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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

オイルサーディン

2025-02-06 17:03:18 | 読書
平松洋子「イワシバターを自分で」文藝春秋 (文春文庫 2022/3)

この本については後日.ここは表紙の鰯オイルサーディンの缶詰からの連想である.

大学に入ってワンダーフォーゲル部に入った.無線旅行の類をやるつもりだったら,甘かった.大学によるとは思うが,ここはガチの体育系であった.
一日中 キスリングと称する横長のザック (このごろ全く見かけない !) を背負って,山を歩いて,テントに泊まる.このとき,頭と足を交互にして,
   頭..........足
   足..........頭
   頭..........足
   .....
という要領で,つまりサーディン缶のように,1畳に 4-5 人の密度で寝るのだった.特に合宿ではテントそのものの数が少なかったせいもあるかもしれない.でも当時のテントは雨で濡れたりすると重量倍増で,パーティで複数張り持ち歩きたくない代物であった.


今考えると,ワンゲルは明らかに自分向きではなかったが,いつでもやめられると思っているうちに最後まで在籍することになった.先輩・4先生を頂点とするヒエラルキーも,大学にいる間だけと思えばそれなりに面白かった.

同じ学科(原子力工学)の同級生とは大学紛争 (闘争?) の挙句 気まずくなり,いまだに辛うじて付き合いがあるのはワンゲルの友達である.

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ひよこ太陽

2025-02-04 17:08:26 | 読書
田中慎弥「ひよこ太陽」新潮社 (2019/5)

Amazon より
*****道理で女が出てゆくわけだ――。妄想に取り憑かれた作家の姿を描く新しい私小説。今日も死ななかった。あの帽子を見たために、今日も死なずにすんだ――。一緒に住んでいた女に出ていかれ、切り詰めた生活でひたすら小説を書く40代の男。書けない日々が続き、いつしか死への誘惑に取り憑かれた男に、ある日人探しの依頼が届くが……。虚実のあわいで佇む作家の日常を描く連作小説集。芥川賞作家の新境地作。*****

図書館で借用.2012 年の芥川賞作は途中でギブアップしたか,この作品は泉鏡花賞作というので読む気になった.
7篇からなる短編集と思って読み始めたが,同じ人物が繰り返し登場するので連作とわかった.
最初の 1-2 作は読みやすかったが,次第に泉鏡花っぽく,というよりやはり田中慎弥っぽくなる.

辛うじて生活できるレベルの作家が語り手なのが,なんだか胡散臭い.
「茹で卵を潰してマヨネーズと胡椒で和えたやつを,焼いたパンの上に塗って昼食」
「ビールとウイスキーと日本酒と焼酎は買い物かごに入れる.重みで,私は生きている実感を,別になくしていたわけでもないだろうが,取り戻した気分になる」
といった,本筋とは関係のない文章に頷いてしまう.
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クレア・キーガン「ほんのささやかなこと」

2025-01-29 11:11:23 | 読書
クレア・キーガン, 鴻巣 友季子 訳「ほんのささやかなこと」早川書房 (2024/10).

図書館で借用.いつも造本が良くてなるべく新しいのを,内容の予備知識なしに借りている.
扉をめくると献辞,もう一枚めくるとアイルランド共和国宣言抜粋.これらの意味するところは全7章のうちの第3章まではわからない.

献辞の対象は,アイルランドの母子収容施設と <マグダレン洗濯所> で苦難の時を過ごした女性と子供たち.この洗濯所は政府・教会と癒着して女性虐待を行なっていた.この作品では,この事態に立ち向かおうと決心する中年男が主人公.やや不幸な生い立ちだが,平凡な結婚をして5人の娘にめぐまれて,ささやかな石炭販売店を営んでいる.彼の決心がどんな悲劇をもたらすか...と思わせるところで,おしまい.
ストーリーを追うよりも,主人公の出自,日常生活,心の動き などの記述に重点がある.彼の不安とともに描かれる,幸せそうな一家のクリスマスイヴの場面が良い.
大きな活字で,A5 150 ページ.ノヴェラ (中編) というものらしい.ジョージ・オーウェル政治文学賞受賞作.長編小説の伝統が強いイギリスでノヴェラが評価されることは珍しいそうだ.

ほんのささやかなこと 原題 Small Things Like These の意味がいまいち ぼくにはわからない.
装画は原本と共通.
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夜に猫が身をひそめるところ-ミルリトン探偵局

2025-01-27 10:03:22 | 読書
吉田 音, 吉田 篤弘 (イラスト)「夜に猫が身をひそめるところ - ミルリトン探偵局」中央公論新社 (中公文庫 2025/1).

出版社の惹句*****青い16個のボタン、曲がった釘、漏斗、小さな赤い本……
黒猫シンクが持ち帰る“おみやげ”から、猫だけが行ける場所について推理する〈ミルリトン探偵局〉。
謎解きのルールは、解けそうな謎でも決して解かないこと。
人と人、時間と場所のすき間をくぐり抜け、猫がひもとく物語。

作家・吉田篤弘が別名義で著した幻のデビュー作を大幅改稿。
描き下ろしイラストと新規解説を新たに付す。*****

こうした一連の作品を「かまとと文学」と言いたい.遺憾ながら,ぼくのツボにはまる部分がある.ぼくと似たような固定ファンが知るのだろう.文庫のカバーもいい.
ついでながらクラフト・エヴィング商會も好きだ.

この「夜に猫が...」発表の経緯は「新規解説」に詳しい.もともとの設定は,「クラフトエヴィング商会」を主催する吉田夫妻の娘,13 才の女の子が書いたことになっているが,執筆は 2000 年頃,著者 38 才あたりのことらしい.
続編が出るらしいが,もういいかな.
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清酒3本

2025-01-26 10:18:47 | 読書
右2本ははるばる つくば から.
彼の地では霧筑波 (と森嶋) がダントツ人気とのこと.
一人娘は,こんな酒だったのか ! という感じ.何十年か前,つくばのデパート主催の蔵元の試飲会で.ぐでんぐでんになった記憶がある.「蔵仕舞い」をしたとか・するとかいう噂だが,HP ではそんな感じはない.
広島の酒はほんわかしているが,関東のはちょっと拗ねた感じ.特に一人娘がひと癖あるようだ.

大号令は広島・熊野の馬上酒造.廃業寸前を若い杜氏が引き継いだそうだ.生酛は酵母を外から加えない製法絵.ここの生酛純米は八反田と千本錦の2種類で,この八反田の方が少し安い.買ったばかりでまだ飲んでいない.ラベルによれば,日本酒度 8 酸度 2.0の濃醇辛口.

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太宰と近松 : 「おさん」と「心中天の網島」

2025-01-25 10:34:44 | 読書
入院中のベッドで,太宰治の「おさん」を青空朗読で聴いた.革命家気取りのおさんの夫は,よその女と心中してしまう.この小説の,おさんの視点で書かれた最後の2段落 :

*****革命は、ひとが楽に生きるために行うものです。悲壮な顔の革命家を、私は信用いたしません。夫はどうしてその女のひとを、もっと公然とたのしく愛して、妻の私までたのしくなるように愛してやる事が出来なかったのでしょう。地獄の思いの恋などは、ご当人の苦しさも格別でしょうが、だいいち、はためいわくです。

 気の持ち方を、軽くくるりと変えるのが真の革命で、それさえ出来たら、何のむずかしい問題もない筈です。自分の妻に対する気持一つ変える事が出来ず、革命の十字架もすさまじいと、三人の子供を連れて、夫の死骸を引取りに諏訪へ行く汽車の中で、悲しみとか怒りとかいう思いよりも、呆あきれかえった馬鹿々々しさに身悶みもだえしました。*****

かっこいいセリフである.しかし,その夫のモデル = 太宰治 であって,数ヶ月後に実際に心中したことを考えると,複雑.

青空朗読には「解説」がないが,NHK ラジオ第2 毎週土曜 午後4時30分 放送の,木ノ下裕一による「おしゃペリな古典教室」の「古典と文豪 - 太宰治」で,太宰が近松門左衛門の「心中天網島」を下敷きにしたことを知った.Wiki はチェックしたが,原作を読むのはごめんだ.
朗読では昭和の小説と信じて疑わなかった.複数の視点で描かれている原作を,太宰はおさんの視点で押し通したようだ.近松の原作の炬燵 (小道具,いや大きさでは中道具) を太宰が蚊帳で置き換えたあたりに遊びを感じた.

