【社説①・03.07】:市販薬の乱用 自殺につながる危険な兆候だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.07】:市販薬の乱用 自殺につながる危険な兆候だ
不安やストレスから逃れようと、市販の風邪薬やせき止めを大量に飲む若者が増えている。薬を過剰に摂取したり、その結果、自殺未遂で救急搬送されたりするケースも多い。
こうした行為は「オーバードーズ」と呼ばれ、これをいかに防ぐかは、自殺予防の観点からも重要な課題となっている。若者たちがオーバードーズに及ぶ背景や原因を探り、支援の手をさしのべていくことが大切だ。
市販薬は、決められた用法用量を守って使う分には問題ないが、大量に飲むと意識障害や不整脈、肝障害などを起こし、命にかかわることもある。
また、意図的に薬を大量に飲んで自殺を図る人も多い。
日本臨床救急医学会などが2022年末から23年末にかけて、自殺未遂で救急搬送された患者を調べたところ、調査に参加した全国44医療機関で自殺未遂者は約2000人に上った。
年代別に見ると、20歳代の女性が398人と最多だった。10~30歳代では、女性の自殺未遂者は男性の2倍に上った。自殺を図ろうとした手段は男女ともにオーバードーズが最も多く、特に女性の場合、7割近くを占めていた。
自殺未遂をした人は、実際に自殺するリスクが高い。全国の救命救急センターは、自殺未遂で搬送され、命を取り留めた人が再び自殺を図らないよう、専門医や支援機関に紹介し、精神的なケアを受けられるようにしてほしい。
薬の大量購入を防ごうと、現在、ドラッグストアなどでは一度に買える個数を制限しているが、別の店舗での購入は可能なため、十分な効果は上がっていない。
マイナンバーカードが普及すれば、市販薬の購入履歴を記録することもできるだろう。将来的には検討の余地がある。
こうした問題が起きるのは、家庭や学校に 拠 り所を見いだせず、相談できないまま孤立する若者が増えているからではないか。
昨今、東京・歌舞伎町の「トー横」と呼ばれる一帯は、オーバードーズを行う若者らのたまり場になり、社会問題となっている。そうした若者が売春や闇バイトに巻き込まれることも少なくない。
東京都が昨年、トー横近くに設けた相談施設には、悩みを抱える多くの若者が訪れている。施設では軽食を用意するなど、気軽に立ち寄れる場を目指している。
若者が安心して悩みを打ち明け、支援を受けられる居場所を全国に広げていきたい。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月08日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます