【社説①・03.08】:女性枠への違和感 男性優遇、行き詰まりに目を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.08】:女性枠への違和感 男性優遇、行き詰まりに目を
「平等」への取り組みはやり過ぎだ―。
日本の10、20代層「Z世代」の男性の3割がそう感じていると、世界29カ国の世論調査結果が昨年公表された。社会のジェンダー・ギャップ(男女格差)解消の取り組みを、不公平と感じる男性が少なからずいる。
きょうは国連総会で制定されて50年となる「国際女性デー」。目指す女性の平等な社会参加の意味を改めて考えたい。
大学の理工系学部の入試で、女性枠を設ける動きが広がっている。今シーズンの国公立大入試では30校が導入。2026年度では、京都大も理学部と工学部の特色入試に計39人の枠を予定する。背景には入学生の女性比率の低さがある。理学部は28%、工学部は17%にとどまる。
政府の有識者会議は22年にまとめた提言で、理工系を専攻する女性の増加を盛り込んだ。「ジェンダーバランスを欠く状況は持続的な科学の発展にマイナス」(京都大)との観点は、多様な人材の育成に不可欠だ。
数学や理科の学力に男女差がほぼないことは、学力調査で明らかである。「女子は理科や数学が苦手」「理工系の仕事は向いていない」との偏見や、男性優位の研究・雇用環境が女性の道を狭めていると分析される。
一方、受験生を含め「女性枠は優遇が過ぎる」「ゲタをはかせるのか」との批判もある。
問題は、男女ほぼ均等な人口比を反映しない日本社会の構造的なゆがみだろう。経済、政治、地域などで行き詰まりが目立つ中、誰もが暮らしやすい豊かな国に向け、男性優遇の障害は取り除かねばならない。
これまで日本の男性はゲタをはかされてきたのだから、女性にゲタをはかせる選択肢は不平等といえない、とする専門家らも多い。女性枠で是正の道を切り開き、やがては共にゲタを脱ぐ―。そんな風に前向きにとらえてはどうか。
経済分野では、政府が上場企業の女性役員比率を30年までに30%以上にする目標を掲げ、管理職の積極登用も推進する。
これまで男性の長時間労働を前提とし、家事や育児を担うことが女性のキャリア形成を阻んできたのは否めない。女性管理職比率と利益率の高さに関係がみられるとの国の調査もある。多様な働き方ができる環境は、企業活力を上げよう。
政治では、議席の一定数を女性に割り当てるクオータ制導入の議論は進んでいない。
議員立法で7年前に施行した「政治分野における男女共同参画推進法」は候補者数を男女均等にするよう政党に求めているが、大半の政党は届かず、衆参両院に占める女性比率は2割に満たない。伯仲国会を奇貨とし、着実な前進に向け、制度導入を真剣に検討すべきではないか。
ゲタをはいていることに気づかない男性たち。足元をみて。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月08日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます