路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【天風録・01.05】:ゆいごん川柳

2025-01-06 07:00:40 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【天風録・01.05】:ゆいごん川柳

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・01.05】:ゆいごん川柳

 この時季、初笑いを誘う落語家の決まり文句がある。「ことしも残すところ、あと360日となりまして…」。大みそかの日取りが決まっている一年ならいいが、人の一生ではピタッとこない

 ▲〈〆切(しめきり)が あれば書きます 遺言書〉。日本財団がせんだって選んだ「ゆいごん川柳」の受賞作に、そんな一句が見える。折り返し地点を過ぎたら遅かれ早かれ、誰しも一度は抱く思いでもある。1(い)・5(ごん)の語呂合わせで、きょうは遺言の日だという

 ▲年明け早々、縁起でもないと言いたくなる半面、ふと思う。年末年始には家族が集う。顔を合わせ、言葉を交わせば、心が改まる。一年の計は元旦にあり―。人生の棚卸しにも、当てはまるのかもしれない

 ▲実は遺言の日は、ほかにもある。4(よい)月15(いごん)日と定めるのが日本弁護士連合会、11(いい)月15日を推す銀行も。習慣というには程遠く、てんでにPRに努めているのだろう。相続登記も義務付けとなって、まだ1年足らずである

 ▲ゆいごん川柳の大賞作は〈遺言を 書いたつもりが 感謝状〉。神妙に振り返ると、周りの力添えに思いが至る。思わず、頭が下がったに違いない。先々受け取った家族からのお返しはきっと、笑顔だろう。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2025年01月05日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・01.05》:戦後80年 米国第一と世界経済 分断乗り越える英知こそ

2025-01-05 02:01:50 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

《社説①・01.05》:戦後80年 米国第一と世界経済 分断乗り越える英知こそ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.05》:戦後80年 米国第一と世界経済 分断乗り越える英知こそ

 世界経済は今年、歴史的な岐路を迎えようとしている。「米国第一」を振りかざして、高関税の発動を予告しているトランプ氏が米大統領に就任するからだ。

 懸念されるのは、各国の景気悪化にとどまらない。第二次大戦への反省から、国際社会が構築してきた多国間協調の枠組みが根底から揺らぐ恐れがある。

大西洋上の戦艦で会談したルーズベルト米大統領(前列左)とチャーチル英首相(同右)。第二次大戦後の世界構想を盛り込んだ「大西洋憲章」を発表した=1941年8月

 戦後秩序の出発点となったのは1944年7月、米東部ニューハンプシャー州の避暑地ブレトンウッズで開かれた会議だった。

 英経済学者のケインズら44カ国の代表が参加し、演説したモーゲンソー米財務長官は30年代の世界恐慌を振り返った。「私たちは経済的な惨劇を目の当たりにしてきました。貿易や投資、そして国際的な信頼までもが破壊され、ついには戦争を生み出したのです」

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月05日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《憂楽帳・01.04》:異国の歌

2025-01-04 13:02:30 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

《憂楽帳・01.04》:異国の歌

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《憂楽帳・01.04》:異国の歌

 台湾南部・屏東(へいとう)県の山中にある先住民パイワン族の集落を、日本や台湾の研究者らと訪れた時のことだ。

 集まっていた20人ほどのお年寄りが私たちを見つけ、数人が日本の唱歌を歌い始めた。「桃太郎」に「靴が鳴る」。95歳のおばあさんが披露したのは旧日本軍の軍歌だった。

 「荒波ほゆる赤道を にらみて立てる南(みんなみ)の 守りは我ら台湾軍」

 1945年まで半世紀続いた日本統治時代に、先住民向けの学校で学んだ。名前を教えてもらえますかとペンを手渡すと、震えるような文字で「吉島春子」と記した。 

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【社説・01.01】:【年初に 戦後80年】教訓生かす決意を新たに

2025-01-04 05:05:30 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【社説・01.01】:【年初に 戦後80年】教訓生かす決意を新たに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.01】:【年初に 戦後80年】教訓生かす決意を新たに

