ジャン・エシュノーズ 著, 関口 涼子訳 みすず書房 (2007/10)
帯によれば
ひげを剃り髪を撫で付けた「ボレロ」の作曲家モーリス・ラヴェルの、アメリカ訪問に始まる晩年の十年を生き生きと描く、まるで音楽みたいな小説。モーリアック賞に輝く最新作。
訳者のあとがきによれば,原文のひとつひとつの文章はかなり長いのだが,時計職人のような緻密なシンタックスと性格に配置された読点によって軽妙にアクセントが付けられている.またときとして挟まれる,話し言葉に近い軽い決まり文句が,現在形と自由間接話法とともにリズムを作っているという.音楽のような小説というゆえんである.
訳者は日本語・フランス語のふたつの言語で活動している詩人とのこと.翻訳に当たっては,原文の一文章を訳文の一文章に対応させ,出来る限り現在形を用いたとのこと.たしかに音楽が感じられる,達意の翻訳である.100ページちょっとの本だが,もったいないことにあっという間に読み終わってしまった.
内容から伝記と言うより,ラヴェルを題材にした小説というのが適当だろう..
何を食べ,どんな服装をして,という微に入り細に入った描写で真に迫る.ボレロをトスカニーニが倍のテンポで演奏するとか,左手のピアニスト・ヴィトゲンシュタインが左手の協奏曲を装飾音符だらけにして演奏するとかいうくだりが面白い.エピソードのなかには,「これを信じる義務はない」と但し書きがついたりする.不眠対策 (ラヴェル不眠に悩んでいた) のテクニックが「その一」として表われ,章が変わった忘れた頃にその二,さらにその三が全然脈絡なく現れたりする.
やはりあとがきによれば,いままでのラヴェルのイメージが破壊されたことにより,読者の反応は賛否ふたつに分かれたという.自動車事故に遭って認知症になり,最後は頭蓋骨をのこぎりで切られて死ぬという最後はかわいそう.
帯によれば
ひげを剃り髪を撫で付けた「ボレロ」の作曲家モーリス・ラヴェルの、アメリカ訪問に始まる晩年の十年を生き生きと描く、まるで音楽みたいな小説。モーリアック賞に輝く最新作。
訳者のあとがきによれば,原文のひとつひとつの文章はかなり長いのだが,時計職人のような緻密なシンタックスと性格に配置された読点によって軽妙にアクセントが付けられている.またときとして挟まれる,話し言葉に近い軽い決まり文句が,現在形と自由間接話法とともにリズムを作っているという.音楽のような小説というゆえんである.
訳者は日本語・フランス語のふたつの言語で活動している詩人とのこと.翻訳に当たっては,原文の一文章を訳文の一文章に対応させ,出来る限り現在形を用いたとのこと.たしかに音楽が感じられる,達意の翻訳である.100ページちょっとの本だが,もったいないことにあっという間に読み終わってしまった.
内容から伝記と言うより,ラヴェルを題材にした小説というのが適当だろう..
何を食べ,どんな服装をして,という微に入り細に入った描写で真に迫る.ボレロをトスカニーニが倍のテンポで演奏するとか,左手のピアニスト・ヴィトゲンシュタインが左手の協奏曲を装飾音符だらけにして演奏するとかいうくだりが面白い.エピソードのなかには,「これを信じる義務はない」と但し書きがついたりする.不眠対策 (ラヴェル不眠に悩んでいた) のテクニックが「その一」として表われ,章が変わった忘れた頃にその二,さらにその三が全然脈絡なく現れたりする.
やはりあとがきによれば,いままでのラヴェルのイメージが破壊されたことにより,読者の反応は賛否ふたつに分かれたという.自動車事故に遭って認知症になり,最後は頭蓋骨をのこぎりで切られて死ぬという最後はかわいそう.