OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

2枚目に買ったジミヘン

2009-10-15 11:59:18 | Jimi Hendrix

真夜中のランプc/w賭博師サムのサイコロ / Jimi Hendrix (日本グラモフォン)

偉大なジミ・ヘンドリックスは天才ギタリストというイメージが一番強いと思いますが、どっこい、サウンドクリエイター及びボーカリストとしての魅力も絶大! 個人的にもジミヘンのボーカルは大好きで、あの声質とボブ・ディランの影響が色濃いような歌いっぷりは、サイケおやじの感性にジャストミートしているようです。

さて、本日ご紹介のシングル曲「真夜中のランプ / Burning Of The Midnight Lamp」は、そうしたジミヘンのもうひとつの魅力が存分に味わえる名演でしょう。

いきなりイントロから意表を突かれるチェンバロの響きは、もちろんジミヘン独得の不可思議なエレキギターとユニゾンのダブルトラックになっていますが、これを最初にAMラジオのモノラル放送で聴いた時には、一瞬にして魔界へブッ飛ばされたような衝撃がありました。

そして続くドロドロにヘヴィな演奏本篇には、当然ながら重心の低いドラムスとピンピンのエレキベースが入っているものの、その音の録り方が意図的に潰したような手法ですし、ジミヘンのギターも出たり引っ込んだり!?!

実は、これはモノラルミックスでの印象で、しかし例えば傑作アルバム「エレクトリック・レディランド」あたりに収録のステレオミックスになると、ギターは左右のスピーカーを自在に浮遊し、全篇に不可解な彩りを添えているチェンバロの響きが、尚更に強烈なスパイスになったサウンドを楽しめるのですが、やはり45回転のシングル盤に特有の音圧の高さがあってこそ、ここに表現された歌と演奏は真価を発揮しているように思います。

もちろん強引に被せられた女性(?)コーラスが、サイケデリック期には欠かせないミステリアスなムードを増幅していますし、幾分棄てばちな感性さえ漂うジミヘンのボーカルは、ギタリストとしての本分よりも私は好きです。

ちなみにイギリスで発売されたのは1967年の夏、録音は7月頃とされていますから、メンバーはジミヘン(vo,g,key) 以下、ノエル・レディング(b)、ミッチ・ミッチェル(ds,per) という黄金のエクスペリエンス! しかもセッションの直前には、あのモンタレー・ポップ・フェスティバルに登場し、世界中に大衝撃を与えていたという、非常にテンションの高い時期でした。

ただし当然ながら、ジミヘンがスタジオで作り出していた歌と演奏には、プロデューサーのチャス・チャンドラーや録音エンジニアのエディ・クレイマーの働きも無視出来ないものがあると思います。しかし、そんな諸々を遥かに凌駕したジミヘンの創造力の充実が、このシングル曲には感じ取れます。

そしてB面に収録された「賭博師サムのサイコロ / The Stars That Play Laughing Sam's Dice」が、これまた強烈! こちらはジミヘンだけの正統派ハードロックなんですが、A面の「真夜中のランプ」に比べて、ちょいとばかり隙間だらけの音作りが、逆に粗野な雰囲気でバンドの強靭なグルーヴを演出しているようです。

実際、最初は軽く飛ばしている感じが、中盤からは毒々しいものへと変化し、過激に唸るジミヘンのギターが興奮を煽ります。あぁ、ガンガンに突き進む、この勢いが最高ですねぇ~♪ 随所に挿入される効果音や擬音という作り物めいた詐術も、ここでは結果オーライでしょう。一般的なイメージのジミヘンは、むしろB面にあるといって過言ではありません。

ということで、例によってアルバムが買えない若き日のサイケおやじは、このシングルを買いました。時は昭和43(1968)年末、我国ではGSブームが爛熟し、同時に昭和歌謡曲の全盛時代でもありましたが、洋楽の世界は明らかに別の次元が広がりつつあったのです。

ただし、それを感じていながら、やはり古い体質の私は、そうした日本の大衆音楽とニューロックを当時並行的に楽しめたのでしょうし、周囲の音楽好き、つまりロックファンからは軽視されていた歌謡曲の対極にあるジミヘンの歌と演奏にシビれる自分に、ある種の自己矛盾さえ感じていたのも、また事実です。

まあ、そんなこんなが、若さの特権だったかもしれませんね……。

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