Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

上野千鶴子「在宅ひとり死のススメ」

2021-04-23 09:15:35 | 読書
文藝春秋 (文春新書 2021/01).

目次 : 第1章 「おひとりさま」で悪いか?/ 第2章 死へのタブーがなくなった/ 第3章 施設はもういらない!/ 第4章 「孤独死」なんて怖くない/ 第5章 認知症になったら?/ 第6章 認知症になってよい社会へ/ 第7章 死の自己決定は可能か?/ 第8章 介護保険が危ない!

こどもがいないから,ふたり暮らしの行き着く先が おひとりさま であることは自明.そうなったら施設に入るのかなと漠然と考えていた.これを読んで在宅ひとり死もいいかなと思うようになった.しかしよく考えてみるとその理由は,施設を探す面倒を避けたいだけ ?

第3章は「施設はもういらない」.ここには,看取りのコストは 病院 > 施設 > 在宅 という不等式があり,在宅ひとり死にいくら必要か が,算定されている.
このあたりは威勢がいいのだが,「第5章 認知症になったら?」あたりになるとトーンダウンする.続く第6章のタイトルが「認知症になってよい社会へ」...ということは,現在の社会では,うっかり認知症にはなれないと言っているようである.
第7章は安楽死/尊厳死否定論.著者の言うことを丸呑みする気にはならない.
第8章では,今まで持ち上げられてきた介護保険が,改訂ごとに使い勝手が悪くなってきたと貶められる.この章の文章は第7章までに比べると難しくて読みづらい.

在宅看取り自己負担の最高は月額160万円と言うところらしい.不可能な金額ではない...というより,この本はこの程度は負担できる層を対象としているのだろう.しかし,この金額を在宅ひとり寝の老人がどう融通するすればいいのだろうか. 株を売る・貯金を降ろす...もままならないだろう.
在宅ひとり死にそなえ,家には緊急コールをつければいい.呼吸・血圧などの計測データを医療センターに直結すればいいとおっしゃるが,自分が住んでいる地方都市でそれが可能なのかどうか.チェックが必要.

この本で感じる違和感はふたつの事実から生まれていると思う.
ひとつは著者が独身であること. 第1章から おひとりさま讃歌だが,疑問がないでもない.
ふたつめは著者が 1948 年生まれで,まだ若いこと.だから想像力が足りない.親類・知人・友人が次々に逝去していく年齢になったら考えが変わるかも.

結局,本にいろいろ書いてあっても,自分のことは自分で対処しなければならない.しかし認知症にならないまでも,気力が衰えれば,それは不可能になる.
病院も施設も営利目的だ.これにならって,在宅ひとり死を請け合うことをビジネスにすれば儲かりそう.

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第30回記念 波の会展 | トップ | 最後まで読めなかった (読ま... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事