《社説②》:4歳児死亡で両親逮捕 幼い命なぜ救えなかった
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:4歳児死亡で両親逮捕 幼い命なぜ救えなかった
痛ましい事件である。幼い命が失われる事態を防ぐことはできなかったのか。
4歳だった次女を殺害したとして、東京都台東区に住む両親が殺人容疑で逮捕された。
次女は昨年3月に死亡した。体内から向精神薬の成分と、自動車のエンジン冷却などに使われる不凍液の成分が検出された。
それぞれ意識障害、腎不全などを引き起こす恐れがある。誤飲の可能性は低く、警視庁は両親が摂取させたとみている。
児童虐待で薬物が使われたとすれば、異例のケースだ。非道と言うほかない。
父親は容疑を否認し、母親は黙秘しているとされる。
次女死亡の1年ほど前から、通販サイトで向精神薬や不凍液を購入していたことが確認されたという。警視庁は捜査を尽くし、全容を解明する必要がある。
虐待を疑わせる兆候を、行政は把握していた。
8年前に一家が引っ越してきた際、都や区は転出元の自治体から、夫婦げんかが長男、長女への心理的虐待になっているとの情報提供を受けていた。
次女が生まれた2カ月後、母親が自宅で衣類に火を付けるトラブルを起こし、都の児童相談所は次女を含む子ども3人を一時保護していた。
解除後、次女は6カ所の保育施設を転々とし、週末しか自宅に戻らない時期もあった。死亡の半年前から4カ月前にかけては、保育園から5回、たんこぶなどのけがが区に報告されていた。
区は父親と定期的に電話で連絡を取り、児相と情報を共有していたという。
けがの報告があった際、父親は区の担当者に「家の中でぶつけた」などと説明した。次女の話とも矛盾せず、虐待ではないと判断していた。
児相や区の対応は十分だったのか。検証が欠かせない。
虐待で子どもが亡くなるケースは後を絶たない。青森県八戸市では、5歳女児に浴室で水を浴びせて放置し死亡させたとして、母親と交際相手が逮捕された。
悲劇を繰り返さないためには、どうすればいいのか。社会全体で対策を考えなければならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月17日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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