でも,太宰は文豪というには軽すぎないかな.

トップ画像左は田端書店作品リフィルのブックジャケット
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私たち異者は

2025-01-23 16:32:10 | 読書
スティーヴン・ミルハウザー,柴田元幸 訳「私たち異者は」白水社 (2019/6).
装丁 緒方修一,装画 手塚リサ.字体がよい.

日本人のぼくには,ミルハウザーという語感は悪くないので,何となく著書を手に取ってしまうらしい.「ホーム・ラン」「魔法の夜」に続き,これで3冊目.でも,前の2冊の内容は覚えていなかった.

出版社による説明*****

短篇集の文学賞「ストーリー・プライズ」受賞
表題作ほか、さらに凄みを増した最新の 7 篇
驚異の世界を緻密に描き、リアルを現出せしめる匠の技巧。表題作や「大気圏外空間からの侵入」ほか、さらに凄みを増した最新の7篇。

平凡なものが奇怪になる瞬間

職人的に精緻な筆致で、名匠が切り拓く新たな地平。蠱惑的な魔法に満ちた7篇を収録した、最新の傑作短篇集。
翻訳者の柴田元幸氏は、「ミルハウザーといえば『驚異』がトレードマークとなってきたが、この短篇集では(中略)驚異性はむしろ抑制され、ごく平凡な日常生活に小さな異物を(あるいは異者を)挿入することで、日常自体に蠱惑的な魔法を息づかせ、と同時に日常自体の奇怪さを浮かび上がらせている」と、本書の魅力を指摘する。
通りすがりの男がいきなり平手打ちを食わせてくる事件が続発する町の動揺を描く「平手打ち」。放課後も週末もいつも一緒にいる仲の彼女が決して話したがらず、だからこそ僕は気になって仕方ない「白い手袋」。いつのまにか町に現われ、急速に拡大していく大型店舗の侵食ぶりを描く「The Next Thing」。ある日目覚めると、ベッドに横たわり動かぬ自分を見下ろしていた私は、事態を呑み込めないままさまよいだす。やがて出会ったある女性との奇妙な交流とその行方を描く表題作など、どの作品も筆が冴えわたっている。
本書は、優れた短篇集に授与される《The Story Prize》を受賞している。
*****

最新という惹句だがそれほど新しくはない.
2011 年刊行の 14 編の短編集 We Others, New and Selected Stories から未訳の7篇を集めており,比較的長めの4編がやはり読み応えがある.
日常生活に突然おかしな事態が起こる ; 通りすがりの男がいきなり「平手打ち」を食わせてくる事件,彼女が決して外さない「白い手袋」,急速に拡大していく大型店舗「The Next Thing」,そして「私たち異者は」では主人公は突然死んで幽霊になってしまう.登場人物たちの右往左往ぶりと,自体の発展は丁寧に描かれるが,何の説明もなく,いつも突然終わってしまう.
リアルに感じられたのが「The Next Thing」.ベストは「私たち異者は」かな.「異者」は幽霊たちで,主人公は生身の女性 (たち) と交流する.
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ビブラフォン デュオ : Bobby Hutcherson と Joe Locke

2025-01-23 09:55:35 | 読書
Jazz Baltica 2007, Homage to Milt Jackson より.リズムセクション有りの映像 (ピアノは Don Friedman) もあるが,この My Foolish Heart はふたりだけ.
Bobby Hucherson 1941-1916 は ぼくと同い年.Joe Lock 1959-.

いつもシングルトーンで迫る (重音すら少ない) Hutcherson が,4本マレットを使ったりしている.
ふたりの表情が面白いが, オーディオでは音が溶けあって,どちらがどちらかよくわからない.

Locke はこの曲が好きらしい.Kenny Barron のピアノとデュオをよく聴いている.

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核燃料サイクル という迷宮

2025-01-17 10:03:56 | 読書

山本義隆「核燃料サイクル という迷宮 - 核ナショナリズムがもたらしたもの」みすず書房 (2024/5).