 2025年が明けた。

 光の差す一年を願い、決意を新たにする一日になる。

 同時に、今年は膨大な犠牲を生んだ太平洋戦争、第2次世界大戦の終結から80年の節目となることも心に刻みたい。

 昨年末、被爆の実相を証言し、核兵器廃絶を長年訴えてきた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)にノーベル平和賞が授与された。受賞演説で92歳の田中熙巳(てるみ)代表委員は「10年先には直接の体験者としての証言ができるのは数人になるかもしれません」と運動の継承を訴えた。
 広島、長崎の被爆だけではない。戦争体験世代は高齢化し「生の声」を聴く機会は失われつつある。
 総務省の一昨年秋の人口推計によると、戦前生まれは総人口の1割強だった。14年度に約5万人いた旧軍人の恩給受給者は、23年度には約1400人となった。長い歳月の流れが直接の記憶を遠ざけていく。
 世界に目を転じると、惨禍は各地で再現されている。
 ロシアがウクライナへの全面侵攻を始めてから2月で3年になる。双方とも死傷者は既に数十万人に上ると推計される。パレスチナ自治区ガザでの戦闘もやまず、ガザ側の死者は4万5千人以上とされる。
 米国ではトランプ次期大統領が今月就任する。いずれも早期終結に言及するが、道筋は示していない。それが国際秩序や将来の平和に寄与するやり方かも見通せない。
 アジアでも中国が台湾統一への圧力を強め、北朝鮮はロシアとの軍事協力を深める。日本政府はこの10年余り、防衛力強化を推し進め、平和国家の国是である「専守防衛」は大きく揺らいでいる。
 14年には現行憲法の核となる9条の解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。制約はあるとはいえ、自衛隊の海外での武力行使に道を開いた。
 22年には反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を決め、23年度からの5年間で防衛費に総額約43兆円の巨費を投じる。23年には殺傷能力がある武器の輸出を決めた。
 問題は、国民が選んだ与党の「1強政治」だったにせよ、これら国のあり方を転換する決定が、国民的な議論や合意を欠いたまま行われてきたことではなかったか。
 昨秋の衆院選で石破茂政権は少数与党になった。28年ぶりに予算案が修正されるなど、与党の独断専行が許されない熟議の兆しが見える。
 戦前戦中に塗炭の苦しみを味わった世代が、圧倒的多数になった戦後世代に託したいものは何か。戦後世代は、あの戦争と現代の国際社会にどう向き合うべきか。公論で物事が決まる環境を、あらためて自問自答する機会としなければなるまい。

 今年は6434人が犠牲になった阪神大震災から30年でもある。その後も東日本大震災、熊本地震、1年前の能登半島地震と震災のたびに次の南海トラフ地震に備える私たちが学ぶべき教訓は増えている。

 教訓を受け止め、考える決意を新たにする年にしたい。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【小社会・01.01】:やなせさんと巳年

2025-01-04 05:05:25 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【小社会・01.01】:やなせさんと巳年

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・01.01】:やなせさんと巳年

 2025年が明けた。ことしは漫画家、やなせたかしさん夫妻をモデルとするNHK連続テレビ小説「あんぱん」も楽しみ。終戦直後に在籍した高知新聞も含め、どう描かれるだろう。

 昨夏、ある研修でやなせさんが残した1枚の絵を見せてもらった。従軍した中国戦線、終戦の日。兵隊7人が小川の堤を一列で走っている。ためてきた食料を敵に食べられるぐらいなら食べ尽くせ、と命令された。満腹になっても、走っておなかをすかせては食べた。戦争の愚かさ、不条理を描いた風刺という。

 終戦で「正義はある日突然逆転する」とも思い知った。「逆転しない正義は献身と愛」という思想は、身を削って空腹の人を助けるアンパンマンが生まれた土台として知られる。

 やなせさんは12年前、一回り前の巳(み)年の秋に亡くなった。その年の本紙連載「オイドル絵っせい」にはこうある。「それにしても最近の世界の動きは不気味だなあ。もう戦争と天災はカンベンしてほしいとつくづく思う」

 ことしは戦後80年。世界ではいまもウクライナや中東で、惨禍が再現されている。「専守防衛」の形骸化が進む日本の周辺も穏やかでない空気がある。天災の方も、やなせさんの没後も熊本地震や能登半島地震が続き、教訓は増えていく。人々の備えは十分だろうか。

 巳年。蛇は脱皮を繰り返すことから再生や成長を象徴するという。教訓を生かした再生、成長の年になれば。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】  2025年01月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.01】:<戦後80年に考える>:原点を見つめる 平和と民主主義誓い直す

2025-01-04 04:05:30 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【社説①・01.01】:<戦後80年に考える>:原点を見つめる 平和と民主主義誓い直す

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.01】:<戦後80年に考える>:原点を見つめる 平和と民主主義誓い直す 

 戦後80年を迎えた。
 
 焼け跡から戦争をしない国として立ち上がった日本は高度経済成長を遂げ、繁栄を築いた。
 
 そうした時代は過去のものとなりつつある。急速に人口が減少し、経済は地盤沈下した。
 
 分断が進む世界は戦火がやまない。ロシアのウクライナ侵攻は来月で3年となり、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への無差別攻撃も続く。
 自国第一のトランプ氏が今月米国大統領に返り咲く。中国との対立はさらに激化しそうだ。
 日本政府は従属的な対米関係の下で自衛隊の増強と米軍との一体化を加速させている。集団的自衛権の行使を認め、敵基地攻撃能力の保有を決めた。憲法の平和主義が揺らいでいる。
 「戦争ができる国」に逆戻りする流れを止めねばならない。自由で公正な社会を守るため、平和と民主主義を誓った戦後の原点を見つめ直す時である。

