Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

音楽みたいな小説『ラヴェル』

2008-07-11 08:30:20 | 読書
ジャン・エシュノーズ 著, 関口 涼子訳 みすず書房 (2007/10)

帯によれば
ひげを剃り髪を撫で付けた「ボレロ」の作曲家モーリス・ラヴェルの、アメリカ訪問に始まる晩年の十年を生き生きと描く、まるで音楽みたいな小説。モーリアック賞に輝く最新作。

訳者のあとがきによれば,原文のひとつひとつの文章はかなり長いのだが,時計職人のような緻密なシンタックスと性格に配置された読点によって軽妙にアクセントが付けられている.またときとして挟まれる,話し言葉に近い軽い決まり文句が,現在形と自由間接話法とともにリズムを作っているという.音楽のような小説というゆえんである.
訳者は日本語・フランス語のふたつの言語で活動している詩人とのこと.翻訳に当たっては,原文の一文章を訳文の一文章に対応させ,出来る限り現在形を用いたとのこと.たしかに音楽が感じられる,達意の翻訳である.100ページちょっとの本だが,もったいないことにあっという間に読み終わってしまった.

内容から伝記と言うより,ラヴェルを題材にした小説というのが適当だろう..
何を食べ,どんな服装をして,という微に入り細に入った描写で真に迫る.ボレロをトスカニーニが倍のテンポで演奏するとか,左手のピアニスト・ヴィトゲンシュタインが左手の協奏曲を装飾音符だらけにして演奏するとかいうくだりが面白い.エピソードのなかには,「これを信じる義務はない」と但し書きがついたりする.不眠対策 (ラヴェル不眠に悩んでいた) のテクニックが「その一」として表われ,章が変わった忘れた頃にその二,さらにその三が全然脈絡なく現れたりする.

やはりあとがきによれば,いままでのラヴェルのイメージが破壊されたことにより,読者の反応は賛否ふたつに分かれたという.自動車事故に遭って認知症になり,最後は頭蓋骨をのこぎりで切られて死ぬという最後はかわいそう.
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買いそびれのイタリア土産

2008-07-09 09:58:47 | エトセト等
上はワインのラベル.
Malvasia di Castelnuovo Don Bosco, Cascina Gilli
とある.
これは学会のディナーでこてこてのアイスクリームのデザートと供された.甘い赤ワインだがぶくぶくと泡立つ.スパークリングワインと違って,泡がビールのように上にたまって,なかなか消えない.それまでにもだいぶ飲んでいたので,これは回った.
あとで酒屋の棚を探したがぼくには見つからなかった.

下はローマ空港で見かけたペンとインクのセット.熊手みたいなのが五線譜用.後のはオタマジャクシ用らしい.Rubinatoというメーカー.4000円弱だったと思う.ミニチュアのバイオリンもついているし,欲しいなぁ,とは思ったが,これで楽譜を書くことはあるまい...と,買うのを思いとどまった.
この店には他にも面白いものがたくさんあった.
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コロッセオの猫

2008-07-07 08:40:44 | お絵かき
これはローマの世界遺産コロッセオにいた猫.ここに住みついているらしい.人間様の立ち入り禁止区域で,K 藤さんがカメラを向けたが悠然と毛づくろいしていた.その写真を見てCDケースに描きました.J 子評「猫じゃなくて猛獣みたい.」

話は変わるが,6月29日にアップしたグラフィティの先頭のは複数のウェブに出ていて,コロッセオに描かれた傑作とのこと.こういうのの著作権はどうなっているのだろう.
コロッセオは落書き美術館とか,そういう目で見てこなかったこと,観光コースを一巡しただけだったのが心残り.
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ハリー・パーチ

2008-07-05 09:31:14 | 新音律
ヘルムホルツの音楽の本を訳してみようと考えていたのだが,二三の音楽家と話したところ,ハリー・パーチの本のほうが...という方もおられたので,
Harry Partch "Genesis of a Music" 2nd. ed., enlarged, DA CARPO (1974).
の訳に挑戦.22.4 x 15 x 3.6 cm のペーパーバック,544ページで2559円.やはり日本の専門書よりずっと安い!!

