辺野古工事強行でも読売は政権寄りの主張。朝日・毎日・中日は「地元と話し合え」
メルケル独首相の忠告を報道せずに続いて
一昨日<ものみやぐら>に、メルケル独首相が歴史認識と脱原発問題で安倍首相にアドバイスしたことを紹介し、読売新聞だけがこの問題を報道せず、政権寄りの姿勢が際立っていると書きましたが、政府の沖縄・辺野古基地拡張工事の強引な進め方についても読売新聞は13日の社説で「移設を進めたい」と政権寄りの主張をしています。
選挙で沖縄の民意は明らか
辺野古基地拡張(米軍普天間基地から辺野古基地へ移設)については、仲井真前知事が知事選での公約を破って基地拡張のための埋め立てを承認しましたが、昨年11月の沖縄知事選では基地の県外移設を訴えた前那覇市長の翁長雄志氏が仲井真前知事を抑えて当選しています。
さらに先の衆議院選挙では、沖縄の四つの選挙区とも保守・革新が一体となって普天間基地の県外移設を要求する「オ-ル沖縄」の候補が当選し、自民党候補は全滅、沖縄の人たちの「沖縄から基地を減らせ」の要求が堅いことが確認されました。
強引な安倍政権の手法
しかし安倍政権は今年1月半ばから基地拡張予定地の海底の地盤を確かめるボーリング工事に取り掛かり、その準備のために多数のコンクリートブロックが海中に沈められました。その一部は仲井真知事が許可した水域をはみ出してコインクリートブロックが投入され、海底のサンゴが死滅させられていることが沖縄県の調査でわかりました。しかし12日には最初の杭が海底に打ち込まれました。
政府は仲井真前知事が工事のための調査を政府に許可したことなどを工事再開の論拠にしていますが、知事選や衆議院選の結果から沖縄県民の意志は辺野古基地拡張に反対であることは明らかで、米軍辺野古基地ゲート前では連日基地拡張・そのための調査反対の座り込み闘争が続いています。
しかし安倍首相や沖縄問題担当の菅官房長官は翁長知事が当選後何回も東京を訪ね、首相や官房長官との面会を求めましたが全て拒絶し、“沖縄の心”を聞こうともしません。
政府の態度を批判した新聞各紙
このような政府の態度に対して朝日・毎日・中日の各紙は14日の社説で政府の強引な態度を批判する社説を掲げました。
朝日新聞は「作業を止めて対話せよ」で、「翁長知事は前知事の埋め立て承認を検証する第三者委員会の審査が終わるまで、作業を中止するよう政府に求めている。ここは政府が提案を受け入れて作業を中止し、県との対話による関係修復に乗り出すべきだ。政府も米軍も、長年重い基地負担に苦しむ沖縄県民の心をこれ以上傷つけてはならない。民意を重く受け止められない政府の存在は、国民全体にとっても不幸だ。」と述べています。
毎日新聞は「首相側から呼びかけを」で、「政府と地方自治体が対立し、安倍首相が知事に会おうとしないのは異常な事態だ。政府は、沖縄を冷遇すれば翁長県政は行き詰まり、知事は譲歩すると、と見ているのかもしれないが、果たしてそうだろうか。『課題があるからこそ対話すべきだ。私の対話のドアは常にオープンだ』。安倍首相は中国や韓国との首脳会談が開けない状況についてこう繰り返し対話を呼びかけてきた。意見の違いがあるからこそ話し合うべきなのは、自治体との関係でも変わらない政治の基本姿勢ではないか。首相はまず翁長知事に話し合いを呼びかけることからはじめるべきだ。」と首相に注文しました。
中日新聞は「民意となぜ向き合わぬ」で、「選挙で重ねて明らかになった民意を顧みずして、法治国家だと胸を張って言えるのだろうか。在日米軍基地の負担は日本国民が可能な限り等しく分かち合うのが筋だ。沖縄県に約74%が集中する現状は異常であり、普天間返還のためとはいえ、米軍基地を県内で“たらい回し”しては、県民の負担軽減にはなるまい。民意と向き合わず、作業を強行すれば、辺野古への『移設』が完了しても、反基地感情に囲まれることになる。安倍内閣はいったん作業の手を止めて、今こそ沖縄県民と真摯に向き合うべきである。」と政府の態度を厳しく批判しました。
