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随筆紹介  「折り合う」    文科系

2016年01月12日 19時06分56秒 | 文芸作品
 折り合う   M・Aさんの作品です

 母が亡くなったのは、やっとなんとか六十六歳の誕生日を迎えたひと月後の十一月二十五日だった。それは父の誕生日でもあった。
 私がその年齢になったせいか、最近は母がよく言っていたことを思い出す。そのときはなんとなく聞いていたのだが、今その言葉の意味や感慨が分かるようになり、なるほどと思えるようになってきた。
 例えば、世の中のことは(自分の)思うようにはいかないものだね」と自分に言い聞かせるようにつぶやくのだった。私に同意を求めるというより、そういうものだと母なりの思いを伝えたかったのか……。
 今私にはそのことがいやというほど強く思われるようになった。頼りにしていた母も亡くなって二十三回忌も過ぎ、父は認知症で施設にお世話になっている。いい歳をして、今さらあれこれと私に指導してくれる人を求めているわけではないが、恩師を失い、周囲の友人や知人も亡くなっていくと、子どものようにどうしたらよいのやら、途方にくれるときがある。
 いろんな趣味の会に参加して忙しくしているものだから、目下のところは必要に迫られて充実しているかのように思えることもある。だが、時折「どうして?」と愚痴がでることが多くなった。十五年続くある会でバス旅行を毎年企画してきたが、この会では土壇場でキャンセルする人が多い。すると、参加者が少ない場合には赤字になる。企画そのものを見直す必要があるのだが、企画運営する人数が多くなるほど調整が難しくなる。
 趣味の会であるし、急に取りやめる理由も様々と思うが、主催者側となると困ることがある。なかには、決めたことをわりと安易に取り消す人がいる。私の違和感はそこであり、自身決めたことはまず土壇場では変えない主義で、たとえ体調不良でも出席する。仕事はもちろん、約束したら守る。実際にそういう人が多かったと思う。
 元来短気でせっかちな私は早く結論を出すし、他人にもそれを要求するから、しない人を不満に思うのかもしれない。相手が答えを出すのにもう少し待てないのか、余裕がなさすぎるのかも。なかには遠慮してすぐには否とは言えないこともあるのは分かる。今回私も知人からあまり気乗りしないチケットをもらって行ったが、負担になるようならやはり先に断る勇気が必要だと思った。
 ともあれ、自分に余裕がないと人とは折り合えない。意見や思いが合わないときは、違いを認め、諦めることが大切なのかもしれない。「諦めが肝心」とも言っていた母もまた、あれこれと思うことが多かったのだろう。「諦め」とは仕切り直し、自分の意識を変えるところから始まるのか……。これもまた難しいところだ。

コメント (3)
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