 ■被団協が与えた希望

 改めて着目すべきは戦争放棄と戦力不保持・交戦権の否認を定めた憲法9条の成立過程だ。
 連合国軍総司令部(GHQ)の案を基に政府が帝国議会に提出した憲法改正案の9条に「平和」の2文字はなかった。1項の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」との文言は社会党議員らの主張を踏まえ加えられた。
 9条に積極的意義を吹き込んだ平和主義の源流と言える。
 「押しつけ憲法論」や、戦後日本の歩みを「一国平和主義」とする批判への反証になろう。
 当時の審議で論陣を張った一人に森戸辰男がいる。経済学者だった戦前に思想弾圧を受け、戦後は社会党結成に参画した。1946年1月の論文「平和国家の建設」を古関彰一独協大名誉教授が「平和憲法の深層」(ちくま新書)で紹介している。
 「平和国家は理念的平和主義に留まることなく、実践的・方法論的平和主義に進出することによって(略)、はじめて完全な平和国家となることができる」
 平和主義を実践し現実を変える力にする。大国が身勝手に振る舞う現代に示唆を与える。
 ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の活動がまさに当てはまる。核兵器は絶対悪だと訴え続けて国際世論を喚起し、核兵器禁止条約制定を後押しした。
 授賞式に広島、長崎などの高校生平和大使4人も出席した。
 行動し、被爆者の訴えを若い世代が受け継いでいけば、いつかは現実の岩盤を崩せる。諦めてはならない、大切なのは声を上げ続けることだ―。
 平和賞にはそんな希望を抱かせた意義も見いだせよう。

 ■真摯な反省の表明を

 戦争の記憶を風化させないためには反省と総括が必要だ。
 村山富市首相が出した戦後50年の村山談話は侵略と植民地支配への「痛切な反省と心からのおわび」を表明した。安倍晋三首相の戦後70年談話も間接的な表現ながらこれを継承した。
 しかし村山談話は国民的議論の末に生まれたものではなく、安倍政権の支持勢力には歴史修正主義的な考えが根強かった。
 破局への道をなぜ歩んでしまったのか、引き返せなかったのか。国として歴史の本格的検証をせずにきた結果、戦争責任は曖昧になり、中国や韓国との間に今も歴史問題が影を落とす。
 歴史に向き合い、真摯(しんし)に反省する和解の営みを世代を超えて続ける。その姿勢を日本の首相と国会は内外に表明すべきだ。

 ■政治の信頼取り戻せ

 過去への認識を国民が共有する上で欠かせないのは政治への信頼回復である。昨年は裏金問題が国政を揺るがし、自民、公明両党は少数与党に転落した。
 政党政治の弊害として「金の誘惑」を指摘した中高生向け教科書がある。48年に文部省が刊行した「民主主義」だ。
 財閥がカネを出し、政権は金権によって左右される。戦前の日本では、しばしばそういうことが行われた―と説く。
 「昭和の時代になって、軍を中心とする独裁政治が横行するにいたった大きな原因の一つは、こうした政党政治の腐敗にあった」。現代政治への警句のような教科書を官が作っていた。民主主義の定着に懸命だった当時の熱量に驚きを禁じ得ない。
 臨時国会で改正された政治資金規正法も抜本改革には遠く、野党が求めた企業・団体献金の禁止には至らなかった。通常国会でカネのかからない透明な政治を実現しなければならない。
 
 交流サイト(SNS)を通じ真偽不明の情報が拡散し、選挙に影響を及ぼす時代になった。
 
 民意がゆがめば、熟議によって合意を形成する本来の民主政治は望めなくなる。ポピュリズム的な主張で民衆を扇動する指導者が国を誤った方向に導く。思えばヒトラーのナチス・ドイツもそんな経緯で生まれた。
 
 歴史は韻を踏むといわれる。そうならないよう日本は戦後民主主義の初心に立ち返り、その価値を世界に発信すべきだ。
 
 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月01日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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《現代を見る・01.04》:「永遠の戦後」守る、新聞の役割=栗原俊雄

2025-01-04 02:00:30 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

《現代を見る・01.04》:「永遠の戦後」守る、新聞の役割=栗原俊雄

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《現代を見る・01.04》:「永遠の戦後」守る、新聞の役割=栗原俊雄

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【社説①・01.03】:戦後80年の岐路 平和主義の基盤を紡ぎ直せ

2025-01-03 16:00:50 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【社説①・01.03:戦後80年の岐路 平和主義の基盤を紡ぎ直せ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.03】:戦後80年の岐路 平和主義の基盤を紡ぎ直せ

 <展望2025> 

 敗戦の焦土からの再出発に、中学教科書「あたらしい憲法のはなし」は問いかけた。

 「二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか」

 いまも「戦後」なのは80年にわたり戦火を交えず、戦没者を出さなかったからだ。

 だが、昨夏の世論調査で「今後、戦争をする可能性がある」とした人が約半数に上った。再出発の憲法に誓った平和主義が危うい岐路に立たされている。基盤を紡ぎ直さねばならない。

 中国の軍拡や北朝鮮の核開発など周辺情勢の不安定化を挙げ、政府はこの10年余りで安全保障政策を大きく変容させた。

 安倍晋三政権は、歴代内閣が禁じてきた集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更で認め、自衛隊の活動範囲を広げた。

 岸田文雄政権では「防衛力の抜本的強化」を掲げて安保関連3文書を改定。他国への反撃能力(敵基地攻撃能力)保有や防衛費「倍増」に踏み出した。

 禁じていた武器輸出も「防衛装備移転」と称して解禁し、殺傷兵器である次期戦闘機の第三国輸出にも道を開いた。

 憲法9条に基づく「専守防衛」を空洞化し、踏み越えようとする大転換だ。米軍と自衛隊の指揮統合も進み、戦争に巻き込まれるばかりか戦端を開き、軍拡と紛争を助長しかねない。

 それを国民的な議論もなく、与党合意と閣議決定で押し付けた「自民党1強」政治だった。

 矢面に立たされるのが沖縄・南西諸島である。台湾有事を念頭に3島に陸自駐屯地を開設。沖縄本島に敵基地攻撃用ミサイルを配備方針で、相手の攻撃対象となる危険が隣り合わせだ。

 米軍の辺野古新基地建設や相次ぐ米兵犯罪と併せ、県民の負担と反感が増している。真摯(しんし)な対話を重ねなければ防衛基盤を揺るがしかねない。「物の言えない」同盟でなく、米側に特権を与える日米地位協定の改定にも毅然(きぜん)と動くべきだ。

 装備強化の一方、扱う自衛官の定員割れは約2万人に及び、「倍増」財源のうち所得税増税の先送りも続く。武力に偏重せず、掲げ続ける平和主義の外交力と、実効性を伴う必要最小限の防衛力を組み合わせた現実的な安全保障策が求められる。

 一方、遠のく戦争の体験と記憶をどう引き継ぐかが課題だ。昨年のノーベル平和賞も被爆証言が広げた「核タブー」の果たす抑止力に光を当てた。

 戦中世代の高齢化が進み、遺族活動や慰霊碑管理も難しくなるなど「体験者なき戦後」が迫る。

 舞鶴引揚記念館(舞鶴市)は抑留体験者の語り部がいなくなり、証言映像などをデータベース化し、来館者に対話システムで伝え始めている。これまでの証言や遺品の収集・活用とともに、子や孫が次の世代へ語り継ぐ環境を整えたい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月03日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.01】:80年を越えて 「戦後」を積み重ねていく

2025-01-03 06:05:40 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【社説①・01.01】:80年を越えて 「戦後」を積み重ねていく

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.01】:80年を越えて 「戦後」を積み重ねていく 

 新年を一編の詩から始めたい。

 昨年92歳で亡くなった詩人の谷川俊太郎さんに「戦争と平和」という作品がある。

 戦争と平和は結婚している。夫である戦争は、戦争してしまう自分を抑えられず、うんざりしている。2人は語り合う。

<「私を愛していないのね」と妻は夫に言う

「愛していればもっと私を大切にしてくれるはずよ」

「愛しているよ」と夫は答える

「愛しているからこそおまえのために戦っているんだ

そういうおまえこそおれを愛しているのかね」>

 平和のために戦争する。

 人間はそんな詭弁(きべん)を繰り返し、戦いを始めてきた。谷川さんはこの詩とは別に<戦争が終わって平和になるんじゃない/平和な毎日に戦争が侵入してくるんだ>との言葉を残している。

 戦後80年の年を迎えた。先の大戦が終結した1945年以来、日本は平和憲法の下、不戦を貫いてきた。これからも「戦後」を積み重ねていく。読者の皆さんと新年にそう誓いたい。

 ■核兵器使えば「自滅」

 大戦であまたの人が亡くなり、国外でも多大な犠牲を強いた。体験者がつらい経験を語り、不戦の思いが継承されてきた。

 象徴的なのは昨年、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞したことだ。

 被爆者は身をもって核兵器の悲惨さを訴え、世界に警告してきた。現在まで核兵器が使われていないのは被爆者の存在が歯止めをかけてきた証しだ。

 授賞式の演説で、代表委員の田中熙巳(てるみ)さん(92)は「人類が核兵器で自滅することのないように」と力を込めた。

 世界の核弾頭は1万2千発を超える。独裁的指導者は核使用をちらつかせ、核抑止への依存も高まっている。偶発的なことが起きれば、田中さんの言う通り私たちは自滅してしまう。

 日本周辺では中国や北朝鮮、ロシアの不穏な動きが続く。今月には米国で自国第一主義を掲げるトランプ氏が大統領に就任し、米中対立が懸念される。

 日本がどこかの国と単独で交戦するイメージは非現実的だろう。ただ他国同士が衝突し、日本が巻き込まれる可能性はある。日本政府は外交や経済など多面的な安全保障を築き、戦争そのものを防がなくてはならない。

