九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

日本史・世界史から、平和への教訓   文科系

2019年09月09日 14時52分59秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 現実と望みと
 
人間の思考には常に二つの要素というか、重要側面というかがある。よく使われてきた言葉で言えば、「理想や望み」と現実と言っても良いし、高踏的な旧制高校生などではドイツ語を使って「ゾルレンとザイン」などと議論しあっていた。
 子どもに近いほど(親に充たして貰うごく身近な)望み、欲求だけ、それがそのまま現実なのだし、大人になるに従って「自分にはこの望みは虚しいもの」という経験を重ねるたびに、現実というものを知らされていく。ここからつまり、現実だけの人間や人生と、夢見がちな人とが生まれ、どんな人も年を取るほどに前者に傾いていくもの。後者は若者か、でなければ学者などに多い。
 政治の論議なども同じことで、現実だけの議論と夢見がちな議論とに分けて考えてみると、少し視野が広がるという意味で、大変興味深いものだ。保守と革新とか、コンサバ(保守派)とリベラル(自由派)とかの区別も、こういう人間思考の違いから生み出されてくると言える。アメリカ政治論壇のこの点について、白井聡が面白いことを言っているので書いてみよう。
『(クリス・)ヘッジスにおいては、リベラルの反対概念は何かというと、コンサバではなくて、ラディカルズなのです。いわく、ラディカルズを、リベラルが牛耳るアメリカのメディアもアカデミズムも許容してこなかった』(詩想社『「日米基軸」幻想』)


 平和を巡る世界史的現実

 さて、世界と日本との平和について、上のような人間思考から見た歴史現実の論議をしてみると、視野と思考とを広げ、深めることができる。
 帝国主義時代以降この両方の平和が不可分になった。のみならず、20世紀世界史には、人類世界の平和に関わってかってないことが起こっている。飛行機・ロケット、(原子力)空母、核兵器などなどから「世界が一つの戦場」のようになってきたのだし、だからこそ「人類平和を巡る世界組織」が生まれたと言える。最初は国際連盟、次いで国際連合。今や、ここを重視して、人類史上初めて世界平和が現実的課題になってきたと言える。以下最後まで、その事を書いてみるが、その本論の前に一言。
 こういう世界平和議論自身に対するに、今世界に流行している単なる愛国主義回帰、いわゆる右翼ポピュリズムは、国連を無視する単独主義行動・アメリカがほぼ意識して世界に創り、ばらまいた傾向、思考と言える。イギリスや東欧諸国などヨーロッパ諸国のそれは、アメリカが中東で作った難民の流入を抜きには語れない。南米の右翼ポピュリズムも、アメリカの歴史的工作が作ってきたものだと言える。

 平和には「そういう人間組織」が不可欠
 
 日本と日本人とは、「徳川300年の平和」をよーく知っている。群雄割拠で長く続いた戦国時代(という国民の不幸)を終わらせて、鎖国も関係していようが国内の需給好循環経済を栄えさせ、西欧以外では唯一、明治維新後近代化の基礎を作ったその平和である。日本人が1日3食になったのは元禄時代だし、この頃の江戸や大坂は、世界有数の文化をも誇る大都市であった。

 他方、最近の世界的ベストセラー「サピエンス全史」には、これと同様のこんな世界史知見が溢れている。
 部族社会では、部族外の人間は総て「敵」、もっと言えば単なる「動物」。ここに、当時主流であった宗教的思考、対立を関与させれば、魔物とさえ見られていただろう。どんな動物よりも大変な悪さを働く動物だったのだから。
 統一国家ができて初めて、その範囲の国民が「対等」に。次いで、近代統一国家が生まれた時、そういう国の基礎として「基本的人権」が据えられるようになった。第二次大戦後にはとうとう、その国家も、世界庶民つまり人類も、初めて名目権利上は対等になった。
 20世紀後半に植民地が否定され、人種の平等が進んだのも、こういう国際民主主義への世界史的流れの一環と言える。第一次大戦後の国際連盟、二次大戦後の国際連合が、世界史上初めて生まれたそういう「望み」を持った人類平和組織である。

 今アメリカがやっていること

 1990年の冷戦終結後新たに、国連に対するように、というよりもこれを無視するようなアメリカだけの単独主義行動が台頭しているが、そのアメリカこそが先頭に立って国連総会決議に従って行動するならば、今はもう地上から戦争は終わるようになっていくはずだ。「大量破壊兵器」という嘘の理由で、国連の制止を振り切っておこなったイラク戦争。さらに今年になっては、このイラク戦争と同じように、イラン戦争有志国を募っている真っ最中だ。本来こんな「制裁」は国連決議によってしかできないはずなのだから、これも完全な国連無視行動とか、自分を国連に替える非合法の暴力にすぎないと見て良い。

 日本の右翼ポピュリズムも

 日米の右ポピュリズムも国連を全く語らないという共通性を持つと、このブログ投稿などで初めて知った時、僕は驚いた。以上のような20世紀の世界平和両組織を全く無視して国際政治を論じているのである。これを簡単に言えば、世界近代史の国際民主主義(組織)の発展を無視する主張、所業と言えるだろう。
 ちなみに、ネトウヨ諸君の太平洋戦争論は、その前の対中国戦争、その前哨戦・満州事変は全く無関係に論じられている。満州事変で当時の国際連盟を抜けた日本は、すでに戦争犯罪、対英米戦争の確信犯になっていたといえるのに。ちなみに、日本の第一仮想敵国は1929年だったかのとっくの昔に、アメリカになっていたのである。こういう日本の流れは、こんな事をこそ示していないか。国連を無視し始める国は、戦争を始める国であり、「戦争は人間の現実」という思想をばらまく国でもある。

 今の世界では、アメリカが何故国連無視を続けるのかを考えてみることこそ、世界庶民の明日の暮らしにとっても最重要なことの一つだと言いたい。


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何度でも、大田光と安倍晋三の珍対談   文科系

2019年09月09日 14時15分23秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 あれあれ、安倍首相がこんな事を叫んでいる。日本国憲法前文の「日本国民は・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、(われらの安全と生存を保持しようと決意した)」を読み上げてこう非難して見せた。「他力本願ですよ。ベトナム戦争、イラク戦争など戦争はいっぱい起こっているのに・・・」。ふと開いたネット記事からの、爆笑問題の二人、特に太田君と安倍首相との質疑応答だ。ここから、こんな討論が始まっていく。

安倍「イラク戦争は、日本は支持した。その判断自身は間違っていなかった」
太田「アメリカは、間違っていたと言っていますよ」

安倍「大量破壊兵器があるというその情報は間違っていたけど、戦争判断自身は間違っていなかった」
太田「間違った情報による判断が正しい? 人がボコボコ死んだんですよ!」
安倍「そりゃ非常に残念ですが・・・」
太田「残念? 間違った情報でボコボコ殺されたんですよ!」
安倍「いや、大量破壊兵器がもしあったら・・・」
太田「なかったんですよ。可能性で戦争してもいーんですか」
安倍「そりゃそうですよ」
太田「あいつ人相危ないからで、殺してもいーんですか?」
安倍「そりゃ、苦しい判断がありますよ」
太田「苦しいのは死ぬ方ですよ」

 どうだろう、どっちが良識的な会話をしているか?「間違った情報で人がぼこぼこ殺された戦争をするという判断も、それを支持した日本も、間違っていなかった」等と、口を滑らせて言い切ってしまったのが不用意に過ぎたということだろう。普通は、こんなおかしな論理は実際にそう思っていても口には出さないものだ。それをあっさりと言い切ってしまったところに、しかも、国会と違って事前質問通告も答弁補助者もなくって一対一を逃げられない生放送場面でこんなことをしたその態度に、彼の思考力の危うさが現れている。そこをつかれて思わず「そりゃそうですよ!」という、意味のないイラク戦争肯定論を叫び続けた、この醜態! 同時に、この首相が、不用意とも思わず日頃をこんなふうに過ごしてきたお人だとも、端無くも示してしまった。これは、日頃イエスマンばかりに囲まれてきた証拠にもなる。

 大変情けない首相を頂いたものである。また、憲法前文への「他力本願」批判も、その根拠が社会ダーウィニズム丸出しの「戦争は現実」論だけなのだとあっては、俗っぽすぎて人間らしい政治理念が毫も感じられないものだ。「戦争はない方がよい」と口では言いながら、「戦争現実論」の例として彼があげたのがベトナムとイラクとあってはいずれもアメリカの戦争であって、そのアメリカをぴったりと支えてきた彼だからこその「戦争現実」は、自らも造り出して来たもの。
 こうして、日本の首相という世界有数の影響力を活用してこういう現実世界をもたらしているその人が、そういう自覚も皆無だと示しているわけだ。つまり、全く無自覚なのだが、「残念」「ない方がよい」も嘘になってしまっている。
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日本サッカー史に燦然、長谷部誠の金字塔  文科系

2019年09月07日 13時08分39秒 | スポーツ
 長谷部誠が、日本サッカー史上に燦然と輝く3本の指に入るのは間違いなしの選手ということを書いてみたい。おそらく中田英寿と同じほどの実績だが、これが29歳で引退したヒデよりもずっと長く続いているという意味では、さらに偉大とも言える。
 マスコミも、こういう記事をどんどん書いてほしい。新人のニュースとか、「犬が人を噛むよりも、人が犬を噛む方がニュースになる」流儀ではなく。

①何よりもこれ。南ア、ブラジル、ロシアと、W杯3大会の連続キャプテン、中心選手。これは奇しくも、フランス、日韓、ドイツと3大会中心選手であったヒデのあとをそのまま継いだ形になっている。

②ドイツの実績がまた、当時世界で突出していたイタリアでヒデが挙げたそれに匹敵する。渡独後2年目に、リーグ優勝と同時にキッカー誌ベストイレブン。35歳の今年も、チーム防御の中心選手として『kicker』誌選出のベスト11。また今年は、ベスト4に入った欧州リーグ杯の戦いにおいて、欧州サッカー連盟(UEFA)が選ぶヨーロッパリーグ(EL)の優秀選手にも選出されている。

③また、35歳になった今もドイツの名門フランクフルトのフィールド上の監督といわれるほどの役割を果たしている選手であり続けている。攻撃的中盤選手だけが世界で活躍できた日本にあって、これはイングランドの吉田麻也と並んで希有な実績と言えるのではないか。


 長谷部誠、1984年生まれの35歳。できるだけ長くプレーし続けてほしい名選手である。そして、まだまだ続けられると思われるほど、チームの信頼が厚いようだ。ちなみに、そんな彼が熱心に語った言葉にこんなのがあった。
『これはしっかり書いておいてください。中田ヒデさんには是非、日本のサッカー界に復帰してきてほしい』
 ヒデの引退が、2006年ドイツ大会終了後。長谷部の代表初選出がこの年の1月だから、長谷部はヒデをしっかりと観察して、非常に多くのことを学んだに違いないのである。世界的に大成する名選手は、若い頃に出会った世界的名選手をよく観察し、そこから学ぶ目を持っているものだ。ちょうど中田ヒデが16歳の頃だったか、ナイジェリアのカヌーと戦ってすごいショックを受けたあと、彼と自分なりに対抗できる日を夢見てあれこれと考え、種々励んできたように。
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喜寿ランナーの手記(264)足底筋膜炎は怖い!  文科系

