外地転属
特別休養室を退出して内務班に帰ってみると、
ほとんどの初年兵は転属のため中隊から姿を消していた。
残る内務班は 幹候志願者の二つの班だけであった。
いつの間にか一期検閲合格者となっていた。
軍隊用語で休養室を出てきた兵隊は入室下番と呼ばれている。
部隊は外地転属の準備で大騒ぎであった。
夕方の点呼の時内務班長が全員手を前に出せと検査が始まった。
凍傷の検査かと思ったが、入室下番の私は凍傷もひび割れはなく
綺麗な手であった。
班長はいきなり「よし、荷物をまとめよ」
すぐ私を中隊から連れだした。
転属部隊の宿舎に連れ込まれ、始めて会った班長から
「転属の兵隊に急病人がでた。お前はその代わりになった」
用意してあった転属用の装具一式が渡された。
装具には「粟野」という名前がすべてに入れられていた。
翌日、先遣隊として出発を命令された。
入室下番は一番元気が良いと思われたのであろうか、
直属の中隊長も班長も知らないうちに、部隊を出発汽車に乗せられた。
将校を責任者として十名ぐらいの先遣隊。
汽車に乗ってから、下士官から下関港から荷物を船に乗せる先遣隊であること、
そしてこの部隊がこれからどこに行くのか、
転属先の隊長の名前が田中中尉であるとわかった。
この先遣隊は下関港で機材その他部隊の梱包された荷物を
連絡船に乗せて釜山で本隊と合流するという。
下関の宿屋に泊まり、日本の布団ともこれでお別れと
手足を伸ばしてゆっくりと寝た。
当時の関釜蓮絡船は、玄海灘でいつアメリカ潜水艦の攻撃を受けるか
知れず何隻も撃沈されている。
救命具を着けて甲板で待機の旅となった。
つづく
特別休養室を退出して内務班に帰ってみると、
ほとんどの初年兵は転属のため中隊から姿を消していた。
残る内務班は 幹候志願者の二つの班だけであった。
いつの間にか一期検閲合格者となっていた。
軍隊用語で休養室を出てきた兵隊は入室下番と呼ばれている。
部隊は外地転属の準備で大騒ぎであった。
夕方の点呼の時内務班長が全員手を前に出せと検査が始まった。
凍傷の検査かと思ったが、入室下番の私は凍傷もひび割れはなく
綺麗な手であった。
班長はいきなり「よし、荷物をまとめよ」
すぐ私を中隊から連れだした。
転属部隊の宿舎に連れ込まれ、始めて会った班長から
「転属の兵隊に急病人がでた。お前はその代わりになった」
用意してあった転属用の装具一式が渡された。
装具には「粟野」という名前がすべてに入れられていた。
翌日、先遣隊として出発を命令された。
入室下番は一番元気が良いと思われたのであろうか、
直属の中隊長も班長も知らないうちに、部隊を出発汽車に乗せられた。
将校を責任者として十名ぐらいの先遣隊。
汽車に乗ってから、下士官から下関港から荷物を船に乗せる先遣隊であること、
そしてこの部隊がこれからどこに行くのか、
転属先の隊長の名前が田中中尉であるとわかった。
この先遣隊は下関港で機材その他部隊の梱包された荷物を
連絡船に乗せて釜山で本隊と合流するという。
下関の宿屋に泊まり、日本の布団ともこれでお別れと
手足を伸ばしてゆっくりと寝た。
当時の関釜蓮絡船は、玄海灘でいつアメリカ潜水艦の攻撃を受けるか
知れず何隻も撃沈されている。
救命具を着けて甲板で待機の旅となった。
つづく