 見渡せば世界で排外主義が広がり、人々の分断は深まっている。民間交流を進め、市民同士で何層にも固い絆を結んでいきたい。

 ■戦争は外から来ない

 間もなく阪神大震災から30年になる。戦後最大の都市直下型地震で6千人以上が亡くなった。心のケアが注目され、社会が正面から人の心に向き合う契機となった。

 神戸大医学部教授として前線に立った精神科医の故中井久夫さんは、災害時と戦時の共通点に「生存者罪悪感」を見た。自分だけ生き残ってしまったという申し訳なさは正常な心理である。

 しかし戦時下は、指導層が求める苦痛を国民が耐え忍ぶべきものとして受け止めるよう、罪悪感が利用された。皆が被害に遭ったのだから我慢せよという「受忍論」に他ならない。

 日本には空襲被害者への補償がない。被爆者への手当なども明確な国家補償ではない。国の責任は曖昧で、国家と個人の関係において戦争を総括できていない。

 中井さんは「戦争への心理的準備は、国家が個人の生死を越えた存在であるという言説がどこからとなく生まれるあたりから始まる」とも記した。

 戦争に直結せずとも、国のため、社会全体のためには個人がないがしろにされても仕方ない、と見過ごす空気が漂っていないだろうか。民主主義が軽んじられ、少数者の異論が封じられていないか。私たちは時代の空気に注意深くあらねばならない。

 銃後の美談に関する著書がある北九州市平和のまちミュージアムの重信幸彦館長は「戦争は外側からやって来るという捉え方を見直す必要がある」と語る。

 近現代の総力戦は戦場と銃後が一体となり、人々の生活も内面も全てが戦争に前のめりになっていく仕組みである。戦争は私たちの足元から立ち上がる。その自覚が必要なのだろう。

 大切なのは戦争は嫌だと感情的に受け止めるだけでなく、戦争について知り、考え、問い続けることだと重信さんは強調する。正義を振りかざさず、一人一人が戦争のイメージを「経験」として積んでいく。戦争を二度と起こさないためにできることであろう。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月01日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.01】:年のはじめに考える あわてない、あわてない

2025-01-01 07:30:50 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【社説①・01.01】:年のはじめに考える あわてない、あわてない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.01】:年のはじめに考える あわてない、あわてない 

 2025年になりました。ちょうど1年前のきょう、能登半島地震が発生しました。
 
 「よりにもよって元日に…」と天を仰いだ方も多かったでしょう。
 
 その8カ月後にはまた、よりにもよって、その能登を今度は豪雨災害が襲いました。今なお避難生活を余儀なくされている人も少なくありません。壊された暮らしや仕事の復興が順調に進むよう願ってやみません。
 
 ある防災の専門家がわが国を呼んで曰(いわ)く、「災害の百貨店」と。まこと、この列島で生きるとは、自然災害と生きるということ。さらに防災、減災の力をつけていくほかありませんが、天為ならざる人為の災禍についても、心配事がないわけではありません。

 ◆戦後よ続け、どこまでも

 一番、怖いのは、やはり戦争です。防衛力増強の名の下、ここ数年でぐんとキナくさくなった感もあるわが国ですが、今年は終戦から80年の節目の年。この「戦後」をどこまでも続けていくには、何が必要でしょうか。
 やはり、民主主義の政治体制は重要だろうと思います。無論、イスラエルや米国など「反証」は少なくありませんし、民主主義でさえあれば「戦争を避けられる」などというつもりはありません。でも、ざっと物事の決まり方を比べてみてください。
 <権威主義体制>なら、独裁的権力(者)が「ゴー」を決断→おしまい。<民主主義体制>だと、選挙で選ばれた権力(者)が「ゴー」を決断→議会に提案→異論が出て議論→賛成多数で結論と、手続きがややこしく時間もかかる。その過程で、結論が「ストップ」に変わる余地もあります。どうでしょう。少なくとも「戦争を避けられやすい」のは後者だという気がするのですが。
 ただ、気がかりなのは、今、述べたように、民主主義の意思決定は複雑で時間がかかるが、人間というものは生来、せっかちにできているという点です。
 時間は無限でも寿命は有限だからか、私たちは何事であれ急ぎがち。でなければ、<急(せ)いては事を仕損じる>のような諺(ことわざ)からTVアニメの一休さんの口癖、「あわてない、あわてない」に至るまで、性急を戒める言葉が、世にこれほど多いはずもないでしょう。
 まして、情報通信から何からどんどんスピードが速くなる当今、私たちのせっかちさがいや増していても不思議はない。それは「タイパ」という言葉の流行からも想像がつきます。
 しかし、です。もし、手っ取り早く結果に行き着けるのが、タイムパフォーマンスが「良い」ことだとすれば、嗚呼(ああ)、民主主義はむしろ正反対ではありませんか。

