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体制崩壊の引き金を引いた北朝鮮       千里眼

2006年10月11日 14時12分15秒 | Weblog
 北朝鮮は、強硬な姿勢をとり相手の妥協と援助を引き出すという瀬戸際外交手段をとり続けてきた。これは北朝鮮の常習的な外交手段であった。その北朝鮮にとって、この核爆弾の爆発実験は「最後の切札」と一般的に思われてきた。
 国連憲章第7章にもとづく制裁措置を含めた非難決議が採択され、様々な制裁措置が取られるでなか、北朝鮮の取るであろう政策はもはや一つしかない。再度、再々度の核実験実施の嚇しをかけながら、北朝鮮にとってアメリカとの直接交渉に持ち込み、有利な条件を引き出す道である。しかも、その嚇しのなかで武力衝突をも辞さないのだという態度を言外に匂わせながら、アメリカを含めた6カ国交渉の相手国に、迫ってくるのではなかろうか。

 ここで思い起こすのは、1968年のブエプロ号事件である。今年のNHKの特集番組(何月何日かは忘れたが)で、金日成が北朝鮮の指導者となり権力を掌握していった経過、親ソ派を政権から排除しソ連の統制を排除していった経過、およびそのなかで起こった諸事件を、公開されたソ連のかつての秘密文書を駆使しながら克明に描いた。これは見応えのある番組だったので、内容は詳細に覚えている。この番組のなかで、ブエプロ号事件についても触れていた。アメリカ海軍の情報収集船ブエプロ号を領海侵犯したとして、北朝鮮が拿捕し乗組員を逮捕した事件である。アメリカの謝罪と賠償を要求したが、当初アメリカはそれを拒否していた。この時、ソ連の秘密文書によると、北朝鮮はソ連に対し、対米戦争を決意していることを伝えソ連の援助を要求したということである。ソ連のブレジネフはひそかにアメリカにリークしたそうである。アメリカ大統領ニクソンは就任したばかりのなかでこの難問に取り組まざるをえなかった。ベトナム戦争継続中のアメリカは妥協する決意を固め北朝鮮に特使を派遣し、謝罪するとともに軽水炉型原発の建設援助を約束し乗組員の解放をさせたのであった。が、船体は今にいたるまで返還していない。(このアメリカの動きについては、NHKの特集番組は触れていないので、記憶に頼った内容である)

 この時の教訓を受け継ぐ形で強硬な態度を取れば相手国の妥協を引き出せる、という外交政策を一貫して取ってきた北朝鮮は、核実験後のシナリオを安易な形で描いているとしか思えない。今度は、核実験を続けるぞと脅しながら、核戦争の危険を言外にちらつかせれば、特にロシアと中国がアメリカを動かし、北朝鮮に有利な形での妥協を取れると踏んでいるのであろう。
 北朝鮮が核実験に踏み切った背景の中には、国内情勢も働いていたと私は思う。経済の破綻、それをさらに促す今年の大水害、さらに政権内部の経済開放を求める意見の高まり(あくまでも私の推定ではあるが)、こうした国内情勢の引き締めが必要であった。さらに、どうしても外国の食糧援助、経済援助をこれまでを上回る規模で引き出す必要に迫られていた。今回の核実験は北朝鮮の体制維持のための最後の賭けとしか思えない。友好国である中国とロシアに核実験実施の通告をわずか20分前にしているが、これでは最後通告に等しい。北朝鮮はもはや後戻りのではない危険な賭けに突入したのだ。
 国際情勢はブエプロ号事件の時と大きく異なる。中国はミサイル発射前の準備段階に特使を派遣して発射を止めようとしたが、無視して北朝鮮は発射した。もう北朝鮮は中国の意見・助言も拒否するようになっている。したがって、7月15日の北朝鮮ミサイル発射非難の国連決議に中国は賛成したのである。今回の核実験に対し、中国は「制裁は必要だ。しかし話し合いによる解決が重要」という態度を取っている。しかも北朝鮮との物流を制限する措置を取っているようだ。ロシアも「無条件に非難する。‥‥世界の大量破壊兵器の不拡散体制への打撃だ」と非難している。(これらの内容は中日新聞による)