2019年09月07日 09時08分03秒 | スポーツ
 初めての、気になる「故障」

 前回のエントリーのあと、最近ちょっと感じ始めていた「故障」箇所がやや重くなったようだ。ランナー20年近くで初めて痛んだ箇所とあって色々調べてみると、足底筋膜炎がカカトの方ではなく、土踏まず前方に出ているらしい。朝起きた時に特に出るから、そういう診断でまず間違いない。胃がんの疑いからの検査入院・ブランクのあと、ちょっと攻めすぎたかもしれない。
 やはり氷で冷やすいわゆるアイシングで痛みが和らぐようだが、医者に行った方がよいと考えていた。まー先は長いのだから、病院へ行ってこよう、と。

 医者に行ってきた

 左足裏の痛みで、整形外科に行ってきた。やはり、足底筋膜炎と診断。それもよくあるカカトの方ではなく、土踏まずの前のほうで横全体に痛みが出るもの。初めて知ったことなのだが、足裏全体の縦の「土踏まずアーチ」のほかにもう一つの足アーチがあるのだそうだ。親指の下のボシキュウで横断線を引いた横部分にも小さいがアーチがなければならないのが、僕の場合そこで足が狭くてアーチができにくいから、痛くなり易いとのこと。
 下部にパッドがついた小さなサポーターをその部分に巻いてくれたが、随分歩きやすいのである。そして、走るときはこれを外して、インソールを入れて走れとか、足前部のストレッチのやり方、足で「グーパー体操をやれ」などを指示されてきた。
 目からうろこ、餅は餅屋、である。そして、本当に救われた思い!

 ランナー断念が多い故障

 この故障によってランナー断念に追い込まれた同じジムの友人が2人いる。1人は40前バリバリの壮年ランナーU君。今1人の3つほど先輩のMさんはホノルルマラソンの常連で、若い頃から70代半ば過ぎまで走ってきたのに、この故障によって残念、リタイアーした。2人とも土踏まず末端からカカトにかけて歩けないほどの痛みと語っていた。こういう痛みを抱えながら走るとこうなると知っていたからこそ、僕は早めに病院に行けたのである。そして、「餅は餅屋」という格言通りに、いろんな対処法があると知ることができた。
 ただそれも、早期発見早期治療だけがランナーとして命拾いの道であるらしい。僕の場合はおそらく、一週間の休養で済むと思う。医者もそんな感じだった。ただこれも、ストレッチなどの言われた指示をしっかり守ってのことだろう。
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代表サッカー・パラグアイ戦  文科系

2019年09月06日 00時01分24秒 | スポーツ
 昨夜は代表久しぶりのゲームがあって、相手は南米のパラグアイ。パラグアイと言えば、南ア大会で日本サッカー史上2回目に決勝トーナメントに進出して、惜しくも敗れた相手。ついでに、さらに言えば、この南ア大会の後、新たな代表がすぐに練習マッチを組んだ相手がまた、パラグアイだった。ちなみに、この二つのパラグアイ戦は、偶然のことだがこのブログに観戦記エントリーが存在する。前者は2010年6月30日、後者は同年9月17日の観戦記として。二つの一部をここに転載してみよう。随分久しぶりのサッカー記事ということだから。

【 サッカー代表、南アワールドカップを振り返る  文科系 2010年06月30日 | スポーツ
 パラガイ戦の戦評は、あのゲーム自身と同じように難しい。世界のサッカーマスコミでも、評価が分かれている。点取りのアイディアを中心に見れば両チームとも低評価になるし、チームとしての総合力で見れば日本ということになるらしい。オシムが「日本は、ミルクをこぼした」と表現したり、ヒデが「日本のが実力は上」と述べたりしたのは、玄人的な後者の評価なのだろう。またこの両者ともが「日本はもっと攻められた」と述べているが、とにかくそのことについて書くのが、このゲームの焦点であるべきだろう。
 まずこういうことだ。大会直前にあの守備を確立したからここまで来られたということを考えれば、今回に関しては無い物ねだりとも言えると。このことは、岡田監督も自分の責任として、認めている。
 岡田監督はこう述べた。「点が取れないのは一つだけの理由ではない。それでも、前半途中から遠藤を前に出すとか、守備の要・阿部を憲剛に替えるとかして、リスクを冒した攻めの采配はした積もりだ。それ以上は監督としての僕の力不足。執着心が足りなくて、選手に勝たせてあげられなかったということだ」(後略)】

 後のパラグアイ戦観戦記としては、憲剛と香川の鮮やかすぎる得点!勝利! この印象は未だに僕の脳裏から消えていないものだし、このゲームによって南ア大会代表を逃した香川が、以降の日本エースになっていったとさえ言えると理解してきた、その部分を転載してみたい。この得点は、日本代表戦の後にも先にも珍しいような、歴史に残る見事なものだったと強調したい。

【 (前略)香川への評価を、パラグァイ戦得点をアシストした中村憲剛が、スポーツグラッフィック・ナンバー最新号でこう語っている。ちなみにあの得点場面を再現描写しておくと、こんな感じだったろう。
 敵ゴールに向かってやや左30メートルほどにいた香川が、その右横のゴール正面25メートルほどにいた憲剛にボールを預ける。と同時に、するすると右斜方向のゴール正面へと走り込んでいく。初めはゆっくりと、そしていきなり全速力で、ゴール正面のDF数人の中へ走り込んでいく勢い、感じだった。そこへ憲剛のスルーパス。3~4人の敵DFの間を縫うような速く鋭い、長めの縦パス・アシストである。香川はスピードを落とさずにこれを、ワンタッチコントロールから右足シュート。
憲剛の「表現」を聴こう。
『ああいうのは、センスだよね。実は真司が初めて代表に来たときから、2人で今回のようなプレーをしていたんだ。走っているあいつの足元にパスを出すっていうね。真司の特徴は、動きながらボールをコントロールできること』
『日本代表もパラグァイ戦のようなプレーができれば、もっと楽しくなるんじゃないかなと思う。あれだけ人が密集していても、2人で崩せちゃうんだから』


