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山手線が転生して加速器になりました。

2024-08-12 09:03:13 | 読書
松崎有理「山手線が転生して加速器になりました。」松崎有理,光文社 (文庫 2024/8).
書名には句点「。」までを含める.
 
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全人類、ずうっっとフルリモートです! 
 無人となった東京で、山手線が加速器=物理学者の顕微鏡、べんりでだいじな実験装置(ただし巨大)に転生! よくわからないけどすごい奴で、しかもヒトの言葉がしゃべれるのである【表題作】。蔓延する超強力ウイルスのパンデミックを恐れ、都市文明を放棄した人類はすべてリモートで生きている。そんな世界を舞台に、奇想天外な発想とユーモアが爆発する傑作が詰まった短篇集。
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6篇の短編集 + おまけ「経済学者の目から見た人類史」と作中年表.
新聞広告でタイトルが気になり電子本を購入.
表題作の初出は『小説宝石』2021 年 7月号.上記 CM のようにパンデミックで放棄された東京の山手線の軌道をミュオンコライダとして利用するというアイデアの小説化...と言いたいが,小説までは行っていない,思いつきの羅列.でも楽しめた.
チャージとかエネルギーとか,きな臭い数字はなし !  
地震は ? なんて言いっこなし.
 
じつは 16 トンの前職は加速器屋であった.仲間内で,中央線の中野・立川間の直線部分 23km を電子・陽電子リニアコライダとして利用することをお茶飲み話にした覚えがある.ちなみに現在北上山地に計画中の ILC 国際リニアコライダの加速部分の,実験開始時の長さは, 図のの赤線の 20km である.
空から見た山手線は図のように単純な円でもレーストラック型でもないので,そちらの円形加速器化は考えなかった.
 
 
この小説では,果たしてこの区間はすでにリニアコライダ化されている.ふたつの加速器 !? は AI 化されていて人語を喋る.山手線は女性研究者に好意を持ち,また公共交通に比べると何の役にも立たない加速器として働くのはいだとごねたりするのが,ご愛嬌.
 
文庫本には「山手線が転生して加速器になりました。」の続編「山手線が加速器に転生して一年がすぎました。」も掲載されていて,2,000km 上空の軌道周回軌道をとるレーザー干渉計宇宙アンテナ自律型観測施設,愛称リサコが登場する.
軌道周回軌道の利用も加速器屋の茶飲み話ではあったのだけれど...
 
東京が無人化するという好 ? 条件下なら,中央線軌道のリニアコライダ化は (この小説よりもっと真面目に) 考える価値がありそう.でもぼく的には,レーザー・プラズマ加速器を推したい.

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