 ◆「すったもんだ」が正常

 昨秋の総選挙では、自民・公明の与党が過半数割れに追い込まれました。長く1強の座を恣(ほしいまま)にし、異論を歯牙にもかけぬ驕慢(きょうまん)も目立った自民党に、民意が強く反省を求めたことは健全というべきでしょう。以後、自民党は例の「103万円の壁」見直しや政策活動費廃止などでは野党の意見をいれているようですが、当然、簡単に折り合えない場合も出てくるでしょう。しかし、もはや与党は早々に議論を打ち切って「多数決」という得意技は使えません。
 提案に異論があれば、その差を議論と譲歩、妥協で埋めて成案を得る営為こそが民主主義の想定する政治であって、わが国の政治はやっと正常に復したと言えなくもありません。ただし、すったもんだで、なかなか結論が出ないことも増えてくるはずです。
 もし民意がそれを、タイパが悪い、「決められない政治」だと見限って、選挙で政治地図を塗り替えるなら、もちろんそれも民主主義。でも、仮に、その結果として多数与党が生まれ、以前の自民党よろしく、議論もそこそこに何事であれさっさと「決めてしまう政治」を行うのであれば、到底、民主主義的とはいえません。どれほどタイパが良いとしても、です。

 ◆「タイパ」最高は独裁制

 とにかくタイパを求めるなら、一番は独裁制でしょうね。前述のように、権威主義の意思決定のスピードは民主主義と段違いで「決められない」とは無縁ですから。でも、だからって、公正な選挙で選ばれたわけでもない特定の個人や組織が国家を牛耳り、法治も表現の自由もないような体制を望む人はおられますまい。結局、私たちに必要なのは、タイパの悪さを辛抱し、まどろっこしさを受け入れる雅量なのだと思います。逆にせっかちに結果を求め、性急に判断する傾向を強めていったら、社会はどんどん権威主義に近寄っていってしまうでしょうから。
 
 あの一休さんの決まり文句。タイパの魔を振り払うのには、絶好の呪文かもしれません。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月01日  07:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・01.01】:被爆80年 核廃絶の流れ 確かなものに

2025-01-01 07:00:50 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【社説・01.01】:被爆80年 核廃絶の流れ 確かなものに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.01】:被爆80年 核廃絶の流れ 確かなものに 

 日本被団協へのノーベル平和賞授賞式で、フリードネス・ノーベル賞委員長が世界に訴えかけた言葉が強く印象に残っている。

 「安全保障を核兵器に依存するような世界で、文明が存続できると信じるのは浅はかだ」

 フリードネス氏は続けた。核兵器がどれだけ人道に背いているかを身をもって示してきた被団協に学び、「核兵器のない世界」を諦めてはならないと。

 被爆者運動の重みと被爆地の願いが、世界に届いているのだと改めて確認できたからだ。多くの壁が立ちはだかろうとも、核兵器廃絶の流れを確かなものにせねばならない。

 米国が広島と長崎に原爆を投下し、ことし80年。人類が核と向き合ってきた歳月でもある。

 ■浅はかな為政者

 再び使われこそしなかったが、葬り去ることもできなかった。それどころか、手放そうとしない強国のエゴに今も振り回されている。核被害の恐ろしさが、核保有国に響いていない状況を放っておけば、人類は破滅への道をたどるしかない。

 ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルが繰り広げる中東の戦闘で、多くの市民が命を奪われている。ロシアは核による脅しを繰り返し、イスラエルは政府高官らが相次ぎ核使用の可能性を示唆した。核の力を信奉する為政者たちの浅はかさを許すわけにはいかない。

 米中対立も影を落とす。米国は24年5月に臨界前核実験を強行し、中国は核弾頭の増産を急ぐ。北朝鮮は核実験まで準備しているとされる。日本をはじめとする米国の同盟国は、厳しい安全保障環境にとらわれて思考停止に陥っている。

 核による脅し合いは国と国民を守る手段にはなり得ない―。被爆者の声に耳を傾け、国際社会がそう決意した証しが、21年に発効した核兵器禁止条約だ。

 24年9月現在で94の国・地域が署名、73の国・地域が批准している。被団協の受賞は、志を同じくする国や、国家を超えて連帯する市民の追い風になるはずだ。被爆者が命を懸けて築き上げた「核使用のタブー」を「核保有のタブー」へと高めていく必要がある。

 ■核禁条約参加を

 同時に被団協受賞は被爆国日本に具体的な行動を迫る。その一つが条約批准だろう。核廃絶の流れを途切れさせないためにも、この機を逃すべきではない。

 石破茂首相は8日、被団協代表委員の田中熙巳(てるみ)さんらと面会する。その場で3月に開かれる第3回締約国会議へのオブザーバー参加を明言すべきだ。被爆国として「核なき世界」の旗を振る以上、ふさわしい場所に立たなければならない。

