Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

辻まことマジック

2010-11-28 12:04:13 | 読書
琴海 倫著 未知谷(2010/12)

ウィキペディアには
--- 辻ー(つじまこと 1913-1975)は,日本の詩人・画家.山岳・スキーなどをテーマとした画文や文明批評的なイラストで知られる.日本におけるダダイズムの中心的人物辻潤と,婦人解放運動家であり関東大震災時に虐殺された伊藤野枝を両親に持つ ---
とある.

著者は,ホームページ「辻まことの世界に魅せられて」を運営.私がこの本を知ったのもこのページから.このHPが縁で,辻まこと令嬢・辻ナオ (直生?) さんとメル友となったことが,この本が生まれるひとつのきっかけとなったらしい.

カバーには,辻まことの自画像,最後の著書「すぎゆくアダモ」の挿画とともに,伊藤野枝と吉野せいの写真が載っている.本の内容が,女性の視点から見た辻まことという感じで,それをこの二枚の写真が象徴しているようだ.このカバーデザインは,辻まことの好みではないと思う.
でも,よく見れば,野枝とまことは似ている.

ちなみに,この本は,紀伊国屋書店では女性問題の棚に配置されていた.

伊藤野枝に関する記述は力が入っている.

吉野せいは「洟をたらした神」の著者で,その最初の原稿が,辻まことと関係が深い雑誌「アルプ」に載ったことから,著者は吉野と辻の関係を想像する.そこから,「すぎゆくアダモ」で釣り船屋のおじいさんが語る,うなぎと山芋の解釈に話が飛ぶ.こうしたことが,本書の中核「辻まことマジック」と題された章に記述されている.
新しい視点で,それも有りだとは思うが,ワタクシ的には多少違和感がある.

辻まことの自死 (自殺という言葉はさけられている) は.自ら実行した尊厳死という文章に共感.令嬢が,周囲が父の自死を隠したことに反発したというのにも共感.

辻まことに対する批判的な文章は皆無.全体に,著者が辻まことに宛てたファンレター,ラブレターといった趣がある.辻まことファンとしては,新しい発見もあって,気持ちよく読める本だった.

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