ここで初めの08年から何度か述べてきたが、グランパス・ピクシー監督は能力不足だと思う。百歩譲っても、監督就任が早すぎて修行不足だった事がはっきりしてしまった。彼自身のためにもとても残念なことである。グランパスの華、せっかくの歴史的人材に取り返しのつかぬ傷を負わせたフロント陣も万死に値する。この監督、そもそも以下に見るように金が使えたこのチ-ムで優勝するのに3年かかったのだし、一昨年度優勝以降も2位と7位。激動のJに進化・適応できていないことが白日の下にさらされたと言える。これに対して、本当の名監督とはグァルディオラやモウリーニョ、広島の森保一のようにすぐに頭角を現すもの。また、ピクシーには、仙台の手倉森誠のような「力を蓄積していく能力」もないようだ。彼が選手をとっかえひっかえした資金を使えば、セレッソをいったん辞めたクルピなどすぐに雇えたはずである。香川、清武、乾を育てたクルピなら、ピクシーよりも遙かに魅力的だ。
これだけの実力しかないのに、アジアチャンピオンズリーグをいつも狙い続けていた。これは身の程知らずとも言えて、望みだけ高い劣等生監督と大して変わりがないとさえ今は告発したい気分である。何にせよ、今年のJリーグを甘く見ていたことは確かだろう。
さて、彼がどれくらい能力不足だったか。採った有名選手、育てられずに逃がした人材の名前を挙げてみれば分かる。最初の08年に採ったのは、バヤリッツァにマギヌン。次が、田中隼磨にダヴィと、ケネディにサントスだ。優勝した10年が、闘莉王、金崎、ダニルソンで、去年は藤本。すべて他チームにとっては垂涎の選手たちだ。そして、この間中そもそも、新人採用選手でレギュラーになった人が思い出せるか!? そこが僕はずーっと最も気にくわない。逃がした人材の一例を挙げてみよう。大躍進した鳥栖の顔にして、今年度あわやJ1得点王という豊田陽平である。しかもこの豊田は、ピクシーが入った08年には山形へ出張中だったとはいえ北京五輪3ゲーム総てに出場していたのである。
さて、今年の致命的失敗の原因にこそ、彼の思考の安易さが最もはっきり現れている。彼は敗因をこう語った。「けが人が多くて。特にケネディの欠場が痛かった」。こんなことは素人の僕でも分かり切っていたのであって、何の言い訳にもならない。「ケネディ頼み戦略が心配だ」とは、僕もここに何度か書いてきたことだ。ヨンセンとかケネディとか、背の高いターゲットがいなければ得点激減の組織なんて、脆い事甚だしいはず。このケネディ欠場をこともあろうにトゥーリオを上げて補うなどは、なんという愚策か。選手の士気をどれだけ低めてしまったことだろう。本職のFWは腹も立っただろうし、闘莉王を柱としていたDF陣は失点を重ねることになった。かくて挙げ句の果てが、失点が11位、得点は12位なのである。これでよく7位になれたものだ。
このように外国人に金を使えたグランパスの財政を持ってすれば彼よりも良い監督がいくらでも採れるはずで、そのために必要なのは人材を観るフロントの目だけであると言いたい。来てくれるかどうかは別にして、彼より有能と思われる監督が日本に多数いるのもまた明白な事実である。日本人なら仙台の手倉森とか、広島の森保。甲府の城福でさえピクシーよりは上だと思う。なんせ城福は、ピクシーが使いこなせなかったダヴィを「チーム戦略のなかで」見事に使いこなしたのである。外国人なら、浦和のペトロビッチ、セレッソのクルピ。元グラ監督でリニューアルした柏のネルシーニョもいる。この外国人監督たちがピクシーより何倍も良い点は、いずれも与えられた日本人人材をどんどん育て、活用してくれるところである。そこがピクシーとは全く違うのだ。
ピクシーはさっさと替えたがよい。