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保守系論客の歴史欺瞞・偽造を切る その2     千里眼

2006年10月05日 14時44分30秒 | Weblog
「日本にとってポスト冷戦は、中国などとの民族的・人種的抗争を意味し、その勝敗は経済成長の優劣と共に、歴史解釈権をどちらが握るかで決まる」

 これは江崎道朗氏が執筆した「富田宮内庁長官メモの政治的利用は許されない」(雑誌「正論」9月号)のなかの一節である。この文章の部分は、彼の頭のなかで描いた「中国を仮想敵国とするイリージョンの世界」のことではないかと思う。それぐらい中国に対する敵視感情がこの文章には流れているようだ。具体的に分析していく。

・「中国などとの民族的抗争」とは何を指すのか。
 質問すれば、尖閣列島をあげるであろう。領土問題を抱えている国は沢山ある。それを民族的抗争とは言わない。例えばソ連と中国のアムール河流域の大陳島の領有を巡る対立のように、武力衝突に至れば「抗争」と表現できます。が、尖閣列島の問題は 決して「抗争」ではない。意見の対立である。日本語を正確に使って欲しいと思う。
 さらに「靖国」問題を取り上げることでしょう。これとて「民族的抗争」ではない。江崎氏の主張に反対する者は、日本国民のなかに多数いる。「日本の歴史解釈権」という用語を使って、彼らの「靖国史観」を日本国民の歴史観として主張し、「民族的抗争」として位置づけていくことが、可能であろうか。
 何故「抗争」という語句を使ったのか。そこに、この筆者の狙いが示されています。はっきり言えば、反中国感情を養成するという。そのことは、後の文章にも如実に示されている。

・「中国などとの人種的抗争」とは何を意味するのか。
 何か学問的な用語をたくさん並べた方が読み手に高いレベルの論文だという印象を与えるだろうという、さもしい根性から並べただけの用語だと思う。中国との間に人種的抗争など、誰が考えてもそんなものは存在しないからである。ましてや、中国は他民族国家であり、中心民族の漢民族とて周辺民族の血を大量に受け入れて成立しているのだ。

・「日本にとってポスト冷戦は、中国などとの民族的・人種的抗争を意味し」
 これも意味不明な表現である。「ポスト冷戦」が主語で、「意味する」が述語である。この筆者は日本語をまともに書けないくせに、概念的な語句を羅列して飾りたてる癖があるようだ。「外交関係の面では」とか「重要な課題になっている」という表現ならまだ分かる(その内容を認めることはできないが)。「ポスト冷戦」後の日本の課題はとでも記述するべきであろう。「ポスト冷戦」と「民族的・人種的抗争」がイコールのように表現しているのだ。

・「その勝敗は経済成長の優劣‥‥で決まる」
 ここでいう「経済成長」とは何であろうか。普通には国民総生産をさすのであろうが。しかも、この成長で「民族的抗争」の勝敗が決まると彼は主張する。これも、質問しても筆者からは的確な回答は出てこないだろう。
 これも、文章に重みをつけるための修辞的用語であろう。軍事力の優劣という語句がないのが、わずかな救いになっている。

・「その勝敗は‥‥と共に、歴史解釈権をどちらが握るかで決まる」
 この筆者の言いたいことは、ただこの一点に尽きているのだ。あとは、修辞的な概念的な語句が、この文章の格付けのために使われているのに過ぎないのだ。だから内容不明でも構わないのだ。

・「抗争」と「勝敗」
 何故、この言葉を使用しなければならないのか。どう考えても中国を敵と認識していることから、書かれている語句としか思えない。民族的抗争・人類的抗争に勝つということは、何を具体的に指しているのであろうか。
 「歴史解釈権」論者はそれぞれの国が歴史解釈権をもっていると言う。勝利するということは、この場合その国の「歴史解釈権」を奪うということになる。その国の権利を奪うことに対する罪の意識の無い恐るべき本性を示している。それぞれの国が「歴史解釈権」持つことを主張しながら、それを否定するという自己矛盾にまったく気づかないという、意識のあり方を私は恐れる。

パターンNO.2 一部の意見を全体の意見とするレトリック 過大評価のレトリック
      彼らの見解を支持する人は日本人の一部であるのに、それをあたかも日本全体の見解のように、「日本の歴史解釈権」とし
      て取り上げる。
パターンNO.3 誇張のレトリック
      歴史解釈権をどちらが握るかで勝敗が決まる。このように、いかにも大袈裟に表現する。
パターンNO.4 学術的・概念的語句を羅列して飾り立てる
      修辞的に飾り立て、いかにも立派なレベルの高い文章のように見せかける。


コメント
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