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Nスペ、「湯浅誠100日間の闘い」  文科系

2010年03月01日 13時47分35秒 | Weblog
 昨夜のNHKスペシャルで、表題の追跡レポート番組があった。正式題名と番組の新聞キャッチコピーはこういうもの。
 「『権力の懐に飛び込んだ湯浅誠100日間の闘い』、貧困対策をめぐる激突 政官の内幕」
 ここに言う「100日間」とは、昨秋から年明けまで湯浅誠が内閣府参与に任命されて、いわゆるワンストップサービスを推進したその100日間のことである。この政策実施に向かって内閣の核弾頭になった彼は「政」と呼べるし、それに「抵抗した」官僚たちは「官」だから、確かに「貧困対策をめぐる激突 政官の内幕」ということになる。NHKが、この100日間の「激突」「内幕」を実録追跡していたというのが、僕にはちょっと驚きであった。以下はまず、こういう内容を要約して紹介したい。
 次いで、この経過に現れた問題点をまとめてみたい。その内容は、僕が恣意的に思いつくものではなく、NHK自身が「激突」を描いたその中心点になるはずだ。また、番組末尾の湯浅氏のある簡単な括りの感想を巡って、僕はいろんな事を考えさせられた。グローバリズムの弊害と闘う理論を巡る世界最先端のある議論に関わってくると感じ、考え込んでいたからだ。こうしてこの文章は、こんな順に進んでいく。1 「100日間の闘い」簡単な経過報告、2 そこに現れた諸問題、3 社会福祉の現代的根拠に関わる世界的な1つの論争点紹介。なお、この1~3は、2回の連載になるだろう。

1 「100日間の闘い」簡単な経過報告
①ワンストップサービス実施に向けてまず、関係中央省庁を招集した会議が開かれる。最初に紹介された1官僚の発言がこの番組を象徴するという予告のように読めて、興味深かったので紹介しておく。
『(湯浅さんは、ワンストップサービス実施の声かけを先ずやってくれと言われたが)場所が決まらないことには声かけはできませんよ』
 次の場面は、氏が政令指定都市担当者会議を開き、問題の「場所の提供」、実施を名乗り出てもらおうとするもの。その場面では、北九州市と名古屋市がこんな発言をしていた。『生保に市外、県外から人が殺到して、財政的にパンクします。求人は増えていないのですから、そうなるはずです』。
 そこでその後の湯浅氏は、過去に運動で知り合った自治体議員などを通じて、いくつかの自治体を拠点的に落としていこうと行動し始める。千葉県市川市を承諾させた上で、千葉市長に面談するという場面が写される。市長の言葉はこんな調子。「市川市が承諾したんですか! それは大きいことです。ならば、千葉市も検討しますが、隣の市原市にも電話して呼びかけてみます」。こうして、11月30日のワンストップサービスの初試行日には、215自治体が結集することになる。

②ところがこの試行日、開けてびっくりの応募者数、1自治体平均10人という惨状ではないか。重大問題点、壁はすぐに分かった。広報不足なのである。末端がやった「広報」は例によって役所に紙を貼ったり、チラシを置いておくだけ。それも全国一斉に。次の行動は、この「壁」に迫っていくことになる。
「役所に来るワンストップにひっかかる人全員に、チラシの手渡しぐらいして下さいよ」
 こう申し入れている湯浅氏が映し出される。それへの返事は一応あったのだがさて、12月中旬の試行第2日目。ここでも、チラシ事前手渡しの形跡はない。その原因、「壁」に関わる場面が次のものらしい。厚労省参事官との面談であって「チラシ手渡しのような広報はさせていません」と述べていたようだ。官僚による内閣府へのサボタージュのようにも見えるし、一般のサービス業などとは違って行政的権利は自主申請に基づくものなのだし、などと僕は考えていたが、どうだろうか。

③さて、以上の経過からワンストップ広報も一定広がったらしく、この次に映し出された場面が、例の年末年始無料宿泊所のこと、およびこれとワンストップサービスの結合とである。
 初めに、青少年オリンピックセンターを東京都としての会場にするための文科省との交渉場面が映る。「食事作りの問題、休暇で職員が居ないから暖房ができないという問題」をあげての拒否を乗り越えると、次には「人数制限」が持ち出されて来る。「公表を遅らせてください。マスコミ掲載も困ります」と述べている当局者が写される。殺到され収拾がつかなくなるのを恐れているらしいが、これも分からないことではない。がこんな広報では案の定、12月25日現在の申込者は75人と極少。そこで湯浅氏が抜いた伝家の宝刀が、自分の上司・鳩山首相のネット・メッセージ。直接願い出て実現したらしいこれへのアクセスは実に2万件。これを経て、28日には入所者300人に。

④さて、最後の問題が、この宿泊所の人々へのワンストップサービス相談実施の壁。ここでもその施策の宣伝、具体的には「館内放送」をやるかどうかの攻防が焦点になっていた。ただこういう攻防、いつも究極の相手、「壁」が誰なのかが判じ難くなっているらしい。皆が協力してうやむやにしているように見える。先ず施設の運営者・厚労省はできなかったらしい。施設管理者ではないとでも述べたのだろう。そこで文科省と交渉。この文科省も断り、その理由を問い、探っていくとどうも東京都の差し金と分かってきたらしい。これは僕の推測だが、都が広報自粛を内々に関係者に念押ししたのではないか。数百人の宿泊者への生保適用などを恐れるという①②と同じ理由によって。がともかくも、12月29日には初めて、ワンストップサービスへの呼びかけが館内放送で流されることになる。
 次には、宿泊者へのワンストップ相談が「相手への提案がなく、ただ調査だけになっている」という問題が起こる。因みに、このころには無料宿泊所の定員も500人から800人に増やすことができていたという。凄い数だ。開けて1月3日、「調査でなく、できるだけ提案になるように」という再相談の努力が都職員総出で夜を徹して行われることになったという。4日が宿泊所の終了日だったからである。
 なお、東京都はこれ以降単独でこの全てを2週間延長したとのこと。宿泊所も別に用意したし、生活相談なども希望者全員に行ったということである。

 さて、この湯浅氏、1月に任務を一段落させて間もなく、内閣参与辞任を総理、副総理に申し出た。菅直人氏がこれを保留にしたし、山井厚労省政務官が頭を下げて継続を申し入れている場面も写し出された。
「この年末年始をここまでやれたのは、湯浅さんのおかげですから、是非継続してください。お願いします」
 対する湯浅氏は今なおこれを保留のままにしているという。その心は、二度ほど語られたこういう発言にあるようだ。
『世論が変わらないと無理なんですね。今までも社会運動としてやってきたし』
『皆さんやる気がないとか、悪意があるとかでは多分ない。それぞれ一生懸命なのだが、縮こまっていて出来ないようだ。利害関係もあるし、いろんな意見もあり、公平性をどう担保するかという問題もある。世論が固まってこないと、これ以上は無理だと思う』

(次回に続く)
コメント (3)
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