時の最新レコーディングが、リブリーズ側から懐疑的な扱いを受けていた証でしょうし、ビーチボーイズ本人達にとっても、迷い道に他ならないと思います。

ということで、ここで「ペット・サウンズ」に出会ったサイケおやじは、やはり幸せだったと思っています。もちろんリアルタイムだったら、もっと良かったんでしょうが、しかし正直に言えば、その頃の私には決してシビれることのない音楽だったと思います。

つまり「ペット・サウンズ」は単なるロックのアルバムではなく、それを超越した永遠のポップス性と神秘性を兼ね備えた、アンタッチャブルな存在かもしれないのです。「ロックの音」がしていなくとも、それは当然でしょう。

それゆえに好き嫌いがあることも、また今日、あまりにも過大評価気味という事実も承知しているつもりですが、ある日突然、虚心坦懐に聴きたくなるのが、この2枚組♪♪~♪

それは決して、天国と地獄ではないのです。

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