《社説①・12.12》:子どものSNS利用 安全守る歯止め考えたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.12》:子どものSNS利用 安全守る歯止め考えたい
子どものネット交流サービス(SNS)利用を制限する動きが海外で広がっている。日本でも有害な情報から子どもを守る議論を深めるべきだ。
オーストラリア議会で、16歳未満のSNS利用を禁じる法案が可決された。インスタグラム、フェイスブック、TikTok、X(ツイッター)などが対象になる。
事業者にアカウント作成時の厳格な年齢確認を義務付け、違反には最大4950万豪ドル(約50億円)の制裁金を科す。1年の準備期間を経て施行される。
米国の一部の州にも同様の規制がある。英国やフランスでもアクセスを制限する法律ができた。
背景には、SNSが絡んだ性犯罪やいじめ、自殺の多発がある。同調圧力にさらされて苦しんだり、偏った言説を信じ込んだりする子もいる。豪州では子どもを失った遺族らが12万人を超す署名を集め、世論調査でも77%が法規制を支持した。
課題は実効性だ。豪政府は年齢を確認する新技術の開発を急ぐという。それでも抜け道を完全に塞ぐのは難しいだろう。
日本は青少年インターネット環境整備法に基づき、未成年者のサイトへのアクセスやアプリ使用を制限する「フィルタリング」の導入を事業者に求めてきた。だが、購入後の解除が可能で、利用率は5割に満たない。
小中学生の6割以上がSNSを使っているというデータもある。文部科学省によると、ネットでの中傷やいじめの認知件数は年2万件を超える。昨年、SNSを通じて児童ポルノなどの犯罪に巻き込まれた小学生は139人に上り、10年間で約5倍に増えた。
政府も対策強化に乗り出した。先月発足した作業部会で問題点を整理し、規制のあり方について来夏までに青写真を示す。
ただ、SNSは子どものコミュニケーション手段の一つで、世界を知るための窓口でもある。安全と知る権利の確保を両立できるよう、政府と事業者は知恵を出し合うべきだ。
憎悪をあおる言葉や不確かな情報を発信せず、真偽を見極めるリテラシー教育の重要性も増している。誰もがSNSを安心して使える環境整備を急がねばならない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月12日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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