読売は逆に翁長知事に注文
ところが読売新聞13日の社説は、「辺野古調査再開 理解得ながら移設を進めたい」で、「中国の海洋進出などで、在沖縄米軍の重要性は増している。基地負担の軽減と米軍の抑止力維持を両立する観点で、辺野古移設は最も現実的な近道である。県は仲井真前知事が政府の埋立て申請を承認した過程を検証する第三者委員会を設置した。検証終了まで調査中止を防衛省に要請したが、要請に法的根拠はなく、無理がある。翁長知事には、辺野古移設を阻止するとの公約を掲げた以上、様々な手段で代替施設の建設を妨害せざるを得ない事情があろう。しかし法律に基く適正な工事を覆すことは許されない。工事が遅れれば、普天間飛行場の危険な現状がそれだけ長く続く。政府と歩み寄り、接点を探る選択肢はないのか。翁長知事は冷静に考えてもらいたい。」と翁長知事に注文しています。
これでは政府の言い分です。しかも「政府と歩み寄り、接点を探せ」と言っていますが、話し合いを拒否しているのは政府の方で、政府の方針に従えと強制しているのです。
脱原発の問題でもそうですが、読売新聞の論調は政府の方針を援護するものになっているのが目立ちます。安倍首相が設置した70年首相談話についての有識者(?)懇談会のメンバー16人の中に読売新聞からも1人(飯塚恵子アメリカ総局長)送り込んでいます。本来外にいて首相談話を検証するのがマスコミの役割だと思いますが、読売新聞の権力との距離が気になります。
※なお、日経新聞と産経新聞は「ボーリング調査」について触れた社説はありませんでした。
メルケル独首相の忠告を報道せずに続いて
一昨日<ものみやぐら>に、メルケル独首相が歴史認識と脱原発問題で安倍首相にアドバイスしたことを紹介し、読売新聞だけがこの問題を報道せず、政権寄りの姿勢が際立っていると書きましたが、政府の沖縄・辺野古基地拡張工事の強引な進め方についても読売新聞は13日の社説で「移設を進めたい」と政権寄りの主張をしています。
選挙で沖縄の民意は明らか
辺野古基地拡張(米軍普天間基地から辺野古基地へ移設)については、仲井真前知事が知事選での公約を破って基地拡張のための埋め立てを承認しましたが、昨年11月の沖縄知事選では基地の県外移設を訴えた前那覇市長の翁長雄志氏が仲井真前知事を抑えて当選しています。
さらに先の衆議院選挙では、沖縄の四つの選挙区とも保守・革新が一体となって普天間基地の県外移設を要求する「オ-ル沖縄」の候補が当選し、自民党候補は全滅、沖縄の人たちの「沖縄から基地を減らせ」の要求が堅いことが確認されました。
強引な安倍政権の手法
しかし安倍政権は今年1月半ばから基地拡張予定地の海底の地盤を確かめるボーリング工事に取り掛かり、その準備のために多数のコンクリートブロックが海中に沈められました。その一部は仲井真知事が許可した水域をはみ出してコインクリートブロックが投入され、海底のサンゴが死滅させられていることが沖縄県の調査でわかりました。しかし12日には最初の杭が海底に打ち込まれました。
政府は仲井真前知事が工事のための調査を政府に許可したことなどを工事再開の論拠にしていますが、知事選や衆議院選の結果から沖縄県民の意志は辺野古基地拡張に反対であることは明らかで、米軍辺野古基地ゲート前では連日基地拡張・そのための調査反対の座り込み闘争が続いています。