「あれだけ人が密集していても、2人で崩せちゃう」、憲剛は簡単に語っている。が、相手は世界15位。ブラジル、アルゼンチンの点取り屋を日頃の相手にしてきたDF陣である。上記の得点に二つの超難度技術が必須であったのは明白。一つは憲剛が述べているように「動きながらボールをコントロールできる」選手だが、その直ぐ後で憲剛は「まだ日本には(香川以外は)ほとんどいない」とも語っている。そしてこの必須要素の今一つは、上の表現で言えば、これ。「3~4人の敵DFの間を縫うような速く鋭い、長めの縦パス」。敵ゴール前にこのようなスルーパスを進められる選手は、憲剛の他には長谷部しか僕には名前が挙げられない。2人ともいないときの代表が「敵ゴール40メートルほどに迫ると、横パスばっか」となるのは、そういうことだと理解してきた。(後略)】


 さて、前置きはこれくらいにして、昨夜のゲームを。 

 前半はまー凄まじいゲームだった。両チームとも押し上げて縦に詰めたコンパクト守備で、とにかくボールの奪い合いが激しかったこと。特に日本のプレスは、敵ボールにほとんど2~3人で突っ掛けるという徹底ぶり。
 奪ったボールの攻撃の方はと言えば、よく言われる3人目の走りとか、選手間の距離とかが良くって、選手のアジリティも含めて、日本の繫ぎが速い速い! 世界39位のパラグアイ選手の攻撃が単発で、動きだしも遅く、日本(33位)と比較して倍以上は世界順位が低いチームに見えたもの。これがまた、実際は39位の南米チームで、一時の代表がよく言われた「南米が苦手」というのが、まるで嘘か、遠い昔の話みたい。結果は2対0だったが、その2得点の攻撃が見事だったこと! いずれの得点も、相手防御としてはいわゆるノーチャンスだった。

 1得点目は22分ほどに、大迫。左を駆け上がった長友のクロスを、中央で受けるよとばかりに一歩下がるようにしてマーカーから一瞬消えて、クロスが出る直前に急前進、ニアで悠々と決めて見せた。
 2得点目はさらに見事なもの。左を駆け上がった中島が、逆サイドの酒井に速いロングパス。全力疾走で駆け上がってきた酒井が中をよく見て、ファーのゴール近くでフリーになっていた南野にパス。これも悠々と決めていた。攻撃側が左・右・左とこれだけ見事に敵DF陣を揺さぶることが出来れば、まず穴が生まれるという絵に描いたように典型的な形の得点だった。

 初めから前半すべてを攻守ともこれだけ飛ばした日本だから、後半初めに3人を替え、さらに何人も替えたのだが得点がなかったのはまー、仕方ない。南野や、最後に交代した柴崎は疲れ切っていたはずだから、無得点も仕方ない。後半はじめから堂安に代った久保に惜しいシュートが何本かあったのに、相手のシュートはほとんどなかったはずだ。疲れ切っていたが、しっかり守ったということだ。


 という具合に、パラグァイと我が代表の差は、この9年でこれだけ広がったと言うことでした。
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韓国防衛白書に「中国と協力」   文科系

2019年09月05日 07時03分13秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 日韓関係の紛糾

 今、日韓関係がかってない困難、紛糾を極めている。去年10月の韓国大法院による徴用工判決に始まって、同12月には、韓国海軍火器管制レーダーが海上自衛隊哨戒機に照射された事件。さらに、8月2日に日本政府による「韓国を、ホワイト国から除外」の閣議決定と、これに対して8月22日、韓国政府は日韓秘密情報保護協定(「GSOMIA」)の破棄を決定。
 こういう日韓関係は、この2日発売の週刊ポストの「ヘイト」記事が大炎上、謝罪に追い込まれた事にも示されたように、一部日本人を逆上させている。この問題はさらに、現世界情勢では日韓関係だけで済むわけがないのであって、米中衝突を激化させつつあるアメリカにとっては、到底捨て置けぬ問題になっている。例えば、その米国の国際政治週刊誌「ニューズウイーク」最新号も、『「GSOMIA破棄」文の真意』なる論文を載せている。「社会情報大学院大学特任教授」北島純の執筆になるものだ。この内容をごく簡単に要約して、日本人議論がほとんど触れていないある重大問題点を指摘してみたい。

 ニューズウイーク記事『「GSOMIA破棄」、文の真意』

 まず、論文概要。
 GSOMIA破棄を『情報の共有がなくて困るのはどっちもどっち』という解説をしてから、『文在寅の「真意」はどこにあるのだろうか』と展開する。その結論は、極めてあやふやな表現ながら、こんなふうになっていた。
『南北統一のための奇策を打ち出し得る土壌をつくろうとしているのかもしれない』
『それに対する仕掛けの戦略的第一弾が今回のGSOMIA破棄であるとしたら、文在寅が見ている風景は、相当遠い先にあるものだろう』

 さて、文中『文在寅が見ている風景は、相当遠い先にあるものだろう』というここが、流石に国際情勢の専門家らしく、日本週刊誌記事とは違う点だ。つまり、目前の日韓対立諸現象をば、韓国のより長期的・多面的・根本的な戦略視点が動き始めたと捉えているわけだ。さてここまで読んで僕はこの論点に大きな疑問を持つのである。それだけ大きな対立を仕掛けていると捉えるならば、専門家として以下重要問題に何故一言も言及しないのか、と。この1月に発表された「18年版韓国国防白書」における戦略が大転換された問題である。この問題をば日本マスコミが軒並み無視しているから、なおさら強調が必要と僕は考えて来た。以下に示すように、韓国現在の種々日本とのいざこざはこの白書から全て始まっていると観ても良いほどに。