ハリー・パーチ1901-1974は菱形のマトリックスで43音純正律を唱え,へんてこな楽器を次々に作った.この本の表紙も彼の楽器達.

スキャナーで取り込んでAdobe Pro.でテキストとして認識させるまではどうにかいく.機械翻訳は,フリーソフトではだめ.うまく使えば武器だと言うが,翻訳のプロは10万円クラスのソフトを補助的に使っているらしい.
一行のなかに聞いたことがない単語がひとつふたつはたいてい出てくる.言ってることも大学入試問題みたいに難解.なにしろ日頃相手にしている理科系の英語は,「一足す一は二」くらいしか言っていないもんだから,歯が立ちそうもない.
ただ読み流すのと,日本語に直すのとは全く違う.逐一単語毎に訳すべきか,語順をどうするか,などと考えても時間を食う.

本の最初のほうは高邁な思想が展開されていて取っつきにくいが,マトリックスやへんな楽器が出てくるあたりまでいけば作業もさくさくと行くのではないか...というのが,現在の希望的観測.若い音楽家達も手伝って下さるという約束なので,途中でやめるわけにも行かなくなってしまった.
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木曜日だった男

2008-07-03 11:00:34 | 読書
チェスタトン 南條竹則訳「木曜日だった男 一つの悪夢」 光文社古典新訳文庫 (2008/5)

新訳でタイトルが「木曜日の男」から変わり,原著者もチェスタートンからチェスタトンに変わった.チェスタトンは「木の葉を隠すなら森に。森がなければ作ればいい (死体を隠すには,死体の山を作ればいい)」の,ブラウン神父シリーズで有名.ぼくはシャーロック・ホームズのつぎくらいにこのシリーズを読んで面食らった覚えがある.今回初めてこの「木曜日...」を読んでやはり,なんだこれ..と思った.

裏カバーの惹句によれば
この世の終わりが来たようなある奇妙な夕焼けの晩、十九世紀ロンドンの一画サフラン・パークに、一人の詩人が姿をあらわした。それは、幾重にも張りめぐらされた陰謀、壮大な冒険活劇の始まりだった。日曜日から土曜日まで、七曜を名乗る男たちが巣くう秘密結社とは。

まじめにストーリーを追う小説ではない.古き良きイギリスの小説らしく,女性は登場しない.唯一の例外はロザモンドだが,たいした役割はない.
おもしろいくて,機内で一気に読めてしまった.しかしあとではぐらかされた気分になった.訳者の解説によれば「黙示録」だそうだ.古典というのはこういうものなのかもしれない.この小説は吉田健一 (戦後長く首相だった吉田茂の長男) も訳しているが,いかにも吉田健一好み,

登場人物中,木曜日だった男より,日曜日だった男のほうが理解し難い..
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ベース バラライカ

2008-07-01 12:23:47 | 新音律
学会のレセプションがジェノバの Plazzo Ducale (君主あるいは公爵の宮殿) であった.お酒は十分すぎるほどだが,食べ物はおつまみみたいなものばかりだったので,早々に退出.出てきたら前の広場にバンドがいた.

ご覧のような編成で,ここはイタリアなのに曲はロシア民謡.いっしょに歌うおばさんもいた.右端のは初めて見る楽器だが,ベース・バラライカだと思う.写真ではよく分からないがボデイの三角形の底辺を延長した方向にピンが出ていて,床に加重をかける.このおじさんか音頭をとっていた.左端が普通のバラライカ.あとはドラムスとアコーディオンという編成.ボーカルも入りそう.

明るいがこれでも21時過ぎ.リハーサルの雰囲気.時差ぼけで眠くて本番まで持ちそうもないので,ここも引き上げてしまった.
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reading

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