しかし安倍首相や沖縄問題担当の菅官房長官は翁長知事が当選後何回も東京を訪ね、首相や官房長官との面会を求めましたが全て拒絶し、“沖縄の心”を聞こうともしません。
政府の態度を批判した新聞各紙
このような政府の態度に対して朝日・毎日・中日の各紙は14日の社説で政府の強引な態度を批判する社説を掲げました。
朝日新聞は「作業を止めて対話せよ」で、「翁長知事は前知事の埋め立て承認を検証する第三者委員会の審査が終わるまで、作業を中止するよう政府に求めている。ここは政府が提案を受け入れて作業を中止し、県との対話による関係修復に乗り出すべきだ。政府も米軍も、長年重い基地負担に苦しむ沖縄県民の心をこれ以上傷つけてはならない。民意を重く受け止められない政府の存在は、国民全体にとっても不幸だ。」と述べています。
毎日新聞は「首相側から呼びかけを」で、「政府と地方自治体が対立し、安倍首相が知事に会おうとしないのは異常な事態だ。政府は、沖縄を冷遇すれば翁長県政は行き詰まり、知事は譲歩すると、と見ているのかもしれないが、果たしてそうだろうか。『課題があるからこそ対話すべきだ。私の対話のドアは常にオープンだ』。安倍首相は中国や韓国との首脳会談が開けない状況についてこう繰り返し対話を呼びかけてきた。意見の違いがあるからこそ話し合うべきなのは、自治体との関係でも変わらない政治の基本姿勢ではないか。首相はまず翁長知事に話し合いを呼びかけることからはじめるべきだ。」と首相に注文しました。
中日新聞は「民意となぜ向き合わぬ」で、「選挙で重ねて明らかになった民意を顧みずして、法治国家だと胸を張って言えるのだろうか。在日米軍基地の負担は日本国民が可能な限り等しく分かち合うのが筋だ。沖縄県に約74%が集中する現状は異常であり、普天間返還のためとはいえ、米軍基地を県内で“たらい回し”しては、県民の負担軽減にはなるまい。民意と向き合わず、作業を強行すれば、辺野古への『移設』が完了しても、反基地感情に囲まれることになる。安倍内閣はいったん作業の手を止めて、今こそ沖縄県民と真摯に向き合うべきである。」と政府の態度を厳しく批判しました。
読売は逆に翁長知事に注文
ところが読売新聞13日の社説は、「辺野古調査再開 理解得ながら移設を進めたい」で、「中国の海洋進出などで、在沖縄米軍の重要性は増している。基地負担の軽減と米軍の抑止力維持を両立する観点で、辺野古移設は最も現実的な近道である。県は仲井真前知事が政府の埋立て申請を承認した過程を検証する第三者委員会を設置した。検証終了まで調査中止を防衛省に要請したが、要請に法的根拠はなく、無理がある。翁長知事には、辺野古移設を阻止するとの公約を掲げた以上、様々な手段で代替施設の建設を妨害せざるを得ない事情があろう。しかし法律に基く適正な工事を覆すことは許されない。工事が遅れれば、普天間飛行場の危険な現状がそれだけ長く続く。政府と歩み寄り、接点を探る選択肢はないのか。翁長知事は冷静に考えてもらいたい。」と翁長知事に注文しています。
これでは政府の言い分です。しかも「政府と歩み寄り、接点を探せ」と言っていますが、話し合いを拒否しているのは政府の方で、政府の方針に従えと強制しているのです。
脱原発の問題でもそうですが、読売新聞の論調は政府の方針を援護するものになっているのが目立ちます。安倍首相が設置した70年首相談話についての有識者(?)懇談会のメンバー16人の中に読売新聞からも1人(飯塚恵子アメリカ総局長)送り込んでいます。本来外にいて首相談話を検証するのがマスコミの役割だと思いますが、読売新聞の権力との距離が気になります。
※なお、日経新聞と産経新聞は「ボーリング調査」について触れた社説はありませんでした。