「18年版韓国防衛白書」の大転換

 本年1月16日の新聞に大変なニュースが載っていた。日韓断絶がここまで来てしまったかとため息が出るような、18年版韓国国防白書の主内容を新聞記事から抜粋してみる。

 何よりも問題と言えるのは、こんな下り。
『南北関係の改善を受け、北朝鮮を「敵」とする従来の表記を削除した。日本については、「自由民主主義と市場経済の基本価値を共有している」との文言が消えた』
『周辺国との軍事交流・協力の記述では、16年版は日本、中国の順だったが、中国、日本と入れ替えた』

 北朝鮮を敵とする記述を消して、日本とは基本価値を共有しているとは言わなくなり、軍事協力でも日本より中国寄りに換わったと国防白書に明記したというのだから、その日本関係変化を一言で言えばこんな姿勢、表現になる。日本に対して背中を向けて、中国の方へと、遠ざかって行った、と。

 東アジア外交地図が塗り替えられた

 ちなみに、韓国のこういう外交戦略は、以前の日本で言うならば民主党新政権発足時に小沢一郎が採った「米中等距離外交」路線の韓国版と言えるもの。
 このことは、近未来の米中衝突必然情勢にも関わって、従来世界政治地図をも塗り替えるような国家戦略転換だと解釈できよう。隣国韓国は日米に根本的不信を持つに至ったのだ、と。トランプ暴政下になってもなお揉み手を擦るようにしてアメリカに近づいている安倍日本政権に対して、文政権はそんな日本よりも中国との軍事協力を重視し始めた。こういう韓国は同時に、アメリカからも一定距離を置く決意をしたのである。
『もう日米政権、「共通の価値観」などにだけ頼るのはやめにする。中国も同様に信頼することにした』

 さて、以上のように韓国外交の大転換を観てくれば、安倍政権が今後アメリカからどう対処されるかという問題さえ出てくるのではないか。
「歴史問題で韓国を逆なでし続け、北への制裁には米以上に強行だった結末が、これか! 今米中衝突が大変になって行く時に、韓国を中国側にここまで追いやるとは、とんでもない下手を打ったものだ! この日本政権じゃもう、韓国のこの姿勢を変える見込みも立たないだろう。それにしても、近隣では第一に中国と国防協力とは??」
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僕が「9条バトル」に政治論以外を書くわけ  文科系

2019年09月04日 18時56分49秒 | その他
 政治論のブログでは政治だけというのが、日本人の普通のやり方だろう。が、僕はここを、ある意味日記のように使ってきた。ランニング日誌はまさに日記だし、観るスポーツとしてほぼ唯一熱中してきたサッカーでWカップとかの重大ゲームや注目事項がある時には、これを論評などする。所属同人誌の随筆、小説など自他の作品も載せてきたし、政治以外の論文とか時事問題なども扱ってきた。その理由は、この「9条バトル」ブログの副題にも掲げてあるのであって、その呼び名・副題はこうなっている。
『九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)』
 その真意の詳論は以下を観ていただくとして、簡単に説明すればこういうことである。
 政治文章なんていくらでも嘘が書ける。例えば、政治家としての出世などのためだけに信じてもいないことを書き連ねることもあるだろうし、事実金を貰ってサイト・ウオッチャーになってせっせと反論を書く人々も多いはずだ。さらに厳しく言えば、そもそも論じている内容、哲学に日々どれだけ務めているかも分からない政治論など、全て虚偽の世界の空中戦とさえ言えないこともない。せめて、その人がどう生きているかということが分かれば、その言葉の真実み、どれだけ魂が入っているかも、多少は分かるというもの。だから自分の生活、文化活動、哲学、あらゆる人間活動、社会への知識などなども書く。と、こういうことなのである。

 では、昔から折に触れて載せてきた、表題の本論を・・・。


『 改めて、「僕が政治論以外も書くわけ」 文科系 2012年01月15日 | 文化一般

 表記のことを、改めてまとめてみたい。随筆、サッカー評論などなど一見関係ないようなことを僕はなぜここに書いてきたか。ここが始まった6年前からしばらくはかなり気にしていたことだが、最近はあまりこれを書いたことがなかったと思いついて。

 僕がまだ若い頃から、こんなことが当時の大学で当たり前であった左翼の世界の常識のように広く語られていた。「外では『民主的な夫』、家での実質は関白亭主。そんなのがごろごろ」。そういう男たちの政治論に接する機会があると、正直どこか斜めに構えてこれを聞いていたものだ。どんな偉い左翼人士に対しても。レーニンの著作にたびたび出てくるこういった内容の言葉も、そんなわけでなぜか身に染みて受け取れたものだった。
「どんな有力な反動政治家の気の利いた名演説や、そういう反動政治方針よりも、恐るべきものは人々の生活習慣である」
 こういう僕の身についた感覚から僕の左翼隣人、いや人間一般を観る目も、いつしかこうなっていた。その人の言葉を聞いていてもそれをそのままには信じず、実は、言葉をも参考にしつつその人の実生活がどうかといつも観察していた。誤解されては困るが、これは人間不信というのではなくって、自分をも含んだ以下のような人間認識と言ってよい。人は一般に自分自身を知っているわけではなくって、自分の行為と言葉が知らずに自分にとって重大な矛盾をはらんでいることなどはいっぱいあるものだ、と。こういう人間観は実は、哲学をちょっとでもまじめに学んだことがある者の宿命でもあろう。哲学史では、自覚が最も難しくって大切なことだと語ってきたのだから。ソクラテスの「汝自身を知れ」、近代以降でもデカルトの「私は、思う(疑う)。そういう私も含めてすべてを疑う私こそ、まず第一に存在すると言えるものだ」などは、みなこれと同じことを述べているものだ。

 さて、だとしたら政治論だけやっていても何か広く本質的なことを語っているなんてことはないだろう。そんなのはリアリティーに欠けて、ナンセンスな政治論ということもあるし、「非現実的話」「非現実的世界」もはなはだしいことさえもあるわけである。それでこうなる。生活も語ってほしい。その人の最も生活らしい生活と言える、好きなこと、文化活動なんかも知りたい。どういう人がその論を語っているかということもなければ、説得力不十分なのではないか、などなどと。もちろん、何を書いてもそれが文章である限りは嘘も書けるのだけれど、その人の実際や自覚のにおいのしない政治論だけの話よりはまだはるかにましだろうし、随筆なんかでもリアリティーのない文章は結構馬脚が顕れているものだと、などなど、そういうことである。
 やがて、こんな風にも考えるようになった。幸せな活動が自分自身に実質希薄な人が人を幸せにするなんて?とか、人の困難を除くことだけが幸せと語っているに等しい人の言葉なんて?とか。そういう人を見ると今の僕は、まずこう言いたくなる。人の困難を除くよりもまず、自分、人生にはこれだけ楽しいこともあると子孫に実際に示して見せてみろよ、と。

 なお、以上は政治論だけをやっているのだと、人生の一断面の話だけしているという自覚がある論じ方ならばそれはそれでよく、五月蠅いことは言わない。だが、当時の左翼政治論壇では、こんなことさえ語られたのである。「歴史進歩の方向に沿って進むのが、人間のあるべき道である」と。つまり、政治と哲学が結びついていたのだ。それどころか、戦前から政治が文学や哲学や政治学、そういう学者たちの上位に君臨していたと言える現象のなんと多かったことか。
 そんなわけで僕は、当時では当たり前であった大学自治会には近づいたことがなかった。そして、左翼になってからもこの「政治優位哲学」には常に距離を置いていたものだった。これはなぜか僕の宿痾のようなものになっていた。


 なお、こういう「公的な場所」に「私的な文章」を載せるなんて?という感覚も日本には非常に多いはずだ。こういう「公私の峻別」がまた、日本の公的なもののリアリティーをなくしてはいなかったか。公的発言に私的な事を入れると、まるで何か邪な意図があるに違いないとでも言うような。逆に日本ではもっともっとこんな事が必要なのだろう。政治をもっと私的な事に引きつけて、随筆風に語ること。正真正銘の公私混同はいけないが、私の実際に裏付けられないような公(の言葉)は日本という国においてはそのままでは、こういったものと同等扱いされることも多いはずだ。自分の子供をエリートにするためだけに高給をもらっているに等しい文科省官僚の公的発言、「貴男が男女平等を語っているの?」と連れ合いに冷笑される亭主。


 ややこしい内容を、舌足らずに書いたなと、自分でも隔靴掻痒。最近のここをお読み頂いている皆様にはどうか、意のある所をお酌み取り頂きたい。なお僕の文章はブログも同人誌随筆も、ほぼすべて連れ合いや同居に等しい娘にもしょっちゅう読んでもらっている。例えば、ハーちゃん随筆などは、彼らとの対話、共同生活の場所にもなっている。』
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喜寿ランナーの手記(263)LSD、90分12・5キロ  文科系

2019年09月03日 10時09分59秒 | スポーツ
 24日8・9キロ、26日9・1キロと来て、29日が9・3キロ。ここで最近には珍しく中3日休みを置いた2日には完全LSDで、標記のように走った。LSDというのは言うまでもなく、マラソン上達理論の要。長時間(ロング)、ゆっくりと(スロウ)、長い距離(ディスタンス)を走るのが、心肺機能向上に最も良く、心肺機能こそマラソンで最も大事なことという理論である。僕の場合、自分の最高持続スピードの7~8割ほどで走っている。
 あとは出来るだけ毎日走って、ポリフェノールを摂ることかな。これは、ランナーが走るほどに酸素とともに取り込んでしまう人間最大の細胞老化物質・活性酸素対策。この活性酸素を中和してくれるのである。この対策を知らぬと、走るほどに細胞が早く老化していくことになる。いわゆる「アスリートは早死にする」と医者が言う理屈だ。走るほどに早死にしてはダメでしょうというわけだ。

 さて、ジムマシン30分を3回やったというのは僕としてほとんどないことで、それだけ身体が調子よかったのだろう。ただ、10・5キロ時などもかなりやったから、インターバルトレーニングの意味もあったはずで、ちょっと強くなった気分。後の疲れも、この分では全く残っていない感じ。こういうことでも何かちょっと強くなったように思う。

 と、ここまでは2日に書いたことだが、今日3日になってこんな疲労感が出てきた。脚にきつい負荷をかけた時に出る、筋肉痛一歩手前のような感じが。これはただし、ごく軽い健康な痛だるさのようなものであって、僕の経験では最近使っていなかった強度に筋肉が進化する兆候とも思えるもの。

 ただ、インターバルトレーニングなどでスピードを急に切り替えるときに両脚のバランスに苦労するのは、どうも左脚を蹴る筋肉の方がやや弱化しているせいらしい。高速で目一杯蹴って走ると、フォームが安定してくるのが分かるのである。そのときは実に楽しい。腕を特に後ろへはしっかりと振って、蹴ったその脚を骨盤からのように前に振り込んで行く・・・。これが好調の時の走りは、まさにランニングハイだといつも思うことだ。
 良いインターバルトレーニングが出来た。
コメント (3)
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米経済衰退史と、その復活策   文科系

2019年09月02日 13時23分25秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 これは、『マスコミに載らない海外記事』サイトからの転載です。筆者は、元米経済政策担当財務次官補。
 現在トランプが大きく叫び始めた「在中国米企業は米に戻れ命令」に関わって、米国産業衰退史と、この命令促進の具体的方策などが提言されています。なお、この歴史回顧部分には、日本の貧困化と同じ原因などが見えてくるので、興味が尽きぬものがありました。例えば、こんな部分。
『資本主義のアメリカ労働力からの逃避が、アメリカを、雇用が主に低賃金の国内サービス職から成り立つ国、半世紀前のインドに似たものにしてしまっている。暮らしてゆける賃金の仕事が欠如していることが、非常に多くの24-34歳のアメリカ人が独立した暮らしができず、親や祖父母と一緒に家に住んでいる理由だ』