 オブザーバーとなれば、自認しながら果たせていない核保有国と非保有国の橋渡し役にとどまらず、核抑止論を乗り越える対話にも取り組めよう。保有国に核の悲惨を直視させ、先制不使用を含む核の役割低減の合意を積み上げる。核の傘から抜け出す近道となろう。

 核兵器関連で生じたヒバクシャの支援なども条約は柱に据えている。広島や長崎の知見を蓄積する日本の使命ともいえる。

 ■証言伝え継いで

 世界への発信や行動に説得力を高めるためには、なぜ日本が無謀な戦争に踏み切ったのか、という問いに向き合うことも欠かせない。政府だけでなく、被爆地にも必要な営みであろう。

 平和賞の受賞演説を、田中さんは「核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて共に頑張ろう」と締めくくった。そのために「証言の大運動」を展開するという。被爆80年の節目にかける思いを共有したい。

 被爆者がいなくなる日が近づいている。いつまでも頼れるはずがない。次の世代に証言を伝え継ぎ、国内外に広げていく。縦に横に、核廃絶へのうねりを生み出していく。その決意を私たちが示す番である。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月01日  07:00:00  これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。

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【天風録・01.01】:節目の年に

2025-01-01 07:00:40 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【天風録・01.01】:節目の年に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・01.01】:節目の年に

 1年のうちの一日に違いないのに、きょうはやはり心身が引き締まる。新年が始まる節目というだけでない。能登半島を中心とした地域が昨年、大震災に見舞われた。被災者をはじめ私たちにとって忘れられない特別な日だ

 ▲明けたことしは昭和100年、戦後80年の節目に当たる。振り返れば激動の時代だった。戦後生まれ、ことし還暦の身にとって特に印象的なのは人類初の月面着陸、ベルリンの壁崩壊、関西と東北での大震災だろうか

 ▲広島にとっては取りも直さず被爆80年。ピカに焼かれた被爆者の惨状を顧みず、大国は核開発を進めた。太平洋上で水爆実験まで。しかし反核の願いは、じわじわと世界へ。以前なら想像できなかったことまで実現し、核廃絶の希望が芽吹いている

 ▲ローマ教皇は被爆地を訪問してきた。広島をオバマ米大統領が訪れ、被爆者と抱き合い、G7広島サミットに首脳が顔をそろえた。核兵器禁止条約が既に発効しており、昨年は日本被団協にノーベル平和賞が贈られた

 ▲節目の年始めに決意をして行動を誓いたい。一人一人がいま一度、被爆者の証言を聞き、引き継ぎ、広めることを。国がやるべきことは核兵器禁止条約の批准である。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2025年01月01日  07:00:00  これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。

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【主張①・01.01】:<年のはじめに>:論説委員長 榊原智 未来と過去を守る日本に

2025-01-01 05:03:50 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【主張①・01.01】:<年のはじめに>:論説委員長 榊原智 未来と過去を守る日本に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・01.01】:<年のはじめに>:論説委員長 榊原智 未来と過去を守る日本に 

 今年は、日本の未来と過去を守らなくてはならない年になるだろう。

 抑止力の構築を急がないと、日本は数年内に、戦後初めて戦争を仕掛けられる恐れがある。平和を守っていく年にしたい。

東京都内で講演する石破茂首相(代表撮影)

 戦後80年である。大東亜戦争(太平洋戦争)について中国や朝鮮半島、左派からの史実を踏まえない誹謗(ひぼう)は増すだろう。気概を持って反論しなければ国民精神は縮(ちぢ)こまり、日本の歴史や当時懸命に生きた日本人の名誉は守れない。

 政府や政治家が鈍ければ、国民は叱咤(しった)激励したり、自ら声をあげたりしていかねばなるまい。

 能登半島地震から1年が経(た)った。復興を願うと共に、将来起きるかもしれない危難から日本や地域を守る必要性も痛感する。ウクライナや中東の戦争をみてほしい。自然だけでなく人間も大災害をもたらす。安全保障は独立と繁栄の基盤といえる。

 ◆統幕長の危機感共有を

 自衛隊制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長は昨年最後の記者会見で次のように語った。

 「国際社会の分断と対立は深まり、情勢は悪化の一途をたどり、自由で開かれた国際秩序は維持できるか否かのまさに瀬戸際にある」「来年(令和7年)を見通しても良くなる展望は開けない」

 国家防衛戦略では9年までに「わが国が主たる責任をもってわが国への侵攻を阻止、排除できるようにする目標がある」とし「それまでに暇がない」とも述べた。

 率直な物言いは危機感の表れだ。制服組トップがこれほど有事を懸念するのは米国と北朝鮮が開戦間際だった平成5、6年の第1次朝鮮半島核危機時の西元徹也統幕議長以来かもしれない。 