 では、国連の国連憲章第7章の制裁決議はどのようになるのであろうか。第42条の「軍事的措置」はアメリカ自身も望んでいないだろうし、中国・ロシアは絶対に反対する。したがって第42条の「非軍事的措置」に留まることは明らかである。しかも話し合いの余地を残していたい中国とロシアは「北朝鮮船舶の臨検」などの厳しい措置には反対するであろうから、一定の経済封鎖と金融制限程度、援助の停止の措置に留まるであろう。
 
 国連憲章第7章にもとづく制裁措置のもとで、北朝鮮は再度・再々度の核実験を武器に、しかも核攻撃の威嚇を言外に匂わせながら、6カ国交渉の相手国、特にアメリカを嚇した最後の瀬戸際交渉に臨むであろう。この交渉でアメリカなどの妥協を引き出すことはできないのは、もはや明らかであると私は思う。
 そうなるともはや、戦争の道しか残されていないのではないのか。追い詰められた北朝鮮政権は何をするか分からない不気味さを持っている。日本の保守系論者が日本の侵略戦争を欧米の経済封鎖に対する自衛の戦争としているのと、同じ論理で「自衛の戦争」と称して戦争に踏み切る恐れは多分にあるのだ。

 非核三原則の立場に立つ日本にとって、本来なら世界平和・東アジアの平和のために指導的な役割を果たす絶好のチャンスなのだ。しかし、残念なことにアメリカの核の傘の下にいる日本はそのような指導力は発揮できない。残念なことである。
当面は、中国・ロシア・韓国・アメリカと危機感を共有して、日本としては緻密に互いの意見を調整して、北朝鮮を交渉の場に引き出し、粘り強く交渉する以外に道はない。

 私は、「禍を転じて福となす」ことは可能であると思っている。この機会に核兵器廃絶へ向けての大きな一歩を進めるチャンスにできないかと思っている。
 核兵器不拡散条約(NPT)は、インド・パキスタンの核実験があったものの、多くの日本人が知らない形で発展してきている。1991年には南アフリカが保有していた核兵器を廃絶して加入したし、1994年前後にベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンが核兵器をロシアに返して加入している。1995年にブラジル、1998年にアルゼンチンが加入している。
 このNPTとCTBT(包括的核実験禁止条約)を実効のある仕組みと内容を変革していくチュンスであると捉えたい。次のような政策提案をしたいものだ。
 ①すべての国の原子力の平和利用(原子力発電)の燃料としての濃縮ウラン、発電後の核廃棄物、それから抽出されたプルトニウムをすべて国際管理下に置き、必要に応じて査察する。
 ②未加盟国をすべて加盟させる。
 ③インド・パキスタンの加盟は可能である。廃棄させての加盟が困難ならば、規定を一部改正して、国際機関による核兵器の封印の上加盟させる。現に核兵器を保有するイスラエルの加盟は上の両国よりはるかに困難だが、この交渉を進めることで、イスラエルの核使用の手足を縛ることになろう。
 ④アメリカの小型戦術核兵器開発のための臨界前核実験を禁止する。
 ⑤核兵器を多量に保有している国々の核兵器削減のための新たな国際条約を結ぶ。
 ⑥リビアは核兵器の開発を断念したので、中近東ではイランが問題であるが、①~⑤の追求のなかで解決できる。

 北朝鮮の核実験をチャンスとして捉え、核の脅威を騒ぎ立て「日本の核武装化」を唱える議論が高まることは予測できる。最近チラホラとそうした論文が出てくるようになったが、つい先日、ついに、まとまった書物として中西輝政氏編「日本核武装の論点」がPHP研究所から刊行された。この書物の紹介は後日に譲るが、彼らはちょうど良い時期に北朝鮮の核実験があったと判断していることだろうと思う。


コメント (3)
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