 中見出しは文科系が付けました。かなりな長文ですので、略した部分も多くなっています。
 

【 アメリカ経済を復活させるのは可能だろうか? 2019年8月26日 Paul Craig Roberts

 はじめに トランプの「在中国米企業は米に戻れ」命令

 トランプがアメリカ企業に中国から出て、企業が放棄したアメリカ労働者に雇用を戻すよう命じたことに対し、読者から(私の過去の)功績を認められて私は驚いている。アメリカ経済学者や経済マスコミやワシントン政策当局は、グローバリズムとアメリカの雇用と技術を海外移転することに関する私のアメリカ景気悪化の分析に一度も注意を払ったことがなかったし、読者もそうだろうと私は思っていた。多くの読者が、経済学は彼らの理解を超えると言ってこられる。私の経済記事は、このウェブサイトで一番読まれていない。
 遥か遠くイランのPress TVを含め外国メディアが、ホワイトハウスに対する私の影響について、すぐさまインタビューを求めて私に連絡を取った時、私はまたもや驚いた。その全ては一体何を意味しているのだろう?

 第一に、誰かがトランプに私の最新コラムを見せて、それでスイッチが入った可能性があると私は言いたい。だがトランプが企業に国に戻るよう命じたのは、彼の恫喝の単なるエスカレーションであり、彼の理解ではなく、アメリカ人に良い仕事がないことや、その実収入下落を正す関税の無力さを反映している可能性もある。
(中略)

 米企業の対中進出を振り返る

 先に進む前に、要約しておこう。ソ連が不意に突然崩壊したとき、中国とインドは社会主義を断念し、欧米資本に彼らの経済を開いた。(中略)
 最大の人口を持つ国のインドと中国が至った結論は、社会主義は崩壊に至るが、資本主義が富に至るということだった。世界で人口最大の二国の巨大な不完全就業労働力が、初めて外国による搾取に利用可能になったのだ。労働市場には、巨大な過剰供給労働が存在していたから、労働力は搾取された。すなわち生産への寄与以下しか支払われなかった。労働の供給過剰は、労働力は、企業の収益に貢献したよりずっと安く雇用されることを意味する。
 企業CEOや重役やウォール街は、利益を増やすこの機会に気が付いた。最初に中国に急ぎ入った企業は失望し、機会は見かけほど良くなかったという言葉が出た。だが中国は海外生産を儲かる事業にしようと努力し、製造業雇用が群れをなしてアメリカを去った。結果はアメリカ中産階級と、それによる州や市の課税基盤の減少だった。アメリカは繁栄を止めたが、経済的な損傷は、インフレーションや雇用やGDP成長のニセ報告と、資産の価格と不動産を支えた極めて大量の金の連邦準備銀行印刷で隠蔽された。

 傷を隠すことが困難になった時、中国はアメリカに余りに多くを輸出して、アメリカ労働者を傷つけたとして非難された。中国を非難する人々は、アップル・コンピュータやiPhoneや、ナイキの靴やリーバイ・ストラウスジーンズなどで構成される中国からの輸入の割合を見ようとはしなかった。アメリカ企業の海外生産は輸入の大きい割合を占めている。彼らが売るためにアメリカに戻る時、アメリカ企業の海外生産された商品やサービスは輸入として扱われる。
(中略)

 結果、米国内産業力はこのように衰えたが・・・

 最後に四半世紀後に結果として生じたものは、アメリカの製造と産業を支えたサプライチェーンと労働力の解体だった。かつて栄えた工場や工業団地は閉鎖され、潰される走りかコンドミニアムやアパートに換えられた。トランプがアメリカ企業をアメリカに戻すことができたら、それらはどこに行くのだろう?

 海外移転時代は、六カ月の景気後退では済まなかった。それは、熟練した経験豊かな労働者が年を取って、亡くなり、新しい参加者が誰も技能や労働規律を習得しない年月だった。現在、中国は完全に発展した製造・産業経済だ。アメリカはそうではない。
 アメリカ企業が国内に戻るためには、彼らはアメリカの開発半ば、あるいは未開発経済のために、中国の発展した経済を離れなければならない。もし彼らが突然これをするよう強制されれば、彼らは、製造と工業大国としてのアメリカをよみがえらせるために必要な、生産設備、労働力、サプライチェーンや輸送システムを再生できる前に、中国での彼らの生産を失うのだ。雇用統計を見れば、アメリカが製造と産業の仕事を生み出していたのは、何年も昔のことなのがわかる。

 四半期世紀にわたる、資本主義のアメリカ労働力からの逃避が、アメリカを、雇用が主に低賃金の国内サービス職から成り立つ国、半世紀前のインドに似たものにしてしまっている。暮らしてゆける賃金の仕事が欠如していることが、非常に多くの24-34歳のアメリカ人が独立した暮らしができず、親や祖父母と一緒に家に住んでいる理由だ。それは大学出身者が学生ローンを返済できず、負債奴隷に変えられている理由だ。
 これがアメリカ企業を中国からアメリカに戻すために、トランプがしなければならないことなのだ。移行は緩やかでなければならない。彼らがアメリカで生産するための必要条件を再現することができるよう、企業は中国に海外移転した生産を段階的に減らせるだけだ。この過程は、結果的に、未開発の経済に、開発をもたらすようなものだ。

 トランプ、すなわちアメリカ政府は、企業収入が負担をかけられる方法を変えることにより、コストがアメリカ人労働でアメリカ市場のために再び生産することに関連する彼らの労働(や規制や義務などの)コストの大幅増加に対し、企業に支払いをしなければならないだろう。国内市場のために、国内労働で生産する企業は、より低い税率になるだろう。アメリカ市場のために外国人労働者で、外国で生産する企業はより高い税率になるだろう。税率の差は、人件費の差を相殺するように算出可能だ。外国での販売のために外国で生産する企業は影響を受けないだろう。

 もし彼らがアメリカで製造するための条件を再構築できる前に、アメリカ企業に中国から出るようトランプが命じれば、企業は売上高と収入がなくなり、潰れるだろう。

米企業回帰への諸困難

 トランプがアメリカ企業に中国を去って、国に戻ることを命じることができるか否かについて、疑問がおきる。トランプの命令は、単なる美辞麗句であるかもしれない二つの理由がある。
 一つは、企業は、低コストの労働力から生ずる彼らの既存の利益に満足していて、コスト節減を失うつもりがないことだ。あらゆる国で活動している、アメリカのグローバル企業は、アメリカ選挙に干渉する富を持っている。もしトランプがグローバル企業に反対して動けば、彼は他グローバル企業から選挙運動資金を受け取れないだろう。その代わり、彼の競争相手が受け取るだろう。

 トランプは海外移転取り引きは、アメリカ国民ではなく、企業だけのためにうまく機能していると主張することができる。「自由市場」主義の経済学者は、海外生産された仕事には、より良い仕事が置き換わり、海外移転で失われた賃金の損失を上回る値下げで、アメリカ消費者により多く割り戻すと保証した。そうはならなかった。読者の誰が、ナイキの靴、リーバイジーンズ、アップルコンピュータやiPhoneの値下げを経験しただろうか? 企業は自由市場の約束を果たさなかった。彼らはコストは下げたが、価格を維持した。より良い仕事の一つたりとも実現しなかった。企業を守勢に立たせるには、トランプはこれらの主張が必要だろう。

 二番目の理由は、トランプがアメリカ企業に中国を去って、何であれ残されたアメリカ労働力に戻ることを命じる権限は何もないと主張されていることだ。一時、これはおそらく、その通りだった。1952年、トルーマン大統領が、朝鮮戦争中に鉄鋼生産を止めるストライキを防ぐために、アメリカの鉄鋼産業を国有化した。最高裁判所はトルーマン敗訴と裁定した。だが今日クリントン、ジョージ・W・ブッシュとオバマ政権による大統領職への異常な権力集中が、「対テロ戦争」を戦うため議会によって行政部に与えられた後、今大統領は政令によって裁定することができる。

 トランプは1977年の国際緊急経済権限法を、アメリカ企業を中国から、アメリカに戻るよう命令する権限を彼に与えている法律として引用した。彼は多くの追加権限を持っている。人身保護令に違反して、法廷に提出された証拠がないアメリカ市民を無期限拘留する権限を持っており、適法手続きなしに、嫌疑だけでアメリカ市民の死刑執行を命ずることができる大統領は、欲するものは何でも命ずることができるのだ。

 ジョージ・W・ブッシュ時代の共和党とオバマ時代の民主党に作り出された権力に基づいて、トランプ大統領は、アメリカの雇用を奪い第三世界諸国の地位にアメリカを引き下げるべく、彼らが中国と共謀しているという理由で、生産を海外移転した企業のCEOと理事会を逮捕する権限を持っている。トランプがロシアとの関係を正常化するのを阻止するために使われたばかばかしいロシアゲート物語より遥かに良い論証がこのために可能だ。

 現実的方策

 闇の国家の支援を彼が確実に得られるようにするには、トランプは、アメリカが製造と産業能力を再確立できなければ、世界の覇者として留まるのに必要な兵器システムを生産し続けることができないことをアメリカ軍安保複合体に想起させるだけで良い。新刊、The Real Revolution in Military Affairs(本当の軍事革命)で、アンドレイ・マルチャーノフは、決定的な兵器システムと軍隊の統合で、アメリカは完全にロシアに、いくつかの点では中国にも水をあけられていることを証明している。実際、通常戦争で、アメリカがイランを破ることができるかどうか明確ではない。アメリカ兵器システムの多くの部分は外国で製造されており、それは戦時には供給問題を引き起こす。
 闇の国家の支持があれば、トランプは企業に国に戻るよう命じることができる。
(中略)

 アメリカが世界強国のままでいるつもりなら、製造と産業能力を復活させる必要があるという点においてトランプは正しい。アメリカが、それが認めた途方もない数の第三世界の人々を吸収するつもりなら、中産階級の仕事と昇進の梯子を復活させる必要がある。

 トランプが進むべき道は、企業に彼らが、消費者購買力を破壊し、それにより自分たちの長期的売り上げ破壊するという犠牲を払って、短期的に自分たちの利益を膨張させていると説明することだ。実収入が上昇していないアメリカ人には、アメリカ企業に収入を与える商品やサービスを購入する自由裁量の購買力が無いのだ。もちろんCEOや重役は長期的には、そこにおらず、気にかけないかもしれない。だが大統領は、それを愛国心の問題にして、彼らを困難な立場に追い込むことができるかも知れない。
 次に、企業が課税される方法を変え、アメリカで製造を復活させるために必要な条件を再現するため、トランプは企業と協力する必要がある。これは単純な課題ではない。それには対立ではなく、協力が必要だ。

 その間、移民を吸収する経済がないのだから、移住は保留せねばならず、ワシントンは戦争を止める必要がある。戦争に関連する費用や負債やリスクは、利益よりはるかに大きい。もしアメリカが針路を反転しなければ、未開発国になり下がるだろう。これは我々にとって、独裁者とされる連中や中東テロリストを支援する国々とされるものより遥かに大きな脅威だ。


 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。
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