 だが、第1次核危機もそうだったが最近の日本の政治が危機感を十分共有しているとは思えない。

 歴代内閣の努力は分かる。安倍晋三政権は集団的自衛権の限定行使に道を開いた。菅義偉政権は米国と共に「台湾海峡の平和と安定の重要性」を宣言した。岸田文雄政権は防衛費増額や反撃能力保有など防衛力の抜本的強化を開始した。石破茂内閣は自衛官の募集難対策に本腰を入れている。中国の台湾侵攻や北朝鮮の暴発を抑止する取り組みだ。

 ただし、昨年の日本は、政治とカネの問題で騒動が続くなど専ら内向きだった。国会などの場で日本の政治は外交安保にもっと意を払うべきだった。周囲の専制国家が「日本与(くみ)しやすし」と見れば抑止効果は減じる。それがどれほど恐ろしいことか。

 トランプ米政権の登場で、侵略者ロシアと抗戦してきたウクライナが休戦となれば、台湾海峡や東・南シナ海など北東アジアの安全保障環境を変化させる。

 ◆戦後80年に踏まえたい点

 北東アジア自体への影響にとどまらない。停戦監視へ陸上自衛隊のウクライナ派遣が期待されるかもしれない。 

 また、紅海で民間船舶を攻撃する親イラン民兵組織フーシ派討伐への海上自衛隊参加の要請があるかもしれない。

 日本の対応は、北東アジアへの欧米諸国の関与を左右する。

 これらは仮の話だが、日本の政治は、そして日本国民は、ウクライナなどの情勢の展開に備えようとしているか。分断と対立が深まる国際情勢を我(わ)が事(こと)としてとらえているか。トランプ氏との会談で石破首相は、日本と国際秩序を能動的に守る姿勢を示してほしい。

 紙幅が尽きた。戦後80年について2点指摘したい。1つ目は、大東亜戦争をめぐり、当時の日本には祖国防衛の思いに加え、人種平等の実現や欧米植民地支配打破の理想があった点を、戦後の日本人はほとんど知らされてこなかったという点だ。2つ目は史実を踏まえた議論の大切さである。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2025年01月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【産経抄・01.01】:戦後80年、「あの日あのとき」を胸に刻む

2025-01-01 05:03:40 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【産経抄・01.01】:戦後80年、「あの日あのとき」を胸に刻む

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・01.01】:戦後80年、「あの日あのとき」を胸に刻む

 日付変更線を一歩越えただけで、きのうが「行きし年」になり、きょうが「新年」になる。俳人の小澤實さんに、こんな一句がある。<年あらたまる人類の深き智慧>。人類の発明品の中でも、暦は指折りの秀作かもしれない。

知恩院でおこなわれた除夜の鐘の試し突き=京都市東山区の知恩院(南雲都撮影)

 ▼継ぎ目のない時間の中に、太い一線を引いて新たな年を生み出す。その線は、ある種の「節目」を与えてもくれる。午前0時の時報とともに、姿勢を改めた人もおられよう。誰の手元にも等しく、まっさらな暦が届けられ、令和7年が始まった。

 ▼と、このように書ける幸せを思う。80年前のきょう、東京の昭和20年は高射砲の音で明けた。大晦日(おおみそか)の夜から3度、米爆撃機B29が侵入したためだ。前年の暮れには浅草が空襲で焼かれ、小磯国昭首相は「敵はすでに頭上に迫っており…」と、元日のラジオで年頭の辞を読んだ。

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 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】  2025年01月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季・01.01】:「新年の手紙」

2025-01-01 04:05:40 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【卓上四季・01.01】:「新年の手紙」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・01.01】:「新年の手紙」

 <元気ですか/毎年いつも君から「新年の手紙」をもらうので/こんどはぼくが出します>。

 田村隆一の詩「新年の手紙」はこんなふうに始まる。続くのは年賀のことばだろうか。予想は軽やかに裏切られる

 ▼登場するのは20世紀米国の詩人オーデンの作品である。1939年9月、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻し、第2次世界大戦が始まる。<夜のもとで、防禦(ぼうぎょ)もなく/ぼくらの世界は昏睡(こんすい)>している。否定と絶望のなか、<ある肯定の炎>を見せたい―。闇にさす一筋の光だ

 ▼このオーデンのことばを時空を超えて田村は受け取る。<ぼくらの国の近代は/おびただしい「メッセージ」の変容の歴史 顔を変えて登場する/自己絶対化の「正しきものら」には事欠かない>。戦争を続けて破滅に至る近代日本の姿だ

 ▼2025年が幕を開けた。気持ちも新たにこの年の夢を描き、あいさつを交わす。いつも通りの正月に、今年ならではの思考を重ねたい。戦後80年、昭和100年という大きな節目を迎えたのだから

 ▼英国の歴史家カーの「歴史とは何か」(近藤和彦訳)にあることばを思いだす。<過去は現在の光に照らされて初めて知覚できるようになり、現在は過去の光に照らされて初めて十分に理解できる>

 ▼謙虚に歴史と向き合い、よりよい明日を探す。そんな1年にしたい。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2025年01月01日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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