【社説①・02.06】:ガザの戦後管理 混乱招く「米国が所有」発言
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.06】:ガザの戦後管理 混乱招く「米国が所有」発言
米国がパレスチナ自治区ガザの戦後管理や再建を担うという考えは注目に値するが、そのために米国がガザを「所有」するという構想はあまりにとっぴで衝撃的だ。
トランプ米大統領の発言が国際社会の反発を招き、せっかく実現にこぎつけた停戦に水を差す事態を懸念する。
トランプ氏が、ワシントンを訪れたイスラエルのネタニヤフ首相と会談した。その後の共同記者会見で、トランプ氏は「米国がガザを長期的に所有する」と述べ、ガザを管理し、復興や経済発展に取り組む意向を表明した。
イスラエル軍の攻撃などで倒壊した建物や不発弾を撤去して整地し、住宅やインフラ(社会基盤)を再建する考えを示した。必要であれば米軍を派遣する可能性も否定しなかった。
だが、そのためにガザにいる200万人以上の住民について、ヨルダンやエジプトなどへ移送し、恒久的に定住させると述べた。
これは、国際法に違反する非人道的な提案と言わざるを得ない。例えば戦時の文民保護を規定するジュネーブ条約は、住民の強制移送を禁じている。米国も締約国として、条約尊重の義務がある。
トランプ氏の提案に対し、イスラム主義組織ハマス幹部は「ガザ住民は決して受け入れないだろう」と反発した。ヨルダンやエジプトなどはガザ住民の受け入れを拒否している。
復興のために住民の一時的な避難がどうしても必要だというのであれば、まずは米国が率先して受け入れるべきではないか。
そもそもガザがパレスチナ人の自治区であることは、イスラエルも認めている。トランプ氏が、異なる宗教や民族が入り組んだ複雑な土地柄と、対立を続けてきた歴史的な経緯をどこまで理解しているのか、甚だ疑問である。
ガザではイスラエルとハマスの戦闘が、米国などの仲介で1月にいったん停止した。
3段階で恒久停戦を実現するとしている。第1段階の6週間のうちにハマスがイスラエルから連れ去った人質のうち33人を解放し、イスラエルは収監するパレスチナ人約1000人を釈放する。
今のところ順調に進んでいるが、これからは、ハマスが人質全員を解放する一方、イスラエル軍がガザから全面撤退するとした第2段階に進めるかどうかの難しい局面にさしかかる。
全当事者が冷静さを保ち、停戦合意を維持することが必要だ。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月06日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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