【社説②・12.03】:NTT法 国際競争力を高める見直しに
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.03】:NTT法 国際競争力を高める見直しに
日本の情報通信分野の国際競争力を高めるために、NTTへの規制はどうすべきか。時代の変化を踏まえ、不断に見直していかねばならない。
総務省の有識者会議は、NTT法のあり方に関する最終報告書を公表した。固定電話サービスを全国一律で提供するという、NTTに課してきた義務を緩和することを盛り込んだ。
一般的な固定電話は銅回線や光ファイバーでつながれている。近年は、NTT以外の通信事業者も携帯電話網を活用した無線でつなぐ固定電話を展開している。報告書は、この種の固定電話も全国一律サービスに位置づけた。
サービスを提供する事業者がいない地域に限り、NTTに最終的な提供を義務付けるという。
NTTに対する規制緩和策の柱となる。複数の通信会社が分担して、全国一律サービスを担えば、効率化を図ることができよう。地方の通信網が切り捨てられないよう着実に取り組んでほしい。
一方、報告書は、国際競争力の強化の面で焦点だったNTT法の廃止については判断を示さず、存続と廃止の両論を併記した。
自民党は経営の自由度を高めるため廃止を求めたが、KDDIなど競合他社は公平な競争環境が失われるとして反対している。
NTT法は、民営化に向け40年前に施行された。当時、通信の主役だった固定電話をNTTがほぼ独占していたため、政府が経営を厳しく監視する必要があった。
だが、その後、携帯電話やインターネットが普及し、環境は大きく変わった。古い規制を見直していくことは自然な流れである。
NTTは研究成果の公開を義務付けられてきたが、これもすでに今年4月の法改正で撤廃された。同時に総務相が役員の選任や解任を認可する仕組みも緩和した。
だが、報告書は、事業計画の事前認可制や、政府にNTT株の3分の1以上を持つことの義務づけは引き続き維持するとした。
情報通信分野では、米グーグルなど巨大IT企業が圧倒的な競争力を誇り、日本企業の存在感は薄い。先端技術の研究開発は時間が勝負で、迅速な経営判断が不可欠だ。役所が経営に関与しすぎれば、成長を妨げることになる。
NTTは、電力消費が大幅に少ない次世代通信基盤「IOWN」の開発を進め、期待は高い。政府は、公正な競争環境の確保とNTTの国際競争力の強化、という課題を両立する形で、NTT法の見直しを継続することが大切だ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月03日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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