出版社による紹介*****
日本のエネルギー政策の恥部とも言うべき核燃料サイクル事業は、行き場のない放射性廃棄物(核のゴミ)を無用に増やしながら、まったく「サイクル」できないまま、十数兆円以上を注いで存続されてきた。本書は核燃料サイクルの来歴を覗き穴として、エネルギーと軍事にまたがる日本の「核」問題の来し方行く末を見つめ直す。

日本では、戦前から続く「資源小国が技術によって一等国に列す」という思想や、戦間~戦中期に構造化された電力の国家管理、冷戦期の「潜在的核武装」論など複数の水脈が、原子力エネルギー開発へと流れ込んだ。なかでも核燃料サイクルは、「核ナショナリズム」(疑似軍事力としての核技術の維持があってこそ、日本は一流国として立つことができるという思想)の申し子と言える。「安全保障に資する」という名分は、最近では原子力発電をとりまく客観的情勢が悪化するなかでの拠り所として公言されている。

著者はあらゆる側面から,この国の「核エネルギー」政策の誤謬を炙り出している。地震国日本にとって最大のリスク・重荷である原発と決別するための歴史認識の土台、そして、軍事・民生を問わず広く「反核」の意識を統合する論拠が見えてくる労作。*****

1/13 日付で紹介した「プル子よさらば」の序文で,著者は反語的ではあるが,愛国心を標榜している.その底にあるのは,核ナショナリズム...疑似軍事力としての核技術の維持があってこそ,日本は一流国として立つことができるという思想であろう.

この「核燃料サイクル...」には石破茂の発言が紹介されている.「原発を維持すると言うことは,核兵器を作ろうと思えば一定期間のうちに作れると言う <核の潜在的抑止力>になっていると思います.逆に言えば,原発を無くすということはその潜在的抑止力を放棄することになる」2011 年 10 月「SAPIO」.ノーベル賞を受賞した被団協代表が首相との面会で,核禁条約への姿勢を批判していたが...

このように本書の論拠は,誰にも手に入る新聞雑誌記事である (ただし戦前にまで遡る例もある).特に新しいことが書いてあるわけではない.でも地球温暖化への原発の効用 (がないこと) あたり,教科書的にも役に立ちそう.
核エネルギーという沈没必至の泥舟に日本が乗っていることについて,具体的な解決策が示されていないことに共感した.

学生時代に 16 トンが薫陶を受けたのは,高木仁三郎,水戸巌,古川路明 (敬称略) といった方々であって,山本氏は優秀なアジテータという認識であった.それ以来氏の著書も敬して遠ざけていた.もっと読みたいかと聞かれると,読みやすくはないな と躊躇する.文章に往年のタテカンを思い出させる部分があるのがご愛嬌.

ひさびさの みすず書房の本はやはり美しい.

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プル子よさらば

2025-01-13 21:02:40 | 読書

山中与三郎「プル子よ さらば : プルトニウムとともに生きた男の戦いと挫折」牧歌舎 (2010/3).

著者は大学サークルの先輩で,先日訃報に接した.6年の差があり,著者の謦咳に直接 接する機会はなかった.山中...はペンネーム.軽水炉プルトニウム燃料の国産化のいきさつを,現場の技術者の立場で書いている.企業名や登場人物の名前は変えてあるようだが,ぼくには判らない.プルトニウムはプル子と表記されていて,Tさん,Q子などと本書に現れる女性たちと同列に扱われている.予期に反し全体量の 1/3 くらいは女性と家庭の話であった.

著者は「もの作り」すなわちブルとニウム燃料を製造することで,日本のエネルギー自給の推進に挑戦する.この戦いの結果は,途中までは勝ち,最後は負けであった.これは,日本からその得意とする製造技術を取り上げ,国際競争力を低下させようとする世界戦略に負けた結果である...と説く.

主な舞台は動燃であって,著者に代表される職人主義・現場主義と,それを憎悪するお偉い (著者がいうところの) 評論家軍団の対立がテーマと言っても良い.後者がプルトニウム燃料の国産中止のお先棒を担いだのだ.こうした例は,日本のあらゆる分野で見られ,現代の技術の空洞化と地盤沈下を招いたのだろう.

下世話だが,動燃内部の出世競争と足の引っ張り合いが面白い.東大対京大,大学出対高卒も対立軸である.
全体に自慢話が鼻につくが,そこがご愛嬌でもある.
高速増殖炉の可否,各エネルギー利用の可否といった高邁な議論には無縁.プル子という芯がなかったら,単なるサラリーマン小説に終わっていたところ.

大先輩の著書に勝手なことを申し上げました.お許しください.

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